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第3話.異世界開拓事情、簡易編

 スノウはどこか遠くに視線を彷徨わせながら、噛み締めるように言葉を紡ぐ。その心に去来するのは昔日の思いか。

 

 そんな彼女の手を優しく握る天真。それに気付いたスノウは少しはにかんだような表情で笑みを浮かべる。


「なんつーか、色々ととんでもない話だよなあ」

「本当」


 話を聞いていただけなのにこの疲労感は何なのだろう。美亜とハヌマーンはゆっくりと息をついた。なんとも言いがたい疲労感が体を包み込んでいる。


「皆ー、お茶を飲んでー一息ついたらー」

「……そういえばあなたも居たのよね」


 横合いからティーカップを差出す桃子を見て美亜が呟く。まったく会話に入って来なかったので、完全にその存在を忘れていた。


「私はー前に聞いたからー口をー出さないようにーしていたのー。話を聞いてーどう思うかはー個人にー任せたほうがー良いからー」

「……実は結構私達のことを考えてくれているの?」

「後ー長い話はー嫌いー」

「……」

「……」


 この人だけは分からない。美亜達はそう思った。

 

 兎も角提案はまともだったので、桃子の進めにしたがって一息付く一同。だが、紅茶を飲みながらも思考の大半を占めるのは先程までの話だ。会話も少なく、各自が過去の事実に思いをはせる。


 かつてを想い帰す者、告げられた事実を飲み込もうとする者。そしてそれぞれが自分なりに話を消化した頃、再びスノウが口を開く。


「それじゃあ次に、私達がこっちに来てからの話をするわね。まったく違う場所に来てしまった私達は大人も含めて当然のように混乱したわ。それに戦闘中突然だったこともあって、一時は収拾がつかなくなるくらいに混乱したの」

「よく収められましたね。話を聞く限りでは、その混乱で全滅していてもおかしくなかったようですが」

「それは研究所側の代表と、襲撃側の代表が早い段階で手を組めたからなの。そうじゃなかったら、天真の言う通り私達は全滅してたと思うわ」

「こう言うのもなんだけど、殺し合いをしていた当事者同士がよく手を組むことが出来たわね?」

「それくらいの緊急事態だったっていうこと。あ、あと上のほうで混乱するだけの指揮官を下の有能な人たちが早めに切り捨てたからだって言う話も聞いたかな」

「そ、それは……」


 切り捨てるというのは文字通りの意味なのだろう。よくもそれだけ大胆な決断を下せたものだ。やはりスノウの言う通りそれほどの異常事態だったということか。


「それで両陣営がお互いに何人か代表者を出して、その人達を中心に協力し合って何とか混乱を収めたの。その後しばらくは生活基盤を築くのに奔走したわ」

「大変だったでしょう。特に食料や飲み水の確保などは苦労したのでは」

「うん。飲み水は近くに川があったから何とかなったんだけど、食料が問題だったかな」

「やはり狩猟で肉を確保したりしていたんですか?」

「そうよ。でもそれが問題で。もっとも、それは今もだけど」

「今も?」

「あれ? そういえば天真にはまだ詳しく話していなかったんだっけ?」

「何をですか?」


 美亜がうっかりしていたという風に声を上げた。その反応に疑問を感じ、狩猟の何が問題なのかを天真が尋ねる。

 

「あのね、この世界の野生動物って元の世界のものと比べるとかなり獰猛なの」

「それは何かの拍子に聞いたことがありますが。だからあまり街から出るなと言われていましたし」

「うん。だってこの世界の一般的な野生動物って、体長が平均2、3メートルくらいあるもの」

「……すいません、私の耳が遠くなったのでしょうか」

「いや間違ってないぜ。ちなみに食用のウサギに似た動物がいるんだが、そいつは成人のオスで平均3メートルくらいある」


 想像してみる。子供達には喜ばれそうだが実際にその質量が動き回るとなると、狩等では怪我人が続出するのではないだろうか。


「この世界の動物って基本的に大型で、しかも魔術に耐性があるから転化者でも下手に手を出せないの。小型のものでも普通の兵士が2、3人がかりでやっと仕留められるくらいで」

「しかもドラゴンとかグリフォンとか、2次元でしかお目に掛かれないようなものまでいるからな。実際火を噴くような奴なんてまだましな方なんだぜ?ひどいのになると魔術を使ってきたりするし」

