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3.聖天童★貞王の『営業』 (前)


『はい、着きましたよっ!』


 キャンピング・トレーラーの運転席のゲンちゃんの声が、スピーカーから聞こえてきた。

 窓から外を見ると……フェンスの向こうは、広いグラウンド。その上の丘に、幾つかの校舎と体育館が見える。

 紅玉学園高校というのは、結構、大きな学園のようだ。

 ああ野球の練習場にテニスコート……ゴルフの練習場まである。

 なかなか豪勢な高校だな。スポーツにかなり力を入れているようだ。

 まあ、東京郊外の私立校だしな。

 夏休み期間でも部活があるんだろう……お洒落な制服を着た生徒たちが、校門に向かって歩いている。

 男は……グレーのズボンに、校章のワッペン付きの半袖ワイシャツ。首にはネクタイ。

 女の子は……赤地のチェックのスカートに、白ブラウス。首元には大きなリボンを付けている。


「かぁぁ、共学かぁ。いいねぇ、みんな楽しそうだねえ」


 オレは、男子校で……しかも、高校は2年の春に中退している。

 自分では『退学届』とかを提出しに行ってないから……実際は、どういう風に処理されているのか、よく知らないが。

 オレは、アクション俳優になるのを夢見て……17歳で、家出同然で東京へ飛び出して来た。

 家出同然と言っても……オレの家には、もう誰もいなかったんだけど。

 オフクロは、オレが小学生の時に事故死していて……。

 オヤジは、再婚相手と別の町に住んでいた。

 オレはジィさんの家に引き取られていたんだけれど……そのジィさんも病死したから。

 ジィさんの遺産の150万円の貯金を持って……。

 納骨した日の翌日に……オレは、鈍行列車で東京へ向かったんだ。

 つーか、そのまま家に残っていたら……ジィさんがオレのために残してくれた金は、全部オヤジに巻き上げられていたと思う。

 オヤジとオヤジの再婚相手が気付かないうちに……オレは、こっそりとジィさんの家から抜け出さなくてはならなかった。


「ああーっ、やっぱり裏口から入るんだっ!ふぇー!」


 神酒が言う通り……オレたちを乗せたトレーラーは学校の正門前を通り過ぎて、敷地の周りを大きく廻り込む。

 まあ、訳の判んないカラーリングに『世田谷童貞保存会』てデッカク書かれたドデカいキャンピング・トレーラーだもんな。

 あんまり高校生に見せるべきものではない。


「……GATEに着いたネ」


 今時の高校は、セキュリティがしっかりしているから……裏口にも、しっかりとガードマンの詰め所がある。

 中から制服のオッサンが出て来るが……。

 ゲンちゃんが、ささっと降りて……話を付ける。

 さすが、文部科学省のエリート公務員……ちゃんと事前に話してあったらしい。

 裏門から……高校の敷地内へ。

 ああ、さすがに裏口だけあって、坂が急だな。

 エンジンがブオオオッとうねりを上げて……学校の丘に登っていく。

 そして、体育倉庫裏の駐車場に……トレーラーが停車した。

 隣には、ここの高校の名前が書かれたマイクロ・バスが3台ほど並んでいた。

 運動部の生徒が、大会やよその高校へ遠征に行く時なんかに使うんだろう。

 オレたちのキャンピング・トレーラーの……エンジンが停止する。


「よし……行こう」


 オレたちは、運転席のゲンちゃんと合流するために……前部のドアの方へ向かう。

 神酒は……フリフリのレースのドレスのまんま、手ぶら。

