わしだって一応……
「ラスティン……なぜ俺の名を」
「ボクは何でも知ってるよ。あの時、体はもうダメだったけど心は目を開けてたんだ。蜘蛛になんてなりたくなくて、苦しくてどうにかなりそうだった時にお兄さんが助けてくれた。すごくうれしかったよ。すごく」
「助けてなんて……俺は……」
お前を殺したのに。
「だから会えてよかった! ホマンお兄さん、ありがとう」
返す言葉は口から出てきてはくれなかった。
自分のしてきたことに初めて向き合える許しがもらえた気がした。心に絡みついていたツタが少しだけ緩まった気がした。
でも、そのツタを決して薙ぎ払ってはいけないのだ。そう、決して。最後まで。一生。俺が、死ぬまで。
「……ありがとう……ラスティン」
ようやく絞り出せた言葉はそれだけだった。
ラスティンと話をしている内に体の変質はいつのまにか治まり、水が押し寄せてくる圧迫感も消えていた。
「すごいおまじないだ……。その子、やっぱり強いや」
ほっとしていると、小さな指が俺の腰の辺りを差した。
その子とか強いだとか何を言ってるんだ?
不思議に思い見やる。するとどこかで見覚えのあるものが。
「……あのババァ、いつの間に」
まるで炎。真紅の宝石を取り囲むようにカーラの額飾りは手の中で赤い光を放っている。
「剣の柄に巻きついてたの知らなかったの? それにババァって……ホマンお兄さんおもしろいね」
「なんでこんなもん……」
「気づかないの? お兄さんがここで人間でいられるのもその子のおまじないが守ってくれてるからだよ。その子、ボクと似てる……でも違う。強かったし、今だって強いや。でもでも、ホマンお兄さんのこと大好きってのは一緒だ!」
「だっ!?」
大好きだと? 冗談じゃない、ラスティンはいいとしてもカーラにとっちゃ俺なんていうことをきく都合のいい犬みたいなもんだろ。どうせ、犬が野垂れ死にしないように首輪でもつけて見張ってる気になってるに違いない。フン。
「ところで、お兄さんひとりなの? もうひとりのお兄さんは?」




