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第8話.説明のお時間

 3月22日設定変更

 楠木姉弟の設定を一部変更


 楠木姉弟の設定をハーフからクオーターに変更しました。

「ふーん。じゃあ天真は本当にこっちに来たばかりなんだ」

「はい、その通りです」


 場所は先ほどの草原から移動して、徒歩で2時間ほどの町。中世ヨーロッパ風の概観に突っ込むのも諦めた天真は成り行き上助けた少女、美亜の案内で酒場(まだ日が暮れていないので食堂として機能していた)に来ていた。一息つけたところでようやくお互いの情報を交換し始める。


 美亜。フルネーム楠木美亜(くすのきみあ)。アメリカ人のクオーター。現在17歳でこっちにきたのはおよそ1年前。弟が一人いてその子もこちらに来ている。


 そんな彼女の自己紹介を聞き終えた後、天真も自分のことを説明した。


「まあ私の現状はこんな感じです。それで、そろそろこちらの質問に答えてほしいのですけど」

「うん、分かった。やっぱり初めてだといろいろ不安だしね」

「その言葉だけ聞くと勘違いされそうですね」

「セクハラ禁止。あ、でも天真の聞きたいことってやっぱりこの世界の基本的なことを含めてたくさんある?」

「まあ、確かに」


 何せ聞きたいことがありすぎて何から聞けばいいのかさっきから悩んでいるところだ。そんな雰囲気を察したのか、


「じゃあまず始めに私がこの世界の基本的な事とかを話してくから、話の途中で疑問に思ったことがあったらそこで私に質問していってくれる?」

「分かりました。じゃあその形式で行きましょう。美亜さん、始めてください」

「うん」


 そう言うと美亜は頼んでおいたドリンク(ノンアルコール)を一口飲んで口内を湿らせた後、姿勢を正して話し始めた。


「まず、もう分かっていると思うけどここは私たちがプレイしていたオンラインゲームとまったく同じ世界で……」

「ちょっと待ってください」


 いきなり出鼻をくじかれて少し不愉快そうに口を閉じる美亜。だがそんなことよりも、


「えっと、オンラインゲームって何です? あ、いやもちろんそれが何なのかは知ってますけど私はオンラインゲームをプレイしたことは無いですよ?」


 この言葉に驚いた表情を見せる美亜。


「ということは、あなたは“バベルワード”のプレイヤーじゃないのね?」

「“バベルワード”? 確か世界中で数百万人がプレイしている人気のMMORPGですよね。なぜその名前が出てくるんです?」


その返答に少し驚いたような顔をする美亜。


「そんな……言動からして絶対アキバ系だと思っていたのに……」

「もしもし美亜さん? 勝手に人の性格を決め付けないでください。私の知識は友人にものすごくディープなアキバ系が居て、その人に付き合っていて自然と身に付いただけですから」

「えー?」

「そんな狼少年を見るような目つきはやめてください。確かに私もアニメや漫画は見ますが、あくまでそれなりにです。悪いのはあのアキバマスターなんです」


 断言する天真。それと同時に年に二回ある有明でのイベントに、他の友人たちと共に拉致された忌まわしい記憶が思い浮かぶ。あれはすごかった、というか戦争だった。


「……何で遠くを見つめながら涙目になってるの?」

「いえ、古傷が開きまして。やはりもう少しお灸を添えておくべきでしたか」

「???」


 なにやらトラウマを思い出しているような様子に多少引きつつも美亜は説明を続ける。


「なんだか話がぜんぜん進まないからいきなり本題に入っちゃうけど、こっちの世界に居るのは判っている限りでは全員が元地球の住人なのよ」

「……なんですって?」


いきなりの発言に少し面食らう天真。


「異世界なのにここの住人たちは全て元地球人なんですか?」

「そういうこと」

「では我々から見て異世界人というのは」

「私は会ったことないし、居るって話も聞いたことがないわね」


 冗談のような事実に頭が回っていないのを自覚できた。ここは紛れも無く異世界だというのにその住人は全てメイドイン地球なんて。


 その事実を自身の中で消化しようとすることしばし、ようやく衝撃から立ち直る天真。


「分かりました。まあ全員が同じ出身というのは意思疎通は図りやすくて便利かもしれませんね」

「まあ、確かに文化の違いとかはそれほど感じないわ」

「それで話を元に戻しますけど、なぜここでMMORPGの話が出てくるんです?」

「それは……」


 そこでいったん呼吸を整える美亜。そして表情を引き締める。


「それはこっちの世界に来る条件の一つに”バベルワード”のプレイヤーであるというのが含まれるからよ」

「……ゲームの世界に引きずり込まれる、ですか。一昔前のライトノベルみたいですね」


 口調はあくまで軽いがその表情は真剣に美亜の話を受け止めている天真。緊迫した雰囲気の中、美亜の説明は続いていく。


「まず元の世界にある“バベルワード”というMMORPG。あなたがさっき言った通りこのゲームはプレイヤーが世界に数百万人いるMMORPGの中でもトップクラスの人気があるゲームよ。7年くらい前から稼動が始まって未だにその人気は衰えていないわ」