「だからこの世界の軍隊とかの主な目的はそういう野生動物の襲撃時の対応なの。それに狩猟目的の部隊もいるのよ。実はそちらのほうが死傷率が高いくらいで」

「リアルにモ○スター○ンターですか。とんでもないですね」


 電気屋のデモ画像を思い出し、そこにこの世界の住人達を当てはめてみる。あまり違和感が無いのが怖かった。


「そういえば大気の魔力濃度が高いと、動植物は次第に魔力をエネルギー源にするタイプに進化していくという話を聞いたことがあるような」

「研究員の人達もそう言っていたわ。魔力をエネルギー源の一つにするから、体を大きくしても燃費のバランスが取れるんだって」

「まあ確かにそんなのがうろうろしている只中で、人間同士でいがみ合っていればあっという間に全滅しますよね。彼らにとっては人間なんて狩りやすい餌にしか見えないでしょうし」

「それもあの時期皆が団結できた理由の一つだと思うわ」


 いがみ合っている勢力を団結させるには、外部に共通の敵を作ればよい。遥かな昔から使われてきた手法だ。更に、敵が人間以外の何かで直接的に被害が出るとすればより効果的である。


「狩の時は命懸けだったけど、それでも何とか生活していけるようになって。あ、その頃かな? 魔術的な素養があまり無い人でもこの世界では簡単に魔術が扱えるって分かったのは」

「確かこの世界が魔力に満ちているからって言うのがその理由の半分なのよね。じゃあもう半分は?」

「もう一つの理由は私たちが今使っている言葉にあるの」

「え? 今使っている言葉って?」


 言われた事がさっぱり分からない、という様子で首をかしげる美亜。そんな彼女に、恐る恐るといった感じで天真が声をかける。


「あの、美亜さん。まさかとは思いますが、私たちが今喋っている言葉が日本語ではないと言うことには気付いていますよね?」

「え? 何言って」


 ここまで口にして、不意に自分の言葉に真剣に耳を傾ける美亜。しばらく“あ”とか“い”などと発音し、自分の声や口の形を確かめる。そして数秒の後、


「日本語じゃない!?」

「今気が付いたんですか!?」


 約1年そのことに気付いていなかったという事実に天真の方が驚く。


「そ、そういえば明らかに日本どころか英語圏出身じゃない人とも普通に言葉が通じていたから、変だなーとは思っていたけど」

「気付きましょうよ、その時点で」

「え? 天真は気が付いていたの?」

「一応。皆さんの口の形が今まで見たことの無い形でしたから。自分自身もその言葉を違和感無く使っていると分かったときにはさすがに驚きましたが」


 しかし、周りの全員が特に意識せずに普通にこの言葉を使っていたので、いつの間にか尋ねるタイミングを掴み損ねていたのだ。それに特に急ぎで聞く必要も無かったし、コロッセウムの一件の準備などもあり今の今まで放置したままだった。


「ハヌマーンも?」

「気付くことは気付いていたけど、便利だなーと思ってそのままだった」

「……まあ、そういうものよね」

「私達も最初は驚いたわ。こっちに来た人全員がなぜかこの言葉を使っていて、それで問題なくコミュニケーションが取れるんだから」

「便利と言えば便利ですよね。お互いの国の言葉を知らなくても意思疎通が図れるんですから」


 それまでまったく聞いたことの無い言葉だと言うのに、まるで生まれてからずっと使っていたかのように違和感無く使用できている。しかも、発言者の言葉の細い意味すらも手に取るように理解できる。改めて気付かされると、なんとも不思議なものだ。


「それで、この言葉は何なの?」

「研究員の人たちが言うには、これは世界の記憶(アカシックレコード)に使われている言語じゃないかって。そのものではなくて、その下位言語だろうって言っていたけど」

世界の記憶(アカシックレコード)?」


 聞いたことの無い言葉に首を傾げる美亜。


世界の記憶(アカシックレコード)っていうのは世界の創生から今この瞬間、果ては終焉までの全ての情報が収められる一種の情報貯蔵庫(データバンク)。もちろん物理的に存在するものではなくて、そういう記録があるという概念なんだけど……(以下専門的な言葉が延々と続く)」

