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せんぱい、かわいいっす


 子猫を抱いているかのように腕の中があたたかい。


 北に向かうにつれ深くなる森は陽光が遮られ冷たいはずなのに、額からは汗が伝い落ちる。


 こんなこと、はじめてだ。


 腕の中でぐったりとしている男の子は完全に未変態だった。蜘蛛の筋繊維は伸びてはいたが癒着までしておらず、フェイの言うとおり捕まりたてほやほやだったのだ。


「待ってくださあぁぁいぃぃぃー! せんぱあぁぁいぃぃー!」


 土煙を巻き上げて突進してくるフェイの金髪はどんな場所でも目立つ。地味に思えて仕方のない黒髪の俺は思わぬ所で芽生えた小さな嫉妬を心の隅に追いやったが、振り向いた顔は仏頂面になってしまった。


「ひどいっす! 大事な部下を置いてけぼりにするなんてぇ! オレさみしかったっす!」


「……それはお前が悪い」


「それより、それより、せんぱいったら、うぷぷっ」


「あ? なにがおかしい」


「せんぱいってしっかりしてるように見えて案外おっちょこちょいなんすねぇ。方向音痴なんて……かわいいっす!」


「はあっ?」

 このアホはなんなんだ。もう嫌だ。


「ほらほら行きますよ! 出口はあっちっす」


「バカ野郎! ひっぱるな!」


「って、せんぱい! そそそそれぇー!」


「あ?」


「子供じゃないすかぁ! 助かったんすか! だったら尚更早く王都へ戻らないと!」


「……王都へは持っていかない」


「えっ?」

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