#2
【作者より】
今回は「女性の喫煙シーン」が含まれていますが、喫煙シーンを書くのははじめてでガバガバな知識で執筆させていただいています。
俺は由佳が予約してくれた店に行くため、駅まで自転車で向かっている。
何故、自転車なんだって?
言い出しっぺは俺なのに、連絡が入ったあとが大変だった。
電車の発車時刻を調べたり、洒落た服はないので、シンプルコーディネートに着替え、支度が済んだかと思ったら、財布を忘れてしまったりと予定していた電車の発車時刻に間に合わなくなってしまったから。
待ち合わせ場所の建物は最寄り駅の近くにあるため、すぐ到着する。
しかし、屋敷から駅までの距離は結構あるので、自転車で向かうことが多いのだ。
「なんとか……着いた……」
その建物は写真で見た時も思ったが、まるでお洒落な高級イタリアン料理店のような雰囲気。
彼女が予約するご飯屋さんはいつもお洒落なところが多い。
そういう時に限って「はて? マフィア幹部とは?」となってしまう自分がいるのだ。
由佳のコメントで「入口付近で待っている」と書いてあったので、周囲を見回してみる。
確か、この辺にいるはずなのだが……あっ、いたいた。
「由佳、待たせてすまなかった」
彼女は俺に気がつき、タタっと近づく。
可愛い……実に可愛すぎる!
淡いピンクのタートルネックに黒のロングスカート、ローファー風ヒールを履いているからだ。
「いいのよ。私も少し前に着いたところだから。中へ入りましょう」
「ああ」
自ら扉を開け、主……今回の場合は女性を先に通してしまう執事としての癖が出てしまい、元はお嬢様育ちの由佳も優雅にお辞儀している。
俺たちより先にきて食事をしている女性客に見られ、きゃあきゃあ騒がれるのは凄く恥ずかしいのだが――
彼女はカウンターにいる店員に「こんにちは。予約していた神永です」と店員に声をかけ、ホールに誘導された。
◆◇◆
食事が届くまでは雑談して過ごす。
実のところ、俺と由佳はほとんどすれ違いに等しいが、連絡を取ったり、月に数回デートを兼ねてご飯屋さんに行くようにしているのだ。
「ところで、電話で話していたお嬢様のことって何かしら?」
彼女は煙草に火をつけながら問いかける。
由佳は顔の左側にある傷跡を隠す髪型と黒ネイルは変わらないが、女性っぽいナチュラル風メイク。
流石に胸元の刺青もタートルネックで隠れている。
今の方が自然で可愛いのに、マフィア幹部に切り替わると目を合わせづらいくらいのヴィジュアル系のような化粧で刺青が入った胸元は目のやり場がなく、肌の色とシャツ意外は全身黒ずくめになるところが凄いギャップ……
おそらく彼女も俺のことをギャップがあると思っているのかもしれない。
そして、由佳は通常でもマフィア幹部であっても常に凛としているところに俺は惹かれたのだ。
……って、彼女との馴れ初め話をしている場合ではない。
今は俺が仕えているお嬢様とのすれ違い生活を打破すべく、彼女と同性である由佳に相談を持ちかけたのだ。
「女子は何をされたら嬉しいのか、何をもらったら嬉しいのかが分からない……」
「私だったら、さりげない優しさかしらね? 例えば、いざという時に守ってくれるとか……」
へぇー……由佳はそう思っているのか……
彼女は口から煙草の煙をふーっと出し、灰皿に細かな吸い殻を落とす。
「君にはその必要がなさそうに感じるのだが?」
「し、失礼ね! わ、私だって誰かに守られるか弱い女性になりたかったわ!」
「ごめん。少し余計だった」
裏社会の女性は強い印象がある。
特に母さんがその類いのため、由佳もそうかと思っていた。
彼女は中学時代から思っていたが、女性らしいところがある。
ちなみに、どうでもいいことだが、俺の目つきが悪いのは母さん譲りだ。
「今はその話ではないでしょう? 私が訊きたいのは直が仕えていたお嬢様の話!」
「バレンタインデーにお嬢様とメイドがチョコレートを作って屋敷の男性関係者に渡していた」
「うんうん」
由佳は煙草を吸ったり煙を出したりしているが、話にきちんと耳を傾けてくれている。
「俺も受け取ったのだが、本人の前でチョコレートをいくつか捨てた」
「はぁ!?」
彼女の苛立つタイミングを合わせるように灰皿に短くなった煙草の吸い殻をもみ消す。
やはり女性の立場に立って考えてみると怒るよな……もし、俺が女性だったらそう思う。
「それが原因で主従関係が崩れたかもしれない……」
そのようなことしてしまった自分がとてつもなく馬鹿だと思い、あれからずっと引きずっているのだ。
2026/03/25 本投稿
※ Next 2026/03/25 12時30分頃予約更新にて更新予定。




