表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
124/163

常陸国 乱 その三

不定期ですが<(_ _)>

◆◆◆


檄文が常陸国に発せられたその日の深夜


「殿!起きて下さい、北の支城や砦が次々と落とされております。」


ガバッと!!身を起こす。


「なんだと!政貞敵は誰だ!」


「旗は佐竹家の扇に日の丸、しかも金の日の丸です。」


「当主いや代行の徳寿丸か……いや待ておかしいぞ檄文が発せられたのは昨日か今日であろう、太田からここまで軍を動かして来たなら計算に合わないではないか。」


「謀られたのです、檄文を発する前から戦の用意をして、檄文が常陸に行き渡ると同時に襲いかかってきたのです。」


「つまり最初からワシを狙って準備していたのか、では親切に佐竹家の内情を報せたてきたあの手紙は?」


「おそらく我々に戦の準備をさせ、反乱の証拠を造らせたのでしょう。」


「おのれ!それだけならまだしも準備が整わぬうちに襲ってくるとはなんたる外道共め!政貞出陣の用意をせよ!徳寿丸とて万全で侵攻してきた訳ではあるまい、つまらん小細工は余裕のない証拠返り討ちにしてくれる。」


「ハッ!直ちに。」


◆◆◆


十日前 太田城


「では私の策を説明します。まずこの局面の敵は誰かと言う事です。」


「……それは、反旗を翻す者達であろう。」


「そうです、明確に反旗を翻した者が敵になるため、現在敵は存在しません、ですから先程徳寿丸様が守りを固める選択をされたのは無理の無いこと明確な敵が存在しないのですから。」


「……まさか。」


「ハイ、我々に都合のいい敵を作り上げます。」


「貴様ふざけているのか?吾には味方を陥れると聞こえたのだが。」


「潜在的な敵です、厳密には味方ではありません。」


「お待ち下さい、だとしても、褒められたモノではないのでは。」


「……徳寿丸様、続けてもよろしいか?」


「うむ、皆話を最後まで聞こう。」


「策の骨子はまず都合の良い敵を作り上げることから始まります。、次に佐竹家当主不在を狙った卑怯な行動を非難し常陸国内の有力者に檄文を送ります。」


「檄文?檄文とはなんだ聞いた事が無いぞ。」


「檄文とは、不正や卑怯な行いをした者を弾劾し義に依って正道を行うべく兵を集う古い中国のやり方です、くだけた言い方をすれば自分の主張を述べ味方せよと迫る手紙ですな。」


「人の心とは不思議なものです、今義昭様が倒れたことを知り反乱を起こすべく準備している者でも最初に反乱を起こした者にはなりたくないものなのです、不義の者として歴史に名前を残しますからな。」


「……つまり最初の反乱を起こす者がでれば次々と反乱が起きる訳か。」


「最初の者が現れず水面下で時間が立てば立つほど反乱の準備は整い佐竹家はどんどん不利な状況に陥ってしまいます。それを防ぐためには最速で敵を仕立て上げ、檄文にて非難し反乱を起こそうとしている者も含めて味方を集います。」


「反乱を起こそうとしている者もか?」


「明確に佐竹家に恨みを持つ者でも無ければ檄文で不義を糾弾されるなど恥辱もいいところ、武家として不名誉を犯してまで反乱に加担したいと思う者はそうはいません(松永とか例外はあるけどね)、それどころか佐竹家に距離を置いている者や現在面従腹背の者達を檄文にて取り込むことも可能です、武家なら義に厚く正道を行う事に心が動くのは必然ですからな。」


一度一緒に戦えば脳筋みな兄弟だからね。


「だが、最初の反乱を起こさせてすぐに檄文を送ることなど可能なのか?反乱が乱立してしまうのではないか?」


「ええ、ですから反乱の準備をしている段階でこちらが勝手に反乱を起こしたと常陸国内に報せ間髪入れずに檄文を送りつけます。」


まさにマッチポンプ非道この上無い、だが勝つ為にはまだまだ足りない。


「……」


「更に、先手を打ち檄文が国内に行き渡ると同時に準備が整って無いところを奇襲します。」


戦の準備を整わぬうちに先手を打つ、先手必勝とはこういうことを言うのかな。


「そこまでしなければ、勝てないか。」


「勝てません、たとえ奇襲が成功しても、その時点ではまだ戦力は相手の方が上でしょうな。」


「待てそこまでして勝てない相手とは誰だ、常陸国内にはもうそんな勢力は……」


「江戸氏攻略で同盟関係にあった小田氏治殿です。」


「なっ、父上の従兄弟で名門小田家の当主だぞ。」


「反乱を起こしてくれれば知名度といい兵力といい、まったく問題無い人物ですな。」


「貴様やはりふざけているのか、同盟関係にある小田家が裏切るとでも言うのか。」


「鎮まれ!政栄は小田家が裏切ると思っているのか。」


「正直小田氏治殿に含む所はございません、ですがこの策に必要な敵の条件、常陸国内で一定以上の勢力であり現状の佐竹家では勝てない相手という条件を満たしているのは小田氏治殿だけです。」


「佐竹家の生贄にせよと申すわけだな。」


「勿論蹴って貰って構いません、守りを固める策もございますから。そちらの方ならなんとか北部を維持して見せましょう。決断は徳寿丸様にお任せします。」


「政栄、私の覚悟を試しておるのか。」


「この戦国の世の中を生き抜いて行くなら小田家といえどもいずれ潰す敵です、出来ないというなら細々と命脈を保つ道をえらびなされ。」


しばし静寂が流れる。苦悶の表情を浮かべる徳寿丸だが、目を見開き力強く言い放った。


「……わかった、小田家を潰す!」


「わかりました。ですが気に病む必要はありません、佐竹家の内情を教えて、人質を送ってくるような人物でしたら策を変えねばなりませんがね。」


「小田殿の人と為りは知っている、そんな配慮の出来る人物ではない、戦の準備をするようなら遠慮は要らない、そういうことだな。」


「ではここから忙しくなりますよ、義昭様の証書作成をしている岡本殿、兵糧、武具等の管理で和田殿を召集して策の具体的な内容を説明します、そうですね大広間に主だった者を集めて軍議を開きましょうか。」


さて、俺も気を抜かぬ用にせんとな、敵があの小田氏治だからといって歴史どうりの人物とは限らないんだからな。


戦国の不死鳥か嫌いでない所か味方につけてみたい人物なんだがね……縛りプレイか……いやダメダメ現実はそんなに甘くないぞ、やはり敵としてフェニックスぶりを観察させて貰おうかな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