 リッちゃんは、『公務』時間中にはいつも抱えている四角い『ライフル・ケース』を肩に担ぐ。

 いや、オレが『ライフル・ケース』だっていうことを知っているから……そう言い切れるというだけの話で……。

 一般の人から見たら……オーケストラで使うフルートとかクラリネットみたいな楽器が入っているハード・ケースだと思うだろう。

 リッちゃんの凛とした麗しさと冷たい美貌が……また、音楽家っぽいし。

 ノラは、廊下の鏡を見て軍帽を被り直し……軍服をチェックする。

 さすが、もはや国家の体をなしていないとはいえ……王国の士官だけのことはある。

 それから……。


「……サダヲゥ」


 オレを呼んで、オレの着ている軍服のしわを……直す。


「……身だしなみは、ちゃんとスルのネ」


 いや、身だしなみも何も……オレは、軍服にアフロのカツラに大サングラスなわけで……。


「……サダヲゥがちゃんとしてないと、ワレワレが笑われるノネ」


 じゃあ……ちゃんとしなけりゃいけねぇな。

 オレはどれだけ笑われてもいいが、ノラやリッちゃんや神酒まで笑われるのはよくない。


「今、携帯で職員室に電話しました。さっきの警備の人からも連絡が入っているはずですから……すぐに、担当の先生が迎えに来てくれると思います」


 ゲンちゃんが、運転席から降りて来て……そう言ってくれた。


「悪いね、ゲンちゃん。マネージャーみたいな仕事までしてもらって……この車の運転だって大変なのにさ」


 ゲンちゃんは、たまたま……前から大型免許を取っていたらしいけれど。

 珍しいよな。上級国家官僚で、キャンピング・トレーラーが運転できるなんて。


「……このクルマの運転なら、ノラもできるネ」


 ノラが、ニタニタ笑って……そう言う。


「メンキョなら、国で取ったヨ」


 ……んんん?


「……いつ取ったんだよ?」


 オレは尋ねる。


「……去年」

「去年なら……ノラの国の島は、もうほとんど沈んでただろ?」


 ノラの故郷、南ペカペカ島は……地球温暖化による海面上昇と地盤沈下で、国土の99.9パーセントまでが海底に沈んでいる。


「……去年なら、まだ道路が一本残っていたヨ」


 現在では、満潮時には4畳半ぐらいの広さの岩塊が、海面から顔を出すだけになってしまっているらしい。

 その上に無理矢理、鉄骨でヤグラを組んで……何とか、留守番役が2名ずつ交代で常駐しているそうだ。

 かろうじて現地に『国民』が暮らしていることで……国自体は、書類上は消滅せずに済んでいる。

 まあ、元々居た住民たちは、全員が他国に避難しているけれど。

 ノラたち王族は、東京に居て……『南ペカペカ島王国・亡命東京政府』を名乗っているというわけだ。

 

「あの……ノラさんに運転していただくのは、日本政府としては、ちょっと困ります」


 ゲンちゃんが……苦笑する。


「……ドウシテ?ノラ、上手いヨ」


 そんなわけがないだろう。

 ノラが王族だから……ノラの国の係官は、1本道をテキトーに走らせてみただけで、簡単に運転免許を発行したんだと思う。

 その辺のイージーさは、底が抜けている国だし。


「だいたいさ、ノラの免許って……大型じゃないだろ?普通のクルマの免許じゃ、こんな大きなトレーラーは運転できないんだぞ」


 オレが、そう言うと……。


「そんなことないネ。オートバイから、戦車まで……地面を走るものは、全て運転できるヨ。ソウイウ免許にしてもらったカラ」


 ああ……もしかして……。

 こいつ、『免許』の意味が判っていない?