「そこまでは知っています。それで、こちらに来る条件の一つと断定する根拠は何でしょうか?」

「この世界はゲームの舞台となっている世界とまったくといっていいほど同じなの。大海原に一つだけ存在している大陸、その中央に聳え立つ白亜の巨塔、さらにその地に生息している人とは異なる異形の住人達、私達がプレイしていた時とまったく同じ姿でここに実際に存在しているのよ。この“シナル”という世界は」

「…………」

「なぜこっちに来てしまうのかは分かってない。けどここがゲームと同じ世界でそのプレイヤー、特に重度のヘビーユーザーが高確率でこっちに来ているのは分かってる。まああなたのような例外もいるようだけど」


 そういって観察するようにこちらを覗き込んでくる美亜。


「プレイヤー以外にもこちらに来る人はいるんですよね?」

「ええ。まあこっちはプレイヤーに比べると頻度はそう多くないんだけど、それでもここ数年でそういう人達も同じくらいに増えているらしいわよ。もっともその人達がなぜこちらに来るのかは詳しくは分かっていないみたいだけど。あなたには何か分かる?」


 そんなことを言われても、なぜプレイヤーで無い自分がここにいるのかこちらが教えてほしいくらいだと天真は思った。そこでふと疑問が湧いたので尋ねてみる。


「だけど、ゲームのプレイヤーばかりがこちらに来ているのならば、元の世界で多少なりとも話題になっているのではありませんか? ですが、私はそんな話は聞いたこともありませんよ」


 その言葉に美亜は少し難しそうな顔をすると、


「確かに大騒ぎになるはずよね。人が消えたと分かれば、だけれど」

「? どういうことですか」


 いぶかしげな視線を送る天真に美亜は告げる。


「聞いた話だとこっちに来た人達ってね、元の世界の人達に忘れられるそうなのよ」

「……え?」

「友達同士でこっちに来た人達がいるんだけど、その人達は1ヶ月くらいの差でこっちに落ちてきたのね。それで後から来た人が来る前の一月間、友達のことを完全に忘れていたらしいの。しかも聞いた話だとその家族ですらそのことに気づいていなかったらしいの」


 その話を聞いて絶句する天真。つまりこっちの世界に来た人間は何らかの原因によって元の世界の人たちに忘れられるため人がいなくなっても誰も騒がない。騒がれなければ事件にもならないということだ。何せ、人が居なくなったという事実すらないのだから。


「なぜそんなことが……」

「やっぱりそれも分かっていないの。知り合いが言うにはその人物がいたという痕跡ごと記憶から消えてしまっているから騒ぎも起きないんじゃないかって。元の世界に戻った人がいない今は確かめようもない事実だけど」


 戸籍なども消えてしまっているということだろうか。だとしたらこちらに来た人たちは文字通り元の世界から消えてしまっているということになる。記録すらないのであればその人間は最初から存在していないのと同じことだ。


「ということは、私も」

「あっちの人たちの記憶から消えていると思うわ。最も例外はあるかもしれないけど」

「そうですか」


 通常ならばかなりショッキングなことを話されているのに、思ったよりも平然としている天真。そんな彼に美亜はいぶかしげな視線を向ける。


「ずいぶんと落ち着いているわね?普通ならこんなこと知らされてあわてるなりなんなりすると

思ったんだけど」

「断りもいれずにいきなり長期にわたって行方不明になって家族や友人たちに心配を掛けるのは心苦しいと思っていたところです。ですが私のことを忘れているというのならそんなこともないでしょう。もっとも、あの人たちが素直に忘れているとも思えませんが…」


 強がりなどではなく、どうやら本当にそう思っている様子の天真を見て苦笑する美亜。


「そっか……。心配してくれる家族がいるのね」

「? どうかしましたか」


 思わずつぶやいた言葉は小さすぎて天真の耳には届かなかった。だがその表情が幾分苦しげに見えて思わず声をかける天真。だが、美亜はなんでもないと返すだけだ。そう言われてしまえばそれ以上立ち入るのも無粋になる。


 いきなりできた会話の空白。お互いに居心地の悪い空気を感じてはいたがだからといって何ができるというわけでもない。そのまま数分が経過し、我慢できなくなったのかその空気を吹き飛ばすかのように、美亜が説明の続きを始める。


