敵に探りを入れよう(夏視点)
「……もし、罠だとして、仕掛けたのは誰だと思う?」
「そうだねえ…。山崎センパイかなあ……?」
「可能性は高いな。長澤だったら、直接来るだろうし、伊集院の双子だったら、そう簡単にばれるようなことはしないだろ。」
京香が、日直だからと早めに立ち去った後、愛華とさっきの話について話し合う。
「……本当に罠だと思う~?」
「どうだろうな。」
「なんだか京香ちゃん、鈍いようで鋭いようで鈍いから。」
「……どっちだよ!?」
「う~ん……。『本気の好き』と『偽物の好き』を見分けるのは確実だと思うけどお、『友だちとか幼馴染みの好き』と、『恋愛の意味での好き』の区別はついてないよねえ。」
「だな。」
「こないだあ、『女の子の中で、京香ちゃんだけが特別な意味で好きなんだ。』って言われたときにい、『レンの女の幼馴染みは私だけですものね。』ってスルーしてたもん。」
「葛城に『俺の全てはお前のものだ。』って言われて、『じゃあ、これ手伝ってください!』って手伝わせて終わってた。」
「『誰の目にも入らないように閉じ込めときてえ。』って言った幸村センパイに、『……私、そんなに見るに堪えないでしょうか。』って言ってるのも聞いたよ~。」
「そのヤンデレ発言を勘違いでのりきる京香がすげえな。」
……なんだか心配になってきたな。
あんな、世間一般でいうと、極上の男を3人も惚れさせた京香だ。
さっき聞いた男も、本気で京香に一目惚れしたんじゃないのかという疑いが消えない。
もしそうなら、京香にばれないうちに排除しておきたいんだが……。
あの幼馴染みみたいに、一旦京香に執着してしまうと、ちょっとやそっとじゃ離れなくなってしまう。
これ以上、増やしたくはないな……。
あの3人とシスコン兄弟だけでも厄介なのに。
ましてや、本当に一目惚れだった場合、あいつらが、嫉妬のあまりどうでるか……。
予測もつかないところが怖い。
その男をどう追い払うか……。
別に追い払うのは望むところなんだが、犯罪に触れるようなことをして、京香にばれたりすると悲しむよな……。
……確か、次は体育だったな。
「次の時間、合同体育だし、伊集院姉妹に探りを入れてくる。」
「……じゃあ愛華はあ、山崎センパイや長澤センパイに喧嘩売っておくねえ♪」
「……ほどほどにな。」
自分が京香が好きすぎるのは自覚しているが、愛華も相当なもんだよな。
あの笑顔と可愛い声で言っているのに、ときどき背中がゾクゾクくる。
私に言っているわけでもないのにな。
伊集院姉は、幸村に惚れていて、妹のほうは葛城に惚れている。
この姉妹の厄介なところは、直接手をくださないところだ。
影に隠れてこそこそと、人を使ったり噂を流したり、陰湿なことをする。
そして、京香に友好的に接してくる。
自分の好きな人が、京香に手をだされるのを嫌うことをよーく知っているからな。
でも、あの馴れ馴れしいのと、誰も見ていないところでですちくりちくりと京香に嫌みを言ったり悪気のなさを装って嫌がらせをしてくるのが我慢ならない。
ほんと、とっとと潰したいな。
「よお、伊集院。」
「……どうしたの?」
「試合しないか?」
「……いいよっ!」
声をかけると、妹のほうが返事をしてきた。
しゃべり方は妹のほうがフレンドリーだが、妹のほうはなかなか隙を見せない。
攻めるとしたら、姉のほうだな。
「そういえば、伊集院姉は幸村と生徒会で一緒だよな?」
「そうですが。」
「じゃあ、今日も会うか?」
「多分会いますね。」
「頼みがあるんだけどさ、幸村に渡しておいてほしいものがあるんだ。」
「分かりました。」
「頼むな。幸村には私からもメール送っておくから。」
「…分かりました。」
……やっぱり動揺しているな。
恐らく『自分は知らない幸村の連絡先を私が知っている』ことに対して怒っているんだろう。
姉のほうは、ひどく脆い。
後で必ず妹に相談するだろう。
そのときの会話を聞き逃さないようにしないと。
「ねえ!つかさちゃん!あの女ムカつく!
「しょう!ここだと誰かに聞かれるかもしれないから後で!」
「こんなとこ誰もこないよ!」
残念。私がここにいる。
「全く……。藤原さんには、日向くんと付き合ってもらうと言ったでしょう!」
「でも……アキラにも手をだしてくるかも……。」
「我慢しなさい!今下手に何かしたら嫌われるだけよ!山崎さんや長澤さんが下手に手をだしたせいで、リュウさまもアキラくんも警戒しているんだから!じっと待って機会を伺うのよ!あの二人に巻き込まれたらどうするの!」
「わかった……我慢する……。」
へえ……やっぱり妹のほうはなかなか頭が切れるな。
だから最近何もしてこなかったのか……。
でも、こんな簡単にボロを出すなんてまたまだ甘いな。
だが、こいつらでないということは……やっぱり長澤かな?
愛華と情報交換して、京香を守らねえと。