 ていうか……こいつだけでなく、南ペカペカ島王国の国民全員が……。


「あのさ……車とか機械を、安全に運転できる技術があると認められた人が、国から『免許証』を与えられるんだぞ?」

「ノラの国は違うネ。『免許証』が先ネ。先に『免許証』をもらわないと、練習もできないネ。ソレニ、『免許証』さえあれば、何をしてもいいわけれダカラ」


 うーん。無理だな。

 オレらとは……文化が違う。


「何にせよ。もし、ノラさんが運転して事故を起こした場合の……色々と問題になりますから」


 ゲンちゃんが……言う。


「大丈夫よヨ。このトレーラーは、ちょっとやそっとのことでは壊れないネ」


 いや……そういうことでなく……。


「それに、もし壊れても……リツコの組織が、直してくれるネ」


 確かに、『世田谷童貞保存会』が修繕するんだろうけれど……。


「その場合の費用は、ノラさんの母国に請求致しますが……」


 リッちゃんが、冷たく言う。


「それは困るネ。王国は、今、ビンボーなのネ。ソレはリツコたちが支払うべきネ」


 ノラは、ヘラヘラ笑っている。


「あのさ……ノラちゃん。このトレーラーだけならいいけれどさ、もしノラちゃんの運転で他の人を巻き込んじゃったら、その場合はどうするつもりっ?!」


 神酒が……尋ねる。


「我々もそれを危惧しています。その場合は、日本国民とノラさんのお国の問題になってしまいますからねぇ。それどころか、たまたま日本に来ていた他の国の人にケガとかさせてしまった場合は、日本国では対処できなくなりますよ?」

「そうだよ。ノラは、南ペカペカ島王国の軍人なんだからさ……ケガさせた人の国籍によっては、ゲンちゃんだって対応しようがねぇぞ」


 某国とか某国の人間だったら……。


「うーん。なるほどネ」


 ノラも、ようやくヤバさが理解できたらしい。


「デハ、その場合は……ノラでなく、サダヲゥが運転していたということにすればイイノネ!」


 何でオレが、ノラの起こした事故の身代わりにならないといけないんだ。


「それはダメだよ……ノラちゃーんっ!」


 神酒が……笑う。


「はい、ミスターは……『運転免許証』をお持ちではありません」


 うん、自慢じゃねえが……運転はできねえぞ。

 若い頃に教習所に通う金も、ヒマも無かったからな。


「……運転できないノカ?サダヲゥ?」

「悪いな。全然、ダメだ」

「……南ペカペカ島王国の『運転免許証』なら、すぐに作れるゾ?」

「いらんわッ!」


 ていうか、そもそも南ペカペカ島王国の免許は……『国際免許証』になるのか?

 ジュネーブ条約とか、加盟してないだろ?


「ウーン、残念ネ……!」


 残念なのは、お前の方だ。

 そんな話をしているうちに……。


「ああ、いらっしゃいましたね」


 トレーラーのフロントガラスの先を見ると……オッサンが3人が歩いて来る。

 うち1人は……顔見知りだ。

 『全日本体育教育主要問題連絡協議会連盟』……通称、『全体主議連』の我孫子阿批男アビコ・アビオ事務局長だ。相変わらず、白髪のダルマみたいな体型でのっしのっしと歩いている。

 『全体主議連』は、日本のスポーツ教育の親玉みたいな団体で……学校関係なんかには、影響力が強い。ゲンちゃんは、まだ若いし……いきなり教育現場に、国家官僚が乗り込んでも話が通じないので……それで、いつも『全体主議連』に間に入ってもらっている。我孫子事務局長本人が朝から出張ってきたのは、珍しいけれど……いつも、事務局の小太りのオッサンが来てくれている。