「雪、あまり難解な話は余計にみんなを混乱させるだけだと思いますが。私もその辺りのことにはあまり詳しくありませんし」

「あ」


 ふと見ると頭を抱えている美亜と、どこか遠くに視線を向けているハヌマーンの姿が。


「えっと、つまりすごい言葉だからみんなが理解できるの」

「何だ、最初からそう言ってよ」

「俺様は最初から分かっていたけどな」

「……まあいいですけど」


 明らかに分かっていない顔で美亜とハヌマーンが頷く。それを呆れたような顔で眺める天真。


「それで、なぜ魔術が使えるかについてだけど、この言葉はすごい言葉だから人間だけじゃなくて世界そのものにもある程度の影響を及ぼすことが出来るの。もちろんそのためには、それなりのエネルギーが必要になるわけだけど」

「つまりは世界を構成する言語と魔力、この2つがそろっているから魔術などに関りの無い普通の人間が魔術を使えると」

「じゃあ何で私達はこの言葉を使えるの? こんな言葉私達は今まで習った事どころか聞いたことすら無いんだけど」


 この話を聞いた全員が抱くであろう当然の疑問を美亜が投げかける。


「その辺りは実はよく分かっていないの。私達は塔が関係しているんじゃないかって思っているわ」

「バベルの塔。確かに神話ではあの塔があった頃には人類が皆同じ言葉を使用していたとありますが、それは塔が建つ以前からの話で塔は関係なかったのでは?」

「あ、それは違うの。この件に関しては聖書の塔と今ここにある塔を分けて考えているから。それで、ここにある塔は私たちに何らかの干渉をしていて、それでこの言葉が使えるようになっているんじゃないかって。だから私達たちはこの言葉を世界統一言語(バベルワード)って呼んでいるわ。かつて神々によって失わされた言葉」


 何気なく使用していた言葉にそんな意味が込められていた事に改めて驚かされる。と、その時美亜があることに気付いた。


「え?ちょっと待って。“バベルワード”って」

「……確かこの世界に来る人達がプレイしていたMMORPGの名前でしたね」


 この世界に来る者の何割かはそのMMORPGのプレイヤーだった。話によるとそのゲームの世界観は、今居るこの世界とまったく同じらしい。人間達の間ではこの世界に召喚される原因の一つだと考えられているようだが、


「その話なら私達も聞いているわ。でもそのゲームが始まったのは私達がこちらに来てからのことだし、詳しいことは分かっていないの」

「え? 6王も知らないの?」

「まったく。始めてこの話を聞いた時は私も含めて皆すごく驚いたもの」

「……ならば今考えても仕方ありませんし、その話は一旦置いておきますか」

「うーん、そうだな。スノウちゃん達が分からないって言うんなら、後はその当事者に事情を聞く位しかないだろうし」


 そういうわけでバベルワードの話は一旦棚上げにされる事になった。まだまだ聞きたいことは沢山あるので、答えの出ない問題にあまり時間をかけたくないというのも理由だ。


「それで、誰でも魔術が使えるって話だったかしら。でも良かったんじゃない? 道具とかを使用しない強力な攻撃手段が手に入ったんだし。やっぱり外敵から身を守るのには必要だったでしょ?」

「ええ。魔術と言う攻撃手段も手に入れて、狩とかもずいぶん楽になったみたい。それで最初は上手くいっていたんだけど、しばらくして問題が起こったの」

「その辺は俺様も聞いたことがあるな。その辺りで最初の転化者が出てきたんだろ?」

「そう」


 いきなり姿形が変わる人間が出てくればそれは驚くだろう。しかも、強力な力を使うとなればなおさらだ。


「最初は実験体だった子供達に転化が起きたの。私も最初の転化者の一人よ。私の場合外見上の変化は色が変わっただけだったけれど、他の子の中には明らかに人間の姿をなくすような子も出てきて。それで、急いで原因を調べる事になったの」

「よく秩序を保てたわよね?」

「元々魔術とかそういう方面のお仕事をしていた人達しかいなかったから。でも、そうは言っても当時は皆とても殺気立っていたわ。一部の大人は気味悪がって殺せって言っていたし、それに対して私達の方からももう大人の言いなりになることはない。自分たちだけで生きていこうって言う意見が出てきて」

「まあ、元々が実験体ですからね。大人に不満を抱かないほうがおかしいですよ。私もその場にいればそう言っていたかもしれませんし」

「うん。私も少しその意見に賛成したくなったかな。やっぱり私達にひどいことをする大人から自由になりたかったし」


 その扱いがまだまともな方だったとはいえ、実験体は実験体。一部の大人からは人間として扱われていなかった。もちろん敏感な子供達はその雰囲気を察していたが、力も無い子供達にどうこうできるはずもない。だが、ある日突然どうにか出来るかもしれない力を手に入れた。そのせいで益々人間扱いされなくなったとしたら、後はただ暴力に訴えるのみであろう。かつて自分達がそうされた様に。


