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常陸国 乱 その九

軍の移動というものは、大体人数が倍増えると行軍速度は四分の一以下になるもので……三万を越える軍勢だとこの時代は百キロ行軍するのに半月近くかかることもあるのです。


当然小田(筑波山の麓)から筑波まで移動するだけでも……


「軍師殿、燃料はなんとか兵糧分は届きましたが、松明などに回す分が足りません。」


「近くの味方に交渉済みだ……土浦まではそこで生産して送って貰うから、輸送路と護衛を組織し直すからしばし待て。」


「……今日も夜間の行軍は。」


「無理に決まってるだろ、食ったら寝るんだ!」


「おい、体力が余ってケンカが絶えないと苦情がよ。」


「じゃれてるんだろ(希望)ほっとく!」


「じゃあ俺が大人しくさせてこようか?」


「ダメに決まってるだろ徳寿丸様の名前に泥を塗る気か大人しく偵察や食料の警護をしていろ。」


「ちっしけてんな。」


猛虎お前地がでてるぞ、薄くてもいいから猫の皮を被ってろ。


「……しかし水の豊富な泉や水源を回る道筋しか行軍出来ないとは。」


「俺も三万を超える軍なんか組織運営したことはないからな、もう既に他人に迷惑を掛けるなとか言ってられん状況なのよ、戦後に保障するからとしか訴えてくる村人に言えなくなっちまった。」


◆◆◆


「……今日も近づいただけで開城降伏ですか。」


「士気だけはウナギ上りだね、それはそれで良いとして近隣の村から食料の買い付けが出来たし、さっきも農家の爺さんが野菜を売りに来ていたな商魂たくましくて結構なことだ、これで兵糧はなんとか土浦までは持たせる目途が付いたよ。」


「次の問題は誰を制圧部隊として残すかだな、戦より統治能力を優先させてなんとか民心を押さえておかないと、もうこの辺から食料は調達出来ないだろうしな。」


「……正直役に立たない無能者ばかり残ってきているような。」


「言うねぇだがそうだなあ、数は力だが質を向上しとかんと抑えが効かなくなりそうだ、それでも一応、集まった勢力をそのまま部隊として運用することで対応して指揮系統は作れたのは奇跡だな。」


「……良いように言ってますが、横の連携はなにもないですよね。」


「ハッハッハ伝説の軍師達はどうやって百万人とか運用してたんだろうね。」


「笑いごとではないのですがね。」


「実際南部家でも戦場での連絡は問題なのよね、解決方法があるなら教えて欲しいよ。」


このあいだの戦だって何年も準備して五万を回していたんだよな、五年後は二十万の運用をしなきゃならんのだし、これも良い経験と割り切るしかないか。


「政栄よ、ここにいたか。」


「徳寿丸様このような前線指令所に何用ですか、なるべく本陣を離れませんように。」


「わかっておる筑波平野も制圧だな、土浦城まであと少しだが何かあるのかと思ってな。」


「まあ、筑波山から平野部に移動しただけで特に何もないのですが、斥候と索敵の為の人員はケチってませんので戦で遅れを取ることはありませんからご心配なく。」


「物資が不足しているのだから仕方ないな、二つの極端な行軍を経験したから普通の行軍とは何なのかわからなくなりそうだ。」


「行軍の速さは大軍だろうとも補給路さえしっかりしていればもっと早いものなのですが、言い訳の様ですが事前準備が短いのと私の読みが甘かったのか、徳寿丸様が大人気なせいですな。」


「ふむ、まあそれも俺のせいではないがな、名声とて裏で何かやっているのだろう。」


「まあそんなところです。土浦城ですが迎撃に出てくれば明日、籠城を選べば明後日には戦になるでしょう。」


「策はあるのか?」


「大軍に確たる用兵は必要なし!と言いたい所ですが実際は敵を包んで押し潰すのみです。小田方が籠城を選んだ場合は土浦城は防御が固い城なので短期決戦向けの火攻めになりますな、火矢と油で一つ一つ丁寧にくるわを放火していきます。」


「ふむ、敵無しと言う事か。」


「いえ油断は禁物、敵は時と食料です。」


◆◆◆


土浦城


「殿、佐竹軍三万が筑波平野に入りました、筑波近辺の諸城は将兵の命と引き換えの開城降伏が相次ぎ土浦城の後詰めが出来る城は既にございません。」


「三万……そうだ勝貞、勝貞はどうしたのだ?援軍は?結城の援軍はまだなのか。」


「未だ音沙汰無く、交渉が難航しているものとしか。」


「殿!天羽様がお着きになりました。」


「殿しばらくです。只今土浦城に入りました。」


「おお天羽源鉄斎か、だが御主がここにいると言う事は。」


「はい手子生城は既に開城しております、開城ついでに変装して農夫が食料を売りに来た振りをして敵の内情を観て参りました。」


「御主は年甲斐もなく危ない事をするのう、そうか手子生城は落ちたか、報告どおり筑波近辺の小田方の支城すべて陥落したのだな。」


「殿まだ戦は終わっていません、勝貞殿が結城の援軍を呼ぶ時間を稼げるよう、拙いながら私も策を用意してございます。」


「源鉄斎、本当か三万に包囲されておるのだぞ、ここから巻き返せるのか?」


「お任せ下さいすぐに逆転とはまいりませんがとりあえずここで一矢報いてやりましょう、まだまだ尻に殻の付いたヒヨコ共などに大きな顔はさせませんぞ。」







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