多分、ここの学校はそこそこの名門なんだな。それで、『全体主議連』としても事務局長クラスを派遣しなくちゃいけなくなったんだろうと思う。

 そんで……我孫子氏と一緒に来た2人のオッサンは、ここの学校の先生だな。

 1人は50過ぎっぽい、頭の禿げたメガネにスーツ。

もう一人は四〇ぐらいで、ジャージ姿だ。なかなかガタイが良い。体育教師だな。


「さあ、行きましょう」


 『戦闘禁止カラー』が塗りたくられた、このトレーラーを下車すれば……いつ『火星猫人』の襲撃があるか判らない。

 オレたちは、全方位を警戒しながら……外に出る。

 やつらの動向には、万全の態勢で注意していないけないが……それでも、『営業』はしないといけない。

 『聖天童★貞王』として、日々の『営業』をこなしているからこそ……オレは『世田谷童貞保存会』から時給計算で給料が貰えるのだから。

 『火星猫人』との戦いでは……一切、金は貰えない。


「――オハヨウゴザイマッスッッ!!」


 とにかく……ここからは『営業』だ。

 ならば、ゲーノーカイの片隅の端っこのさらに崖っぷちの底辺にしがみついているオレとしては……精一杯、大きな声で挨拶することから始める。

 先方より、先に。

 オレは『営業』してお金を貰う立場で……『全体主議連』や学校は、オレに金を払ってくれる大事なお客様なのだから。


「お早うございます。本日は、よろしくお願いします!」

「……お早うございます」

「お早うございまぁす!うっしっし!」

「……Good Morning」


 ゲンちゃん、リッちゃん、神酒、ノラも……オレに続けて、挨拶する。


「ああ、吉岡先生、松下先生……こちらが、文部科学省の頼光さんです」


 『全体主議連』の我孫子氏は、いつものようにオレを無視し……まず、ゲンちゃんを先生たちに紹介する」


「初めまして、『文部科学省・特殊環境教育基盤整備事業推進室』の頼光です」


 きちんとしたスーツ姿のゲンちゃんが、にこやかな笑顔で先生たちに言う。


「頼光さん、こちらは紅玉学園高校の近藤教頭とアーチェリー部の顧問の沖永先生です」


 案の定……禿メガネのスーツが教頭で、ジャージが顧問か。


「よろしくお願いします!」


 ゲンちゃんが、ススッと名刺を取り出すから……2人の先生たちも。

 うーん、日本人は名刺交換が本当に好きだよなあ。


「な、なるほど……確かに文部科学省の方なんですね」


 ゲンちゃんの名刺を見て、教頭先生は言う。


「何でしたら、IDカードもお見せしましょうか?」


 笑顔でそう言う、ゲンちゃん……。


「いや、あの……それは結構です。『全体主議連』の我孫子さんのご紹介ですし……しかし、あの」


 教頭は困惑しながら、オレたちの方を見る。

 一方、アーチェリー部顧問の方は……最初から、胡散臭そうな眼でオレたちを睨んでいた。

 ああ、信用されてねえな。当たり前だけど。

 どこの学校へ『営業』に行っても……最初はこうだ。

 ゲンちゃんとリッちゃんは、スーツ姿のまともな大人の格好をしているけれど……。

 オレは、アフロにサングラスに……エッグダックグリーンの生地に金モールの軍服姿だ。

 そして神酒は……金髪碧眼の白人美少女が、フリフリのレースのドレス姿だし……。

 ノラに至っては……見た目は、大柄でモデル体型の黒人美女で、オレと同じ軍服をビシッと着こなしていけど……ずーっとヘラヘラ笑っているし。


「あの、我が校と致しましては……あくまでも『全体主議連』の方からいただいたお話だからこそ、お受けしたわけなのですが……」


 つまり、教頭は……学校側から、オレたちの訪問を『要請』したわけではないことを強調している。


「一応、事前にいただいた資料も眼を通してはあるんですが……その」


 教頭は……オレ、神酒、ノラを見て。


「こちらのみなさんは……どういった方々なんでしょうか?」

「……我が校は、学園祭にだって『芸人』を呼ぶようなことはしていないんですがね」


 松永顧問が、ムスッとしてそう言う。


「申し訳ありませんが……『不審な人物』を我が校の生徒に会わせるわけにはいきません。私たちは、生徒に対して責任があるのですから」


 まあ……『不審』であることは認める。


「まあまあまあ……そうおっしゃらないで下さい。そりゃあ、まあ、格好は……こんな『仮装行列』ですがね。でも、『聖天童★貞王』氏は、特異な能力を持たれている方ですから。彼の推薦者は、議連の世田谷会長ご本人ですし……この通り、文部科学省の全面的なバックアップもいただいています。何も心配なさることはありません!」


 我孫子事務局長が、ニヤニヤ笑いながらそう言う。このオッサン、絶対に心の中で面白がってるよな。毎回、そう思う。


「この3ヶ月……試験的に、関東近郊の学校を廻ってきましたが……どこ学校からも『顕著な効果があった』という報告をいただいています。訪問した学校からのクレームは一件もありません。ゼロです」


 オレが『聖天童★貞王』としての『営業活動《ドサ回り》』を初めたのは、今年の春だ。5月の中頃から活動を初めて……3ヶ月か。

 『もう3ヶ月』と考えるべきか、『まだ3ヶ月』と思うべきか……オレには判らない。


「確かに、『聖天童★貞王』氏は、こんな『チンドン屋まがいの見てくれ』ですがね……でも、毎回、わたしや文部科学省の頼光さんが、こうして見張っていますし……それに、ほら、こちらの綺麗なお嬢さんたちも……」