「でも、研究員のまとめ役の先生達が必死で私達を説得してくれたから。あれがなかったら私達はもっとひどいことになっていたと思う」

「……確かに、我々を人として扱ってくれる優しい人はいましたね。最も、研究に参加している時点でどうかと思いもしますが」

「そ、それはほらあの人達にも色々事情があったんだし。それにそのあと色々とお世話になったし」

「わかっていますよ雪。私はいまさら恨みも無いですし、雪達がもう恨んでいないと言うなら私も何も言いませんよ」

「うん。ありがとう天真」

「お礼を言われるようなことじゃあないと思いますが」

「それでも、ありがとう」


 微笑むスノウの顔を気恥ずかしさで直視出来ずに視線を外す天真。その頬は少し赤くなっている。


「はいはいご馳走さま。それで、転化の原因はわかったの?」


 その光景をじと目で睨む美亜。少し不機嫌な様子で声を出す。


「あ、うん。それで色々調べて、何とか原因についてはわかったわ」

「転化の原因って実はわかっていたのか。それでスノウちゃん、その原因は?」


 ハヌマーンが興味津々と言った表情で先を促す。天真と美亜もじっとスノウの言葉を待つ。


「さっきこの世界が元の世界よりも高い次元にあるって事は話したよね?」

「神様がどうこうっていう所でそんな事言ってたわね。それが?」

「詳しい説明は私も完全に理解していないから省くけど、次元が高いと情報そのものが質量を持つようになって物質との境界が徐々にあやふやになっていくらしいわ。そして元の世界の次元を1、天真が言っていた神界他の次元を2とすると、このシナルはその中間1.5にある」

「えーっと、つまりこの世界では元の世界よりも物質と情報の境界があいまいになっているって言うことかしら?」

「その通りよ。さらにそれは物理法則にすら影響を及ぼすの。そして子供たちは魔力と言う情報エネルギーを取り込みやすい体質だった。ただしそれは物理的な法則が一番強い世界でのことであって、その影響下から離れたことによりもっと効率的に魔力を扱えるようになるために体が自然と変化を起こす。その時、心に理想の自分があった場合にはそれが現実に反映されていった。例えば傷付かない体がほしい、獣のように早く走りたい、自由に空の飛べる翼がほしい、……」

「つまり情報と物質の境界が曖昧な世界、魔力に満ちた大気、そして魔力に高い親和性を示す成長途中の子供と言う条件が揃ったことによって心の願望という情報が肉体と言う物質に影響を与えて変化を起こしたと。それが転化」

「うん。研究者の人達もそう言ってたわ。もっとも、子供の方が転化を起こしやすいといっても大人が転化を起こさないというわけじゃないけど」


 つまりはこの世界独特の環境が引き起こした変化と言うわけだ。人の心の内にある願望がそのまま体に出てくると言うことか。そこまで聞いて美亜がハヌマーンのほうを向いて一言。


「……ハヌマーン、猿になりたかったの?」

「いや、俺様別に猿になりたかったわけじゃなくて。強くなりたいって願ったらこうなったというか」

「身体能力の強化を特に強く願うと獣人族に転化しやすいらしいわ。もっとも願望だけじゃなくて、本人の血筋や才能などによるところも大きいから。転化しない人ももちろんいるし、なってもどういう姿になるかははっきりとは分からないわ」

「まあ人の心なんて千差万別ですからね。その心が原因の一つだとすれば結果ももちろん千差万別でしょう」

「なるほど」


 これまで知らなかった事実の一つを教えられて深くうなずく美亜。天真やハヌマーンも納得と言った顔だ。


「転化の原因はわかりました。ただ、この場合原因が分かったからと言って諍いが消えるとは思えないのですが」

「それはもちろん。例え原因が分かったとしてもどうにか出来る問題じゃなかったもの。でも基本的に害がなくて、予防策も無いとしたら放って置くしかないでしょ?」

「それでうまく行ったの?」

「結局そのときはそのまま問題を放置するしかなかったわ。それに転化者は強力な力を使えるようになるから下手に手を出せないし、自分たちが生き延びるためにも心強い戦力になるからって」

