表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
狼少女が好きすぎた魔力最強高校生が、魔物の世界で認められるまで頑張ります。【GREENTEAR】  作者: ほしのそうこ
本編一章 狼少女の嘘 【Forest dragon Source=Aira】
22/150

5話‐4 魔物の中の人間

「ティアーが戻ったぞ」

 ノックをする習慣はないのか、オルンが予告なく戸を開けて俺達に声をかける。

「ソース。ティアーが、食事の用意を終えるまでは小屋から出ないで欲しい、だとさ」

「は? なんでさ」

「さて。わけまでは聞いてないんでな」

 その時、外から壁を叩く音が響く。よく見ると、ドア向かいの壁は両開きの戸になっていたらしく、外から誰かが指を差し込んで開けようとしているのがわかった。

「オルン、いいから。敦」

 人ひとり分の隙間から姿を見せた豊が、俺を手招きする。


「何なんだよ。つーか、本当にいいのか?」

「俺の独断だけど、敦なら心配ないと思ってさ」


 俺は自分の手で、戸を開けることにした。木製の戸は思いのほか軽く、あっけなく開く。


 火起こしはとっくに済ませているらしく、そのたき火の前にティアーは正座していた――そんな姿を初めて見た時には、なんで屋外で正座なんだと不思議に思ってたけど、聞くところによると彼女の長年の癖なんだそうだ。


 ティアーは左手で兎の後ろ足をつかんでぶら下げながら、その首に爪を立て横に裂いた。目の前に置いた木で組んだバケツの底に血が当たり、大きな音を立てる。血生臭い強烈なにおいに、俺は思わず鼻を押さえる。

 作業をしながら、彼女の目はうつろで兎など視界に入っていないようだった。ぼんやりと考え事をしているような表情で、たき火に照らされた顔はまるで生気がないようにも見えた。


 そういえば、ヴァニッシュが肉やら魚やらさばいているのは何度か見たけれど、ティアーがそれをしているのは見たことがなかったっけ。その作業自体、俺も見慣れてしまったので今さらどう思うってことはないんだけど。しいていえば、ジャックさんのためにヴァニッシュが稼ぎから米を買っていたとかで森に住んでいても白いご飯にありつけたけど、今日からはそれもないんだろうなぁとふと思った。

「ティアー」

 豊が声をかけると、ティアーがこちらに気付く。


「ちょ……ユイノ!」

 とっさに声を上げるも、慌てたようにまた目を逸らす。兎は十分に血抜きをするまで手を放すわけにもいかないのだろう、所在なく前に突き出したまま。その様子がまた、ちょっぴり気まずい。

「別に敦は今さら何とも思わねーよ。そうだろ?」

「え? あ、ああ……もう何度も見てるし」

 正直に言うと、初めて現場を見た時はいい気分じゃなかったけど、エメラードに行くとなったらいちいち気にしてられないやと思い直したんだ。


「だって、同じような年頃の女の子が動物を殺してるの見たことなんてないでしょ? 敦は」

「そりゃあ、そうだけど」

「人間の男の子だったら、気持ち悪いって思うでしょ? 普通は」

 どう言ったものかと迷い、思いつく。

「ほら、普通の人間だったら今、こうしてティアー達と一緒にエメラードにいたりしないだろ?」


「あー……。そうかも」

 ティアーはしばし考え込み、そして思い出してくれたらしい。今になってそんなことを気にするようでは、エメラードに来た意味がないってことを。



5話終了。6話に続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