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流星の道、見てみたいの

「待ってくださいよぉー! せんぱーい! 手を貸してくださいよぉー!」


「お断りだ。お前、ぶよぶよしてて気持ち悪いし」


「お兄さんたちはやくはやく! こっちだよ!」


小さな裸足は森をかける子鹿。軽快に跳ねながら細い道へと俺たちをいざなう。辺りは次第に薄暗くなっていき、気づけば洞窟の中を走っていた。


光が届かないはずなのに……なぜぼんやりと周りが見渡せるんだ?


「わわぁー、綺麗っすねぇ! 流れ星みたいっす。ロマンチックぅー!」


頭上に向かってこだまするフェイの歓声。それにつられて天を仰ぐ。


「水魚! あいつら光るのか!?」


ヒレか背なのか、はたまた目が光っているのか俺の目では追えないが、青白い光の筋が何百……いや何千と洞窟の中を優雅に流れている。


個が全。その様はまるで一つの生命。太古の昔から繰り返されてきた命の輝きに思えてならなかった。


そう、ここで生を成し遂げている者は水魚なのだ。彼らの目に死した人間たちはどう映っているのだろうか。


「うん! 流れ星の中を走ってるみたいでしょ? ボクはここを流星の道って呼んでるんだ!」


「いいっすね、流星の道。イヴにもセリシアにもメルセデスにも見せてあげたいっすねぇ」


「誰だそりゃあ」


「オレの友達っす」


なんだよ、全員女の名前じゃねぇか。


俺にはそんな風に思える相手などいないが、今ごろ王都北の森で俺の悪口でも言ってるであろうババァとクソガキの顔が頭によぎってしまった。


辟易しながらも美しい流星群を見上げていると、ラスティンの声が俺の意識をひっぱり上げた。


「もうすぐ出口だよ!」


「もうすぐ? 先は真っ暗じゃないか!」


幼い指は戸惑うことなく真っ直ぐ先をさしたままでいる。ところがどう見てもーーーー


「お、おい……! 行き止まりだぞ!?」


「いやあぁぁぁー! ぶつかるっすー!」


ゴツゴツした岩の壁がもうすぐそこに迫ってきている。にも関わらずラスティンは変わらぬ速さで突き進む。恐怖もためらいも感じさせない、むしろ疾走の快感に浸る競技選手のように前に前にと足を繰り出す。


汚れで黒くなった裸足の裏に、ふと俺は生を感じた。ラスティンは生きている。踏みしめる大地がどれだけ変わったとしても彼はしっかりと根を下ろし、そしてまた力いっぱい蹴り上げ進むんだ。きっと、そうだ。


「大丈夫、ボクを信じて。このまま真っ直ぐ。真っ直ぐ。止まっちゃダメ! 宇宙の果てさ、ボクの今の宇宙の果て!」


俺は額の前で両腕を交差させると、目を閉じた。

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