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虎との過ごす日々は楽しいものだった。
知る人の居ない日々でも寂しさを感じさせない。
僕が居た城のあった町からは少しずつ離れるように移動している。
どこにとは知らない。
目的もまだない。
反応からしてちゃんとした名前を持っていそうなのだが、この虎さんは僕に通じていないのを悲しそうにする。
申し訳ないけど、名前がすでにあるなら付けるのはかわいそうで付けてない。
それでもやっぱり不便で虎さんと呼んでしまっている。
ちゃんと返事をしてくれている。
名前解るまで、ごめんね。
虎さんは狩りを教えてくれる。
弱らした所でやれと最初の頃は頭で押してきた。
最初は解体。
次に止め。
更に虎さんが索敵だけした所で倒せと。
どんどんする事を増やしていく。
最初の解体は血に咽た。
皮を剥いでピンクの色の肉が生々しい。
刃物も無いので虎さんがそこから引きちぎってくれた。
泣く泣く食べた日だった。
武器も無いのに大変だった。
石器時代の授業を思い出し、石を割って作った。
良い感じに割れた石は少しずつ石と石を擦り研いだ。
今はこの石のナイフは解体に使っている。
止めを最初にした時も抵抗があった。
足を折り、逃げれなくなった鳥を虎さんは持ってきた。
羽はまだばたついている。
かなり元気だった。
すぐには手を出せずに見つめていた。
覚悟が決まるまで見つめていた。
まだ石のナイフも切れ味の悪い時だった。
あの感触は忘れられない。
いや、命を戴くのに忘れては駄目なんだろうと思う。
薄い金属を拾った。
錆びているのかもしれないが、鉄みたいに茶色くない。
ぼろぼろでもなかった。
今は取っ手を付けて鍋代わりにしてる。
人の作ったものだろう他のものもあったがぼろぼろだった。
人の骨まではないみたいで安心した。
捨てられたのか、落としたのかしたのだろう。
こうしてこの世界に慣れていった。
昼の空の色は似ていた。
夜の空の色は似ていなかった。
そんな中で1人と1匹が過ごしていた。