森の中にて
見切り発車ですね。どうなるんでしょう。
腹が減った。凄まじく減った。死ぬほど減った。
強烈な飢えを感じ俺は飛び起きた。何か食べねえと本気で死ぬかもしれん!
食べ物を求め周りを見渡し、ようやく自分のおかれた状況に気がついた。
ここどこだ。
暗い。あと硬い。所々ふかふか。視線を巡らせると明るい光が見えた。
身を起こしてみる。
取り敢えず光が差す方へ行くべきだろう。
立ち上がって見るとなかなかこの身体は大きい。視界が広い気がする。とは言っても薄ぼんやりとしか見えないけれども。
ひたすら歩いた光の先には森があった。
踏み出すと分かる見渡す限りの深い森。濃厚な土の匂い。
深く息を吸い込むと不思議とあれほど強烈だった飢えが少し収まった。ほんとに少しだけだけどな。
で、骨。見下ろした自分の身体は骨だった。
なぜだ!
どうしてこうなったのか、思い出そうにも記憶がすっぱりと消え去っている、元から無かった
のか。
肉も筋肉もない腕をくみ首をかしげる。
ちょっと意味が分からないですね。どうなってんだ。
………まあ、分からんもんは仕方ない。取り敢えず食えるもんを探そう。
飢えを満たす、話はそれからだ。
首を巡らせ何となく食べ物がありそうだと思う方向へ向かう。
湿気た苔と落ち葉を踏みしめると確かに足裏?に感触的なものは感じる。
しばらく歩いていると控えめに言ってもかわいらしいとは言えないキイキイとわめく声と複数の小さな人影が見えてきた。
何か動物のようなものを囲って小躍りしているようだ。
分けてくれるように頼んでみるか、と声をかけようとしてふと、思い出した。
俺、骨だ。二足歩行してる骨だ。しかもしゃべれるかも分からない。
声出せるかどうかだけでも確かめといた方がいいな。
すいませんー。こんにちわー。元気ですかー。
出ませんね、はい。考えて、腹へって、話せんとはこれいかに。
もう、いいや肩叩けば良いだろ。
背後から近づくと気配に気がついたらしい人達?は振り返った。
うん、声にみあうお顔だ。男か女か知らんが腰布一枚はいただけないぞ。
「ギイィイイィ?!」
「ギギャギャ!」
「ギィギギギギ!!」
威嚇されてる気がする。棍棒振り上げてるし。
………取り敢えず、すいませんでしたぁぁあ!!
叩かれたら死ぬ!だって俺骨だし!
ちらりと後ろを見ると追いかけてきてる。
木々を交わしつつ逃げるがまだ追いかけてくる。しつけえ!
このまま逃げ続けるか?
いや、話し合いは大事だ。話し合えば分かる。
棍棒さえどうにかすれば腕の長さ的に押さえることはできるはず!
この細腕にまともな力があればの話ですけどね!!
少し開けた所まで走り、後ろを向き迎撃体制をとる。
「ギギギ!」
「ギャギャギャ!!」
「せめて、俺の分かる、言葉を話していただけませんかねぇ!」
先頭をきって走ってきた人?の振り上げた棍棒を掴む、と
バキィッ
折れた。というより粉砕した。腐ってたのか!思わず胸を撫で下ろすと持ち主本体が襲い掛かってきた。
とっさに腕を振るった。
その瞬間何が起きたのか俺には理解できなかった。
ベキともベチャとも言いがたい聞くに耐えない音と共に人?は破裂した。
そして、砂のようなものになり消えた。
その後も同じことが起きた。俺が得物を掴むと壊れ、持ち主もまた、壊れ消えた。
あまりの事に少し呆然としてしまった。
俺の回りには壊れた得物と彼?彼女?の残した腰布しか残っていない。
しかし何より、人?を殺してしまったことに何の罪悪感も後ろめたさも感じない事に俺は驚いてきた。
人という確証が無かったからなのか?
いや、相手が何であろうと俺は何も感じないだろう。
そもそも俺は“人”が何であるかを知っているのか?記憶が無いのに?
では、俺は?何だ?
思考に浸る俺はまだ気づいていない。あの強烈な飢えが以前より満たされていることに。
一応まだ続きます。
評価、お気に入り登録本当にありがとうございます!