ガトーショコラの行方(アキラ視点)
本音を言うなら、独り占めしたい。
俺の腕の中に閉じ込めたい。
誰にも見せたくない。
誰にも触らせたくない。
俺だけに話しかけ、俺だけを見つめ、俺だけに微笑みかけ、俺のことだけを考えて、俺だけのために生きて欲しい。
だが、それが無理なことも分かっている。
だから、閉じこめて、ほかの奴らと関わらせないで、二人っきりでずっと生きていきたい。
さらって、閉じこめてしまおうかと考えたことも、そろそろ両手の指では数えられなくなってきた。
だが、今それをしても、すぐにあいつらに取り返されて、二度と京香に近づけなくなるだろう。
京香にも逃げられるかもしれない。
準備が必要だ。
小説家になり、経済基盤は整ってきた。
仕事は、京香を養えて、京香を逃がさないように、ずっと共にいれるように、自宅でできるものならば何でもよかった。
思いの外、小説に人気が出たのは、有り難かった。
これで、京香にいろんなものを買ってやったり、着飾らせてやったり(俺の前だけで、ほかの奴らには見せないが)することができる。
もう仕事をしなくても、印税だけで暮らしていけそうだしな。
京香と二人っきりでずっと過ごす。これが実現すれば、どんなに素晴らしいだろうか……。
そんなことを考えながら歩いていると、変な女子につかまってしまった。
……迂闊だった。
京香のことを考えていると、注意力が散漫になってしまうな。気を引き締め治さないと。
「アキラセンパイ!あのっ……このクッキー、アキラセンパイのために作ったんです!よかったら食べてください!!」
……うぜえ。
「ありがとうございます。そのお気持ち、とても嬉しいです。」
……早く京香のところに行きてえのに。
「ただ、すみませんが、受けとることはできません。お気持ちだけいただいておきます。」
「えっ!あのっ……でも……一生懸命作ったんです!!それに、藤原さんのお菓子は受け取ってたじゃないですか!!」
……京香とてめえごときを一緒にするんじゃねえ。
「本当にすみません。」
うざいし、京香との約束があるので、少々強引に話を終わらせ、その場を立ち去る。
「アキラッ!」
京香が、俺の名前を呼びながら、こちらへ駆けてくる。
それだけで、先程までささくれだっていた気持ちが落ち着いてくる。
京香との会話を進めていくと、可愛らしい言葉や仕草で、更に俺を夢中にさせていく。
ただ、周囲が俺たちをいているのが気に食わない。
……見るな。京香のこんな姿を見られると、そのたび京香に夢中になる奴らが出てきて苛立つ。
勿論排除するが、ずっとそばにいれない以上、邪魔物はどんどん増えていく。
シスコン兄弟共や幼馴染みども、京香の親友たち。
あんな奴らはいらない。
俺の『特別』は京香だけだ。
京香の『特別』も俺だけにして欲しい。
京香が望むから、今は『性悪女になる』のに協力してやる。
俺にとっても、京香の可愛い姿が見られるし、京香と会える時間が増えるし、いいことが結構あるからな。
……でも、それが終わったら、協力した『お礼』を貰おうか?