出会いの両者 2
主人公の口調はコロコロ変わります。そういう性格なんです。
俺の尾てい骨まであるぞこのでかい犬。どうみても小さな子犬の時期は過ぎてる。
『誰だお前』
「何を言ってるんだお前は。僕はグランツだ」
『……へぇ、嘘は良くないと思うが』
俺の知ってるグランツはそんなにでかくも無いし、そんなにしっかり喋れない。
「名の制約を交わしたんだ。でかくなるのは当たり前。お前の魔力を共有したんだから」
『聞いてないぞ、そんなこと』
「僕としては知らないことの方が驚きなんだけど」
名の制約って、なんだよ。俺の子犬ちゃん返せ。
しかも前より腹減ってんだけど。魔力の共有(?)したからか?じゃあ俺のご飯は魔力なのか!
今知った、道理で土が食べられない訳だ。
「それと、その垂れ流しの魔力どうにかしてよ。寒気がする」
『あ?垂れ流し?』
「ずっと魔力を周りに撒き散らしてる。押さえなよ」
押さえる、押さえる?自覚のないものをどうやって押さえるんだ。気合いか?
「出してどうするんだよ!」
『どうやってやるんだ』
「それも知らないの?!なんかこう、キュッとしてギュッみたいな」
そんな感覚的な…。キュッ?
「そう!そうやってギュッ、違う!垂れ流さないで!」
『めんどくさいな!』
「文句言わないでよ!」
文句言ってんのはお前だ!
言いたいことはあるが俺は魔力の垂れ流してるらしい。
あまり撒き散らすとか言われるとあれなので、グランツの言うキュッとしてギュッを練習する事にした。
時々下手くそ!と言われるがお前の教えかたが悪いと言いたい。
暫く練習してみた結果
「もう、いいよ…。そこまでしか押さえらんないなら…」
『何か、ごめんな。キュッまでは出来るんだが』
匙を投げられた。正直すまんかった。
『あ、そうだ、名の制約とはなんだ?』
「…ホント何も知らないんだね。“名の制約”って言うのはお互いに名を告げあうことによって出来る等位契約のこと」
等位契約は何種類かあり、“名の制約”は名前をつけることでお互いの魔力を重ねあわせる。力と能力を共有することが出来るが強さは片方の強い方に依存する。らしい。
しかし、お互いを傷つける事は出来なくなる。あとは、血を用いる“血の盟約”。
他にも、従属契約とか有るみたいだが、正直なところよくわからん。
だが、制約を結んだ俺はグランツを喰えない事は分かった。
俺が簡単に“名の制約”を結ぶなんてしたから喰われる覚悟までは決めた僕の決意が台無しだよ、と言われた。
最初に言えよ、別に喰うつもりはなかったけどさ。
『グランツは物知りだな。子犬なのに』
「子犬って呼ばないで。母さんは永い時を生きてきた戦大狼だから、色んな事を僕に教えてくれた。あとその手を近づけないでくれ、嫌な予感がする」
頭を撫でようとした手は大袈裟にのけ反られ避けられた。
触ると不味いとはわかっているが、目の前の柔らかそうな毛皮を触れないのは切ない。
俺の手は触れると喰う、喰うつもりがなくても。ならどうすればいいのか。布で覆うか?
『なあ、』
「何?」
『お前の巣に使われてる布もらっていいか?』
「別にいいけど…何に使うつもり」
『んー、手袋?』
グランツの背後の布山から手頃な布を引っ張り出し、手に巻き付けてみた。
『どうだ』
「どうだって、なにしてるの?」
『巻き付けた手なら触っても大丈夫だと思うか』
訝しげな顔をするが鼻先を近づける。念入りに堪忍しておもむろに頷いた。
「布を巻き付けてる方の手なら大丈夫」
『もう片方は』
「やめて」
布を巻き付けた手でグランツの頭を撫でる。感触は伝わってくるが物足りない。
布だと不便だな…。
「いつまで触ってんのさ」
『あー、物足りないな』
「………」
嫌がられた、残念。
まぁ、取り敢えず
『ご飯食べに行こうか。腹すいたんだ』
「何食べるの?」
『此処の生き物から。こそこそと美味しそうなのが隠れてるみたいだからね』
「僕もお腹すいた」
『……乳離れは?』
「とっくに済んでるよ!」
読んでいただいてありがとうございます!
まだ続きます。
細切れで進みますので、読みづらくてごめんなさい。