表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/53

せんぱい、早く!

 湿った枝を踏んだ時のような骨の砕ける音とともに、その小さな体からは想像もつかない量の血が大きな血溜りを作ってゆく。赤みが差していた頬や唇からは次第に色が抜け、今の今まで生きていた小さな命はその幕を閉じた。他でもない、俺の手によって。


 変態が進んでいた方がマシだな。


 人間の原型を留めないくらいまで変態してくれていた方がまだいい。顔なんて特にそうだ。今回みたいにほぼ人間寄りだったり、顔の半分が毛に覆われた緑色の複眼に変態しかけている状態は最も気分が悪い。いっそのことおぞましいクモの姿になっていた方が……。


 罪悪感から少しでも逃れるためだけの都合のいい考えでしかないことくらい、分かってはいるが。


「……クソ」


 顔にまで飛んだ返り血を手の甲で拭っていると、フェイの高い声が降ってきた。


「せんぱーい! 一大事っす!」

「何事だ」

 どうせまた泣き言かと思いきや、

「ほやほやっす!」

 と弾むような声。

 

 顔を拭う手を止め、フェイに駆け寄る。


「せんぱい! 今、剣差し込んだら超やわらかいっす! これほやほやっす、たぶん!」


 喜ぶ乙女のようにピョンピョンと飛び跳ねる、ガタイのいい二十歳の男に俺はがっくりとうなだれた。


「まだ腹を開いてなかったのか……」


「えー、だってぇー、怖いじゃないっすかぁ。腹を開くのはせんぱいの仕事っす」


「……お前、いつから上司に仕事を割り当てる権利ができたんだ。大体そんなんだからいつまで経っても――――」


「はいはい、分かりましたから早く早く! あっ!」


「今度はなんだ」


「なんかオレ、おな、おなか痛いっす! ちょっと失礼するっす!」


「……は?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