「はい、わたくしたちも監視しております」


 リッちゃんが、真面目な顔でそう言う。

 凛とした彼女のことは……先生たちも、信用してくれるだろう。

 ……しかし。


「そうそう、神酒だって……女子高生がパパに手出ししないように、ちゃんと見てるよーんっ!」

「……見てるのネェ!」


 神酒とノラは……なあ。

 神酒なんて……女子高生がオレを襲って『童貞』を奪うのではないかと、本気で心配している。

 ノラは……『見てるだけ』なんだよな。きっと。


「……まあ、良いでしょう。私たちも、『監視』はさせていただきますし」


 教頭は、顧問の体育教師に振り向く。


「よろしいですね。松永先生」

「……ほんの少しでも、生徒たちに対して『不審な行動』をした場合は、即刻叩き出します。構いませんね?」


 ああ……『敵意』の眼で、オレを見ている。


「あなたに『不思議な力』があるなんてことを、私は信じていませんからね」


 オレの『力』……いや『聖天童★貞王の力』は、実際に見てみないと理解できない。


「確かに私も、他校の運動部の先生方から……この人の『話』は聞いています。とても『効果』があったということも」


 近藤教頭は、ジロジロとオレを見る。


「だが、わたしは……かなり『眉唾』だと思っていますがね」


 『敵意』には……正面から立ち向かってはいけない。

 ただ脇に流すだけだ。

 かつて『師匠』に、そう教わった。

 大切なのは……『やらなくてはならない仕事』を完遂することで……。

 自分に『敵意』を向けてくる人間と闘ったり、その人に『自分の力を認めさせる』こともはない。

 ……相手を間違えるな。

 オレがしなくてはいけないのは……『視聴者』に対するパフォーマンスだ。


「本日は、よろしくお願い致します。『聖天童★貞王』です」


 オレは改めて2人の教師に挨拶し、深々と頭を下げた。

 そして……名刺入れから、名刺を出す。


「これはこれは……」

「……ああ」


 名刺を出したら……教頭も顧問も、受け取らざるを得ない。

 それが日本のビジネス・ルールだ。

 ただし……2人とも、オレには名刺をくれなかった。

 オレの名刺をジロッと眺めている。

 そこには……。


『スポーツ・ウォッチャー 聖天童★貞王』


 とだけ……印字されている。

 連絡先の住所も電話番号も……メール・アドレスも無い。

 あるわけない。

 『聖天童★貞王』は、オレが演じている『役』であって……実体は無いのだから。


「あ、済みません。オレは勝手に『営業』することは許されていないんで……『聖天童★貞王』への連絡は、『全体主議連』かゲンちゃん……いえ、文部科学省の頼光さんの方にお願いします」


 オレが、


「えっと、あの……?」


 教頭は、オレの名前の上に書いてある『肩書き』に引っ掛かたらしい。


「この『スポーツ・ウォッチャー』というのは何なのですか?」


 これも……いつものことだ。


「あ、オレ……『見る』だけなんですよ。だって、ほら……『コーチ』とか『スポーツ療法士』とかの資格を持ってねぇですから」


 ましてや、『霊能者』や『拝み屋』……でもない。

 オレはただ『見る』だけの男だ。


「聖天童さんが何を『見て《ウォッチ》』して下さるのかは……すぐに判りますよ。大丈夫です。日本国が保証しますから」


 ゲンちゃんが、心配そうな先生2人に言う。


「……『南ペカペカ島王国』も保証するネ」


 ノラが、ニカニカ笑いながら……言う。

 教頭は……。


「判りました。とりあえず……こちらにどうぞ」


 オレたちは……駐車場から、校内へと向かう。




 ということで、2周目の投稿です。

 はぁぁ、新しい作品の立ち上げって大変ですねえ。

 もう一本の方は、書きながら段々、人や物語が足されていったんですけれど……。

 こっちは、先にある程度方向性を決めておかないといけないので……。


 とにかく頑張ります。

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