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常陸国 乱 その六

◆◆◆


……一応ね挑発行為をしてさ、出て来たら叩くこなかったら檄文を受けて集まってくる味方と合流してから押し潰す策な訳よ。

ぶっちゃけて言うとね、夜襲をかけた時点でもう既に決着はついてるのよね。


と言うわけでこっから先は義重君の名声タイム!となるはずだったんだが、世の中そんなにスムーズに行くわけもないのでして。


「我こそは菅谷政貞、敵将は何処か尋常に立ち会え!」


ウーン、一部隊とはいえ中央突破されちゃったね、小田軍なかなかの精鋭揃いじゃないですか特に中央で槍を振り回しているあの武将、めちゃくちゃ強いんですけど?バカボン政実と同じ位強い奴なんて初めてみたぜって……ん?すがたに?菅エモンかよ、武力もアリな人だったのか。

殺るのは造作も無いんだがアレが見れなくなったらなんか勿体ないな。


「泰造、鋼糸の網をかけて捕縛してくれ、殺すなよ。」


「了解!あれも百五十文か?」


「ウーン小田の家老だっけ?だから高くしても良いのかなあなんて。」


「中央突破されたのになに余裕こいてんだよ。」


あー猛虎うるさい、そういえば小姓の中でも腕の立つ奴を本陣に配置してもらってたな(徳寿丸選)


戦場全体ではくの字から俗に言う片パンサンドイッチに成功して敵を挟み込みグリグリとすり潰している最中なんだが、要の位置をすり抜けられて本陣に敵の一部隊の突撃を許していた。


「政栄、このままで良いのか。」


「問題ありません戦場全体が見えにくいですが突破できたのは一部隊のみ他は挟み込みに成功しており、現在挟撃してすり潰しております、さて敵が着いたところでそろそろ参りましょうか!徳寿丸様軍配をお願いします。」


徳寿丸が軍配を掲げ大きく左に振る。


軍配の合図を受けて直衛の守備隊が前にでて壁を作る。


突破されるのは二回目だし氏家のジジイの後なにも対策してない訳ないのですよ。


突破してきた部隊が直衛部隊に襲い掛かる。


「よし間合いに入ったな、放て!!」


分銅の付いた細い鋼糸で編んだ網を菅谷政貞と周りにいた五人ほどに一斉に網をかける。


「な!この程度。」


腰元の刀を使い居合で網を切り払うが……ガガガッ!!


「切れないだと?なんだこの網は、ウオオッ!!」


イヤイヤ鋼鉄製のワイヤーになにしてくれてるの?結構切れてるよ、コレだからチート武人は。


「まずは動けぬよう押さえつけ網ごと捕縛せよ。」


「おのれ投網とは卑怯な!!」


政実とかバケモノがいる世界なんだから、鋼鉄製にして置いて良かったな、こんど塚原の爺さんに使ってみよ。

さて、菅エモンは確保したが、本陣が近接戦闘状態になってしまったな(失態)直衛の小姓共はどうですかね。


「オラオラ!!」


ひときわでかい声が猛虎こと車斯忠だが、腕一本で義重の小姓にのし上がってきた腕前は流石としかいいようがないな。

和田昭為を失脚させた手口とかから武将としての世間一般の評価はかなり低い男だが個人の武力は義重君の小姓軍団のなかでも抜きん出ているな。


「………」


対称的に無言で素早く斬りまくっているのが小貫頼久、岩城方面を任されていた小貫頼俊の息子でエリートコースのスマート武人タイプかな……って槍じゃ無いの?

どの小姓も体格が其処いらの兵士を二回り程上回っている本当大人と子供が戦ってる様なもんだからね、直衛の小姓共は問題ないだろう。


とりあえずあの二人がズバ抜けているな、五十人程の部隊みたいだがそろそろ制圧できるかなって……


「覚悟!!」


「しません。」


錫杖を下段に振り回して足払いを掛け転ばす。


「ホイホイ、百五十文。」


「泰造、余り近寄らせるな徳寿丸様になにかあったらってアラ?」


「徳寿丸様ならあそこだぜ。」


小姓軍団の中に一回り小さな影がって、待てー!なに大将が白兵戦してるの?


