デートに出掛けましょう(リュウ視点)
ピンポーン。
「おはようございます。」
京香の声がしたので、急いで玄関のドアを開ける。
そして、京香の姿を見て、思わず息を止めてしまった。
普段、京香はスカートよりも、ズボンスタイルを好む。
スカートやワンピースを着ることもあるが、その下には必ずレギンスをはいている。
京香はどんなところも可愛らしいし、今着ている服も似合っている。
ただ……脚を出しすぎではないだろうか。
スラッと伸びた脚は、とても綺麗だ。
いつもははいていない、ヒールがそれを強調している。
俺の作ったアクセサリーをつけてくれているのは正直嬉しい。
まるで、京香は俺のものだというシルシみたいだ。
本音を言えば、あの白い首筋に、ほかのシルシをつけたいところだがな。
可愛い京香を連れてデートできることに、上機嫌になっていた俺だが、京香と仲良く手を繋ぐ『愛華さん』を見て、いらっときた。
そうか……邪魔者がいたんだった。
是非とも、こいつはレンの野郎とくっつけたい。
で、俺が京香とラブラブしたい。
レンも家にやって来て、出掛けることになった。
どうやら今日は、服やアクセを見に行き、評判のパスタを食べ、街をぶらぶらした後に、本命のチーズケーキを食べるらしい。
まあ、俺は、京香がいれば問題なかったので、異存はない。
まず、京香の気に入りの店から入った。
正直、この店より隣の店のがいいと思うんだが。
京香は、無難な感じの服が多い。
レンの野郎も『似合うよ、京香ちゃん』しか言いやがらねえ。
確かにあれも似合うが……
「京香、お前にはこっちだ。これ着てみろ。」
京香に合う服を選び、手渡す。
すかさず、さっきから俺やレンをチラチラ見ていた店員が話しかけに来る。
「その服う、とっても人気なんですよお?私も色ちがい着させて貰ってまあす♪妹さんにも似合うと思いますよお!」
……うぜえ。
喋りかけるな。
くっつくな。
第一、京香が俺の妹だあ?
どこに目えつけてやがる!!
苛立った俺は、店員だけでなく、俺たちを見、腹がたつことに、京香を睨んでやがる女どもを牽制することにした。
京香の顎を引き、自分を見させる。
「妹ねえ……。普通妹にこんなことしねえだろ?」
喋りながら、京香の頬に、唇を寄せる。
「「「きゃあーーーーっっ!!!」」」
店中から悲鳴があがる。
満足していると、
ちゅっ
逆の頬に、レンの野郎がキスをしやがった!
「京香ちゃんは、僕らの大切で特別な女の子ですから。」
……家へ帰ったら、じっくりレンと話す必要がありそうだな。
本音を言えば、その場で殴り飛ばしたかったが、京香の願いは『性悪女になること』だ。
俺らの影から、店員やほかの女どもを嘲笑い、
「リュウもレンもだめですよっ!ここはお店ですよっ?そんなに私のこと好きで、我慢できないんですか?」
「ああ、好きだぜ。」
「愛してます。」
頬を紅く染め、瞳を潤ませながら聞いてきた京香に、二人で即答する。
「ふふっ。」
満足そうに笑う京香。
「もう!京香ちゃんったらモテモテなんだからあ!ラブラブは家へ帰ってからにしてねえ?」
隣の試着室に入っていた『愛華さん』も出てくる。
「独り身には辛いんだからあ!」
「ごめんなさい、愛華さん。でも、リュウもレンも、付き合ってる訳ではないですよ?リュウとレンが、私のことだあいすきなだけで。」
……瞬間、妙な音がした。
視線を向けずに、試着室の鏡を通して確認すると……いた!
狙い通り、二人連れの女がいた。
レンのことを狙っている弓道部の部長と、この間京香を呼び出して頬をたたいた女。
さあ、狙い通りに炙り出してやろうか……。