#4
あれから会計を済ませ、現地で解散した。
「材料だけでも買っておくか……」
近場のスーパーでマドレーヌとカスタードプリンの材料と購入してから屋敷に戻る。
それらの材料は自室の冷蔵庫に保管する。
キッチンに入れてもよかったが、誰かに使われたりしたら嫌という理由で。
確か……マドレーヌ用の貝殻型とプリン型は屋敷のキッチンにいくつか置いてあるため、新たに購入する必要はない。
といっても焼菓子とかのお菓子作りセットは俺が使う機会が多いため、ある程度の場所は把握しているが、ごく稀に誰かが使って戻す位置が間違えていたりすることがある。
由佳からヒントを得たことによって、ホワイトデーのお返しものが決まったといってもいい。
「すぐに出すからラッピングは不要だな。カスタードプリンは久しぶりに作るから前々日あたりにでも作ってみるとしよう……」
すぐにお嬢様に食べてもらうのではなく、奥様に試食してもらうという手もある。
物は試しだ。
実際に作ってみよう。
◆◇◆
ホワイトデーの前々日にあたる三月十二日――
午後のティータイムの準備のため、自室に置いてある材料をキッチンに持ち込む。
他の執事や使用人の姿が見あたらないので、本日は運がいい。
使用する調理器具を洗浄し、久しぶりにカスタードプリンを作ってみる。
プリン型の内側にバターを薄く塗っておき、片手鍋に砂糖と水を入れ、揺するように砂糖を焦がす。
キャラメル色になったら、火を止め、手早く準備しておいた熱湯を注ぎ、ムラができないよう混ぜ、固まらないうちにプリン型に入れる。
カラメルソースの完成。
次にプリンの生地だ。
鍋に牛乳を人肌程度に温める。
ボウルに卵を入れ、泡立て器で卵白を解す程度に混ぜる。
そこに砂糖を加えてすり混ぜ、温めた牛乳とバニラエッセンスを加え、混ぜ合わせる。
その生地をこし器に通し、プリン型に流し入れる。
生地を作る段階でもう甘い香りがキッチンに漂っている。
「直くん、見つけた」
「奥様!?」
「甘い香りがしたものだから、覗きにきてしまいましたわ」
「いきなりこられたら、私も驚きますよ」
奥様、その香りに誘われてきたのか……
やはり由佳が話していた通り、女性はスイーツが好きなのだな。
「ホワイトデーに有紗に渡すお返しもの?」
「ええ。これからカスタードプリンの仕上げを……」
「私がくるタイミングがよかったわね」
俺は奥様がキッチンの作業台付近に立たせている前でカスタードプリンの仕上げに取りかかる。
本来は蒸し器を使うのが一般的だが、湯せんで蒸らす方法やオーブンで蒸し焼きする方法もある。
自分で作る時は少し待ち時間が長いがオーブンで蒸し焼きする方法を取るのがほとんどだ。
その方法はオーブンの天板に生地を入れたプリン型をのせ、お湯を注ぎ、オーブン内の温度が百四十度で三十分間蒸し焼きにするという手順だ。
その間にマドレーヌの準備をすることが可能だが、本日はカスタードプリンを作るだけ。
残った工程は後片づけをするだけなので、彼女には「大変申し訳ありません」と、作業台近くに隠させていた丸椅子に腰をかけてもらった。
2026/03/25 本投稿
※ Next 2026/03/25 22時頃予約更新にて更新予定。