「泰造!急いで護衛に回れ!」


「大丈夫だろ、政栄なんかよりよっぽど腕が立つぜ。」


「そう言う問題じゃ無いの、死角から弓の的にされたら如何する。」


「へーイ。」


「……軍師殿、徳寿丸様ならいつもあの調子です。言っても聞きませんので。」


「徳寿丸様なら問題ないって!オリャーーー!!」


「だから、腕が立つとかの問題じゃ無いのって、え?」


槍が抜けなくなった所に敵兵が襲い掛かるが、居合に似た構えから腰の太刀を一閃……


ザシュッ。


音は一つだったが体が六つ?いや腕とかを含めて八つ以上に斬り捨てたのか?


「……驚いてますね、あれは三閃です徳寿丸様の腕前は皆伝以上ですから。」


「だから、心配いらねえってのオラオラオラ!!!」


三閃?一瞬で三回斬っているのか?……でもアレ?必要か?


「……まあ俺は達人同士の戦いなんて分からんからな。必要なのかもしれないな。」


「……刀にちなんで八つに斬り捨てたいと、常々仰ってます。」


「八文字長義だったか、まだ一閃足りないとか言ってたな。」


必要無いじゃねーかやめさせろよ。


体格がまだ小さいから油断していたがこの子もアッチ側の人だったのか。


とりあえず突破してきた部隊を制圧した後、大将が白兵戦をするなと説教しておきました。おそらく聞いてないと思いますがね、どこぞのボンボンと同じ目をしていましたから。


◆◆◆


「殿!、挟み込まれて壊滅寸前です。」


「なぜだ?あれだけ勢いよく押していたではないかそうだ政貞は?政貞はどうしたのだ。」


「敵集団の間を突破して敵本陣に向かう所までは、その後は……戻って来ておりません。」


「ヌヌヌ、おのれ一旦小田城に転進するのだ徳寿丸め覚えておれよ!」


馬を反転して小田城の方を向いたその時城から幾筋もの煙がのぼり始めた。


「城から、煙が上がっているだと?なっ何ごとなのだ」


「殿!大変です小田城が敵襲を受けて落城したもようです。」


「何だと?ではどこに逃げるのだ?」


「土浦城まで撤退いたしましょう、土浦城なら小田領内でもっとも防御力の高い城、勝貞殿も退くときはそこにお連れするようにと申しておりました。」


「そうか、勝貞が申したのなら間違いない土浦城に転進するのだ!」


「徳寿丸め、ワシは必ず小田城に戻ってくるのだ!覚えておれー!」


◆◆◆


「小田の軍勢が退却を始めましたな。」


「政栄よ追撃はしなくて良いのか?」


「大勢は決しました、二倍の軍勢を打ち破ったのです、初戦でこれだけの戦果をあげれば十分です、徹夜しているのですから小田城に入って兵達を三交代で休ませましょう。徳寿丸様達が大丈夫でも兵達が保ちませんよ。」


数ではなく二倍の敵を打ち破ったと宣伝できますしね、十分です!


「そうか兵達が保たんか、休息は必要だなよし、小田城に入り休むとしよう。」


「あーそれでですね、疲れているところを申し訳ないのですが、檄文を受けて集まってくる者達を出迎えねばなりません。徳寿丸様達は城門の裏、二の丸付近に天幕を張りますからそこで休憩となります、小姓達は交代で警護させましょう。」


「それは、必要な事なのか?」


「はい、徳寿丸様の檄文を受けて集まってくる者達です、徳寿丸様自ら声を掛ける事で佐竹家に忠義を尽くしてくれる切っ掛けとなります故、必ず自らの手で為さることが肝心です。」


「わかった大事だいじであるなら、天幕で待機しよう。」


当主というか名家だと、簡単に会わないとか、妙なシキタリが有るところがあったりして面倒くさいんだが、代行とはいえ徳寿丸様が自ら出迎えれば感激するだろうからね、さて俺は身体検査と言って武器を一旦取り上げましょうかね雰囲気を割る基本的な人心操作ですけどね効果絶大なんですよ檄文を受けて急いで集まってくる様な連中には特にね。


おっと、各地に徳寿丸様が初戦に勝利したと高札をださんといかんな宣伝宣伝。


しかしまさか城が落ちるとは思わなかった。伝説の始まりがこんなんで良いのかな?


◆◆◆

















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