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常陸国 乱 その二十五 谷田部の戦い

生きてますよ。<(_ _)>

◆◆◆


未明  谷田部 東の街道 森の中


伝令

「来ました!旗印は一字、那須千本家です。」


車斯忠

「時刻も場所も指示通りかよ……那須家ってのは外れだがな、敵が黒縄に掛かったところで突撃する、皆あと少しだ気を引き締めろ!」


「「ハッ!!」」


(……千本家か那須は弓兵が強力と言われているが、騎馬戦きばいくさなら負けはせんさ、折角貰った機会……しかもお膳立て付きだからな有難くいただかせて貰うぜ……)


◆◆◆


未明の暗闇のなか先導の篝火を持った騎馬が街道に浮かび上がる、森の奥から後続は見えにくいが数え切れない程の騎馬が続き重い重低音を轟かせ轟音と共に迫ってくる。


(……あと少しだ……掛かった!)


「「「うわわぁぁぁ!!」」」

「よけろ!」 「どけ!」


集団の先頭付近にいた一騎の騎馬武者が何かに脚を取られ倒れる。勢いがついていた集団は間隔を開けて仕掛けられた罠に次々と掛かり街道を走っていた集団の勢いが止まる。


千本資俊

「ドウドウ落ち着け、そうだよい子だ……何事だ!何が起きたか報告せよ!」


千本家家臣

「資俊様、馬の脚がギリギリ引っかかる高さに細い縄が張ってあります。」


足元三十センチ程の高さに鋼鉄製の細いワイヤーが街道の所々に張り巡らされていた。


「首元の高さではなく足元にか、しかし綱ならともかく細い縄程度で馬が転ぶものか。」


「ただの縄ではありません、どうやら鋼の縄かと。」


「鋼の縄だと。鎖とかいうものか?」


「いえ、鋼の糸を縒って作られた縄です。」


「なんと、そんなものが。」


伝令

「千本殿!敵襲!敵襲です!」


◆◆◆


車斯忠

(罠として本来張る首元の高さにではなく、本来馬の力なら千切れる細い縄を足元に張っているとは思わないよな、悪い奴だぜあいつは)


「俺に続け狙うは大将首だ!」


「オオオオ!!!!」


未明の森に鬨の声が上がり、木々の奥の闇の中から騎馬の群れが罠にかかり集団として動きの止まった千本家の騎馬隊に襲いかかる。


「松脂の照明袋を落としていけ!此奴らはもはや動けぬただの的だ!」


車の騎馬隊の先頭集団が火の着いた袋を灯り替わりに落としていく。


「街道の中央を突き抜けろ!!」


「オオオオ!!!!」


千本の騎馬隊に襲いかかる車の騎馬隊、千本側の騎馬武者も弓を持ち食い下がるが、灯りで闇の中浮かび上がった千本の騎馬武者は勢いに乗った車の騎馬隊に蹴散らされ、体勢の崩れた所に弓を射掛けられ次々と討ち取られていく。


「金字の一字!あれが千本の大将だな。大将首覚悟!!」


◆◆◆


「敵襲!扇に日の丸佐竹勢、大将旗印は鬼が火の車を引く絵です。」


千本資俊

「火車の鬼……聞いたことも無い!無名な武将なぞに那須七家千本家の家長の首やるわけにはいかんな、応戦せよ、所詮奇襲だ敵の数はそう多くあるまい馬をおりて街道脇の林に入り弓で応戦せよ!」


「大将旗の一団こちらに向かってきます!」


「大将自らか、フン尻の青いガキだな……正面に立つな脇に逸れて弓を射掛けよ!」


未明の森の闇の中、車隊の奇襲に遭い初手で半壊した千本隊だったが千本資俊の指示で冷静さを取り戻し千本家の直参の弓兵を中心に街道の林の中から反撃に転じていた。


◆◆◆


「若!林の中に逃げ込まれては追えませぬ、八戸殿の指示通り敵陣を突き抜け主人のいない馬を攫っていきましょう。」


「林に逃げ込まれちゃあな……仕方ない馬に縄をかけて攫っていくぞ一人二、三頭づつ引っ張っていけ!」


「ハッ!!」


◆◆◆


「おのれ、奴ら馬を持って行きやがった。」


千本資俊

「落ち着け!被害を確認せよ、何人生き残った。」


「直参以外の隊はほぼ壊滅です。生き残りは七百に満たないかと、馬も殆ど持って行かれました。」


「……怪我人をまとめて馬に乗せろ、疾く引くぞこのナリでは後方を伺うのは無理だな。」


(無念……汚名返上はならなかったか。)


◆◆◆


四千の騎馬隊を二千で討ち破る……前哨戦の為それ程勇名は上がらなかったが、名字の車から火車の鬼を旗印とし不利な戦場などでは圧倒的な存在感を放ち、その粘り強さから数々の勇名を馳せる事となる佐竹の火鬼の初陣であった。


















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