「それで、ここの人間は全員元地球人だっていうのは分かった?」

「はい。その条件も含めまして」

「うん。それでね、実は元々地球の出身なのは私たち人間だけじゃないの」


 幾分表情を険しくしながら話す美亜。その言葉にしばし考え込む天真。やがてその意味を把握して恐る恐るたずねてみる。


「もしかして、さっきの岩男とか紫さんも地球から?」


 頷く美亜。


「そうですか。世界にはまだ未知の生物がいるとは言われていましたけど、まさか異世界で出会えるなんて。しかもゲーマーだったんですか」

「あの、なんだかものすごい勘違いをしているようだけど」


 一人で納得している天真にあきれたように声を掛ける。どういうことですか、と視線で訴えかける彼に美亜は再び表情を硬くした。


「さっきの2人は人間よ。ただし、元が付くけど」


再び考え込む天真。しばらくしておもむろに問いかける。


「皮膚病?」

「違うっ!!!」


 神速でつっこむ美亜。


「あんな皮膚病あってたまるかぁっ! 岩の方どう考えてもそんなレベルじゃなかったでしょうが!?」

「いやそこはほらゴツゴツの実とか」

「病気じゃないし!? いくらファンタジーでも悪魔の実とかあってたまるかぁっ! 海賊王目指してどうすんのよっ!?」

「ナイスつっこみ」


 ぐっと親指を立ててほめる。だが美亜は気に入らなかったのか、草原で見せたような殺気を放ちながらこちらを睨み付ける。


「いやほらなんだか説明ばかりで皆さん疲れたんじゃないかと思いまして。ここで息抜きを」

「私たちのほかに誰がいるのよ?」

「そこはほら、お約束ということで」

「何をわけの分からないことを」

「ほらほら機嫌直して。それで? あの人たちが元人間というのはどういう意味なんです?」


 気の抜けたような相手に戦意を削がれたのか怒りを沈める美亜。確かに先ほどの重い空気は跡形もなくなっていたが、別の意味で精神的にダメージを負っていた。気を取り直して説明を再開する。


「言葉通りの意味よ。こっちに来た人たちの中からそれなりの割合で、急に身体能力が上がったりする人たちが出てくる。その人たちは時間の経過と共に人の形すらなくして異形へと成り果てる。このことを私たちは“転化”って呼んでいるけどなぜそうなるかは私たちにも分からない」

「そんな奇怪な現象が起こるのですか。そうするとこの世界の知的生命体は元をただせば全て地球人という事に?」

「そう受け取ってもらってもかまわないわ。例外はあるかもしれないけど、すくなくとも私は知らないわね」


 おかしな世界に来たものだと天真は思った。ここは間違いなく異世界なのに住んでいるのは全て元地球人ときている。しかも中には変身する者もいるらしい。もしかして自分も羽が生えたりするのではないかと想像してみる。


「……触手系はやだなあ」

「?」


 グロい自分を想像してしまいげんなりする。だが原因が分からない以上考えていてもしかたがない。まあその時はその時と割り切ってさらに質問を重ねる。


「美亜さんの服装やこの町を見て思ったんですが文明的には中世ヨーロッパくらいですか?」

「そうね。こっちには機械なんて便利なものはないし、作れる人もいない。だから生活も機械文明以前のものに戻すしかない。まあ蒸気機関あたりはどこかが研究してるって噂は聞いたことあるけど」

「本当に産業革命以前の生活ですね。皆さんよく順応できたものです」

「まあ最初の頃は大変だったらしいわよ。それでも何とかなるんだから人間ってやっぱりいざとなるとすごいとあたしも思うわけよ。まあ何とかなったのは別の要因も絡んでくるんだけど」

「別の要因?」

「そう。これよ」


 そう言うと天真の目の前に人差し指を突き出す。いきなり何をするのかといぶかしんでいると―――


「炎よ」



 ボッ



「あちっ!?」


 美亜の囁きに反応していきなり指先から火が出てくる。思わぬ出来事に仰け反る様にして目の前の火を避ける天真。


「……確かにこれ以上ないくらいの説明ですが、もう少しやり方があったんじゃないでしょうか?」


 多少焦げた前髪を気にしつつ天真は呟いた。

作「まずは感謝を。こんな小説を評価してくださる方々が居ましたので改めて御礼を言わせていただきます。」

天「ありがとうございました」

作「評価、感想には時間の許す限り返信とかしていきたいと思いますのでこれからもよろしくお願いします。」

天「さて、今回はこれからの活動予定ですか」

作「と思っていたんだけどこれを書いている時点で実は時間があまりない」

天「え?」

作「そんなわけで今週はこれまで」

天「あの、ちょっと?」

作「それでは皆様また来週」

天「いやそれ私のせりふですからって、ほんとにお終いですか!?」

作「さよーならー」

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