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石巻沖海戦 その二

◆◆◆


石巻沖 相馬水軍


「三つの水軍をまとめて南部の港を襲うか、相馬家もたいした策略家がいるじゃないか、誰が考えたんだい。」


「いや、よく分からんが小名浜からもきてるから岩城家とは話しがついてるんだろう、相馬領の港からはほとんどの船が参加してるのもうなずける。」


「留守を狙われたんじゃかなわんからな。」


「石巻の代官が参加してるから伊達家の発案じゃないのか?」


「そんな話は聞いてないんだが、まあ昨今の南部丸の往来のおかげで港の景気が良いからのう、三陸の港を襲うってのもうなずける南部の奴ら金をたんまり貯め込んでるんだろ。」


「ああ、南部丸にしたって、この数で囲んで乗り込めばこっちのもんさ、あの船はデカイだけの荷船だって話だ、前に足が遅いって船乗りがぼやいてたからな。」


「デカくて足が遅いとかいい的じゃないか、だから火矢を使うなって回状が回ってきてたのか。」


「あれもあれの荷物もお宝だからな沈めるなんて勿体ねえ。」


「ハハハ、まあこっちだって大型船が三百近くいるんだ五、六隻南部丸がいたって問題ない問題ないお宝は俺らのもんさ。」


「敵の船団が見えたぞ!!」


「よっしや、やるか!!」


「南部丸が見えたぞ、中央に三隻だ!!」


「オオオオ!!!!」


◆◆◆


「若、前衛が敵船団を視認しました、この海域は海岸に近いですが岩礁も無い地点ですし南部丸が入れない場所はありません。」


「女川や金華山沖は厳しいからな、ここまで急いで来て正解だったな。」


「塩竃や松島で船が合流するのを待ってたのじゃろう、ほうほう海図もあるのか、敵さん陣形も整えてやる気に満ちておるのう。」


「まあ、士気なんてこの船を間近で見たらダダ下がりだろうけどね。」


「違いない。」


「では、後続の南部丸に手旗信号で連絡、“我に続けと”全速で敵船団右翼に突っ込むぞ、帆を張れ!櫂はしまってかまわん、帆と舵だけで行動する。」


◆◆◆


黒い三○星


ゆっくりと船団同士の距離が詰まっていく、船足は石巻水軍側が圧倒的に速く、南部側は帆を張り少しずつ後退していた。


水平線の影(約4.4キロ)に隠れていた新南部丸三隻は一旦右手にゆっくりと影の中を加速してから左手に舵を切り風上に斜めに切れ上がっていく、十分加速して水平線の影から抜け出した新南部丸の姿が敵の視界に捉えられる。


「敵の右翼に新たな影!!」


「なんだあれは?ドンドンでかくなっていくぞ!!」


「黒い南部丸だと?いやなんだ?帆柱が三本もありやがる。」


「デカイ、いや速いぞ?なんで?こちらは風上で潮目に乗ってるのに。」


「縁に掴まれ!!あの巨体で波を引いているぞ!!横波だ!!」


◆◆◆


「よし、火矢用意!」「用意よし!」「放て!!」


すれ違いざまに、中型船目がけて火矢が放たれる、慌てて敵船からも矢がパラパラと飛んでくるが、南部丸には届かない。


「船長、見事なギリギリの操船だよ。」


……まさにジ○ットストリームアタックだな。


「優秀な水兵達のおかげです。」


「うん、勝ったら感状をだすからな。」


一気に通過した新南部丸の引き波を受けて小型船が操船不能になり敵の右翼に混乱が広がってゆく。


「火だ!火を消せ、海水をかけるんだ。」


「ダメだ油筒が仕込んである、火が広がる!!」


「それでもかけるんだ。船が焼けて海に落ちたら凍え死んじまうぞ。」


「邪魔だ!どけ!クソ!小型船が邪魔で身動きが取れん。」


◆◆◆


「船長敵の左翼後方へ全速で突っ込んでくれ。」


「はっ!面舵いっぱい!!」


「面舵いっぱい!」


「左舷に傾きます御掴まり下さい。」


遠心力で左舷に傾きながらも進路を反転させ敵の左翼後方に向かって風と潮に乗り加速していく。


「後方から黒船がきます!!」


「櫂をこげ!全速で逃げろ!!」


「速すぎます間に合いません。」


更に大きな引き波を連れて左翼後方から船団の中央へと斬り込んで行く、小型船は南部丸の引き波の余波を受けて転覆する船もでてきている。

全速で火矢を放ちながら左翼後方から船団中央へ突撃を行い船団を切り裂き追い越す。


「帆を畳め、速度を落としてから面舵を取る!!」


「了解!!帆を畳め!!」


ゆっくりと減速していく新南部丸以下の三隻。


「減速したぞ!囲め!!乗り移って奪うんだ!!」


減速して回頭を始めた南部丸を中央の船団が囲んでいく。


「よし!速度差が少ないぞバリスタ、炮烙玉用意!!」


「バリスタ、炮烙玉用意よし!!」


「一隻一矢で仕留めるぞ!!撃て!!」


バシュッ-!!!


敵船の甲板に突き刺さりワイヤーが張られる。


「なんだ?奴ら縄を張ってくれたぜ?」


「よし、これを使って乗り込め……なんだあれは?」


滑車にぶら下がった特大の炮烙玉がワイヤーを伝って向かってくる。


チュドーーーン!!!


「右舷の敵船大破!!沈んでいきます!!」


チュドーーーン!!!


チュドーーーン!!!


「左舷敵船二隻撃沈しました!!」


「よし!近づく中型船はバリスタと炮烙玉で沈めてしまえ!!」


「政栄様!小型船に取り付かれました。」


「白兵戦用意!慌てず縄を切ってやれ、登って来た奴は囲んで突き落とせ!!」


「はっ!!」


「それでは、ワシも遊んでくるかの。」


「無理しないで、突き落とすだけで良いですよ。」


「いや、ちょっとこの刀の試し斬りをな。」


「あっ!いつの間に黒刀を持ち出して、接合部は秘伝なんだから入るなって。」


「はいっとらんよ~、出来たのを持ってきただけ~。」


「誰だ持ち出した奴は?」


泰造 「オオ!薄刃なのに良く斬れるな!」


ザシュ!ザシュ!!ザシュ!!!


「ふむ!良いではないか、船縁まで斬れてもうたわい。」


「船縁は斬るんじゃ無い、ったく奴の仕業か後で減給だな。」


「敵大将だな!覚悟!!」


錫杖を一払い、相手を薙ぎ倒す。


「はいはい、ウリャ!!……捕縛しておいてね。船長!回頭はそろそろ終わるか?」


「帆に風を受けて加速するまでかなり掛かります。」


「まあこの巨体だし仕方ないか、白兵戦継続!!敵を突き落とせ!!」


「オオオオ!!!!」


……一応僧籍だし錫杖を作ってみたんだが、やはり棍は相性が良くないなー。



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