「まあもっと直接的な脅威が外部にいたわけだから、戦力の増加はどっちかと言えば歓迎するべきことだよな」

「それで、また小康状態になってしばらくは問題なく生活していたんだけど」

「また問題が発生したんですか」


 どうも最初のころは困難ばかりだったようだ。最も新しい土地の開拓とはそういうものかもしれないが。この場合は新しい世界の開拓だからその苦労も数倍になるのだろうか。


「しばらくして、私たちと同じように元の世界からこっちにやって来る人達が出てきて。しかもだんだん数も増えていったの」

「そういえば、私達は何でこっちの世界に来ちゃったのかしら?」

「私たちがこの世界に来たことによって、元の世界との繋がりが出来てしまったの」

「一度道が出来てしまえば後はそれをなぞれば良いだけですからね。まあそれでもこの世界に来るには何かしらの条件があるように思われますが」

「それも私達がこの世界に来たときと同じよ」


 スノウの瞳に悲しい光が灯る。


「強い逃避の心。それがこの世界に来るための条件の一つなの。皆にも覚えがあるんじゃないかな?」


 その言葉を受けて顔を強張らせる美亜とハヌマーン。その姿を見てスノウが溜息をつく。


「ごめんなさい。古傷を抉るようなことを言ってしまって」

「……別に良いわ。どうせ昔のことだし」

「そうだな、どっちにしろ自分自身の問題だからスノウちゃんが気にすることじゃない」


 やはりあまり触れてほしくないことなのだろう。二人の言葉は少し硬かった。そんな二人を見ながら天真は考える。


(ならば、私はなぜこの世界に招かれたのだろうか?)


 あの時、別に元の世界で現状に対する不満などは抱いていなかった。ならば自分はこの世界に呼ばれる条件を満たしていないことになる。それともまだ他に知られていない条件があって自分はそれに適合したのだろうか。


(いや、違う)


 自分は言葉通り何者かに呼ばれたのだ。それは蒼天を手にしたときに聞こえてきた言葉からも分かること。その何者かは何かしらの用があってこの世界に自分を呼び寄せた。


(幼馴染達がこの世界で重要な地位に就いていることからしても、私が偶然こちらに来たとは思えない)


 ならば自分がこの世界で望まれていることは何なのか。少なくとも雪はその意思に関しては知らないようだ。ならば他の王達ならば知っているのだろうか?それとも自らの意思で人一人を次元を超えて呼び寄せることが出来るほどの実力の持ち主が他にいるのだろうか。


(どちらにしても、まずは他の5人の王達に会ってみますか)


 放って置いても向こうから招いた以上いつかは何かしらのアクションがあるはずだが、とりあえずここは自分から動いてみようと思う。打算を抜きにしても旧友達には会っておきたいし。


「……真、天真どうしたの?」

「え? ああ雪、何でもありませんよ。少し考え事をしていただけです」


 いつの間にか思考の海に深く沈みこんでいたようだ。気が付けば他の面々が不思議そうな顔でこちらを覗き込んでいた。


「ええと、それでこの世界に次第に現れる人たちが増えていったと言うところでしたか。その後はどうなったんですか?」

「人手が増えるって言うのは本来歓迎するべきことだったんだけど、でも何も知らない人たちがいきなりこんな所に放り込まれて混乱するなって言うほうが無理があるでしょ?」

「まあ想像は出来ます。それで?」

「また初期のころに逆戻り。でも結局人って追い込まれればしぶといんだと思う。なんとかそういう人達の受け入れ態勢を整えながら生活の場を広げていったの。この後は特に大きな問題も起きなかったからそれで一応何年か過ごすことが出来たわ」

「まあ途中参加の俺様が言うのもなんだけど、やっぱり身近に命の危険があれば、同じ境遇の人は団結できるものなんだよ。多少の不平不満があってもな」


 そういうハヌマーンはこの世界に来たばかりのころを思い出しているのか、やや暗い表情だった。かなり苦労したのだろう。


「でも、そういう不満は心に余裕ができると同時に膨らんでいくものだわ。だから生活が安定していくと同時にそういう押し殺していた不満が徐々に大きくなっていった。そしてそれは出口を求めてある日爆発したの」

「それってまさか」

「そう」


 美亜が恐る恐ると言う表情でスノウに尋ねる。それにスノウは暗い表情で肯定を返した。


「今から3年前、この世界で始めての人同士の戦争が起こった」


 Xデーが近づいてきましたので今回は更新のみです。説明長くてすみません。


 この件に片がついたら大規模な修正をかける予定です。


 もっとも、結果いかんによっては今後の私の身の振り方について考えなければいけませんが。

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