常陸国 乱 その二十三
なんとなく <(_ _)>
結城下野連合の陣
「お疲れさん、で奴らの様子はどうだった。」
「……なにから話したモノか、とりあえず黒幕は判った。」
「黒幕?佐竹家以外の奴が絡んでいるのか。」
「……南部家の八戸が客将として潜り込んでいた。」
「八戸?……八戸、八戸……南部家の氏族九戸廓の一つか、南部産の黒駒(田名部産)は大きいから、高級品なんだよな俺も欲しいって……彼処は陸奥の果てだろなんで常陸に。」
「北条との伝手からの話だが、堺との海上交易の航路ができていてそれを行っている船が南部家の船だと言う事らしい。」
「上方との交易か如何にもな儲け話じゃねえか、霞ヶ浦から俺らも参加出来ねえかな。」
「それは戦の後の話だな、とにかくその中心にいるのが八戸氏らしい。」
「で、そいつが佐竹家の裏で糸を引いてるという訳か。」
「奇縁と申していたからな、おそらく義昭が倒れる時に居合わせたのだろう。」
「そのまま、ズルズルとって小田にしてみれば随分な話だな。」
「我々にとってもそれは同じだ、北条で手が一杯なのに東に新たな大国ができるなど悪夢でしかない。」
「大国って、まだ常陸の半分を制圧した程度だろ。」
「鹿島水軍を味方につけ霞ヶ浦の半分を既に支配下に置いている、先だっての石巻の船戦は聞いているだろう。」
「霞ヶ浦を制するのも時間の問題か、なら北条とはぶつかるんじゃないか。」
「北条と南部は交易で結ばれた共犯者だ既に密約があってもおかしくない。」
「待て待て、話が飛躍し過ぎてないか、とっつあん落ち着けまだそうと決まったわけでは無いだろ、裏付けは今からやるんだろ。」
「裏付けを取ってからでは遅いかもな、既に掌で踊らされているのかもしれん、利で結ばれた関係は強固だからな。」
「こちらが有利な情報はないのかよ、もう気が滅入ってきたぜ。」
「先程も言ったとおり、霞ヶ浦の半分は制しているからな補給は水路で此方から手出しは不可能だ、唯一の救いは奴らが何故か囲地に陣地を張っていること位だな。」
「騎馬隊を選抜して北廻りで谷田川の裏に回り込ませて三方を囲んでから霞ヶ浦に追い落とす積もりだったが、それなんだよなんで奴らあんな不利な場所に陣を張ってるんだ。」
伝令
「水谷様、大変です結城城に繋がる街道の彼方此方から火の手があがっていますおそらく焼き討ちをかけられたものと思われます。」
「焼き討ちだと、敵は川向こうから動いて無いんだろ。」
「……少数の兵での焼き打ちか、源氏の十八番ではあるがこんなにも早く……いや既に潜り込ませていたのか。」
「とっつあんそんな冷静なこと言ってる場合かよ、補給路をやられたんだぞ。」
「……落ち着け正村、ここに食料はあるまだ二週間は持つだろう、その間……一週間でケリをつければ良いだけの話だ。」
「……なる程、とっつあんしてやられたな、つまりそれが奴らの目的か……誘ってやがるあの囲地は負ければ全滅の危険すぎる場所だ、そこへ入ってこいと手招きしてやがる。」
「正村、御主まさか。」
「止めるなとっつあん、川向こうに渡れば谷田部城を背にした俺らが圧倒的に有利なんだ、罠だというなら噛み砕くまでよ。」
「……止めても無駄か、まあ戦に関しては御主に一任している、だが無駄に兵を損なうなよ。」
「誰に言ってるのさ任せておけって、奴らに後悔させてやるさ。」
◆◆◆
川に挟まれた中洲 佐竹軍の陣
泰造
「斎藤衆から伝令、火付けに成功奴らそのまま潜伏するそうだ。」
「また風魔に借りを作ったな、この分は佐竹家にツケとこ。」
「金で動くんだから有難いじゃん。」
「まあね、俺らだけじゃ手が足りなかったし用意してたかのような申し出だからな。」
(……幻庵の爺さんの仕業だろうな、全く良い仕事してくれる敵には回したく無いものだな、とは言えプライスレスという訳にはいかないよな後が怖いったらないねえ)
「では、いよいよ最終局面だな(最初の予定とは違うけど)谷田部で決戦だ!」
◆◆◆
相模国 北条幻庵の屋敷
音も無く庭の隅に巨体が現れる。
「結城城からの街道沿いの焼き打ちに成功しました。」
「珍しいな小太郎が来るとは、ウムご苦労これで結城共の尻に火が付いた訳だな、決戦してくれなければ岩槻から出撃できんからのう。」
「……幻庵様もお人が悪いまさに焚き付けた訳ですな。」
「チンタラ時間潰しをされて秋になっては困るからのう、やるならやる!そういうことじゃよ。」
「ついでにと、八戸殿から書状を預かっております。」
「ほう、どれどれ……香取海(霞ヶ浦)の湖賊をねえ、フム共同管理か悪く無い話だ波の穏やかな内海に港があるのは便利だし佐竹家との関係も内海で線引きしておけば悪化せんな……よし氏康様に面会を申し込んでくれ。」
「かしこまりましたでは。」
音も無く庭から人影が消える。
「少しは佐竹家の勢力が減ってくれれば万々歳なんじゃがな、さて八戸政栄のお手並み拝見といたそうかのう。」




