狩りを知れ2
ぐだぐだ続きます
アグアグと食べるグランツを見る限り、蛇的な生物は食べ物として問題なさそうだ。股の尾をはさんでいるのが気になるが。
俺が潰した頭から食べるグランツは確かに狼っぽい。
牙も鋭いらしく鱗をモノともせず噛み砕いている。ならなぜあんなに弱いのか。
手持ち無沙汰なのでグランツの腹をつつく。
「キャイン‼」
途端に転がる子犬にビビる俺。口から蛇的な奴を垂らして呆然と転がったままのグランツ。
『…え、』
「……いたい」
『あ、なんか、ごめん』
「何なの?」
顔が怖いぜ相棒。
「なんで、僕を、吹っ飛ばしたの?」
『あー出来心?』
「やめてくれる」
『うい』
グランツは冷え切った目でこちらをねめつけつつ再び咀嚼を始めた。
それにしてもさっきのはいい飛びっぷりだった。もう一回したいぐらいに。
やらねえよこっちみんな。
胡乱な目で見てくるのを適当にあしらいつつぼけっと観察したみると、なんとなくいい飛びっぷりの理由が分かった。
一噛みごとに揺らぐ体、大きさの割に安定感のない足。
ふらつく姿はまるっきり子犬だ。
かわいいなー、と頭を撫でると迷惑そうにするが拒否はしない。布越しなのが激しく残念だ。
『お、喰い終わったか』
「美味しかったよ」
『あそ、そりゃよかった』
しゃがみこんだ姿勢から立ち上がりまた獲物を探しさまようことにした。
今度からは食べる前に右手で殺す工程が追加されたのが少しめんどくさい、が面倒をみなくては。少なくともこいつが自分で獲物を狩れるようになるまで。
ま、それもまだまだだろな。背後で足を滑らせて鳴くグランツみるかぎり。
ともあれ、俺とは別にグランツ用の飯を捕まえるため、食べ物の匂いを追いつつ横穴を抜ける、ここには思った以上に生き物がいるらしく、蛇のようなやつやネズミのような奴までいた。
俺が知っているより少々、いやかなり凶悪な面構えのネズミを右手で首根っこを抑え持ち上げると生意気にも威嚇してきやがった。
『かわいくねー』
「当たり前だ、魔物が可愛くてどうする」
『…まもの、“魔物“ねえ……』
力を込めるとコキリと小気味のいい音がし、体をビクつかせ“魔物“は死んだ。ずいぶんとあっけなく死ぬんだな、魔物ってやつは。
布越しでは伝えわらないがきっとまだ温かいであろうソレをグランツに投げてやる。さっきの蛇の魔物よりは食べやすいのか勢いよく腹に収めていく。この調子だとまだ食うのか?
『グランツまだ食うか?』
「ん、あともう一匹はほしいな」
『りょーかい』もう一匹出てきたネズミの魔物をさっきと同じように殺しグランツに投げ渡す。いい喰いっぷりだ。
『さ、次は俺の飯を……ん?』
「どうした?」
見上げるグランツを無視して、勢いよく振り返ると岩陰からこちらを伺ったいたのか、何かが飛び上がり、すさまじい速さで逃げ去る影が見えた。活きのいいこった。
右手グランツを引っ掴み逃げ去った影の後を追う。めっちゃ暴れてるが知らん。あんまり暴れてると舌を噛むぞ。
岩肌と俺の骨剥き出しの足がこすれる音を聞きながら追いかける。今更ながら削れたらどうしようか。
後ろ姿は小さくヒト型だ。結構なスピードだがこちらには足の長さというものがある、一定の距離を保ちつつ追跡する。ふとグランツに目をやるとおとなしくぶら下がっていた、心持ぐったりした姿にかすかに憐れみを覚えるが無視することにした。後で謝ろう。
曲がりを砂埃を立てつつまがった影を追い曲がったその先には、何もいなかった。
『いない』
「…何が」
『餌』
続きます。