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温泉戦隊バスバスター ☆ センターは草津グリーン  作者: nandemoE


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伝説の戦士バスバスター


 アマゾナイトノベルズ様より2026年1月6日配信開始!

 『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』


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 言葉少なめになったセオンたち三人は明かりを消して敷き藁の上に横になった。


 真っ暗になった部屋の中に、天井の隙間からわずかな月明かりが射している。


 まるでケンカをしたあとのように気まずい雰囲気が部屋中に充満していた。


「アカギ……俺は今も納得してないが、諦めた。……戦場に行っても、絶対に死ぬなよ」


 沈黙の重くなった室内にアルカの小さな声が響いた。


「あぁ。むしろ戦場で功を立て、登るところまで登り詰めてやるつもりだ」


 あえて気張ったような声で応じるアカギ。


「ははっ、そりゃあいい! アカギなら本当に成し遂げちまいそうだ」


 アルカもまた場を盛り上げるように陽気な声を発した。


 まるでこのあと三人の関係が変化していくのを予見しているかのように、最後だけは今までどおりを装った流れで締めくくろうとする異様な雰囲気を三人がそれぞれ共有しているかのようなぎこちなさが含まれる。


「なら、アカギの目指すところは空白の箱根レッドってところか?」


「箱根レッド?」


 セオンが間の抜けた声で尋ねた。


「なんだセオン、知らねーのか? 温泉戦隊バスバスター」


「さすがにそれは知ってるよ。大昔、文明が滅びる前にヘルズスパに立ち向かったっていう伝説の五人の戦士でしょ?」


「そうだ。結局は腑抜けきった時代の人間にゃ敵わなかったってことでヘルズスパには負けちまったそうだけどな……その不思議な力をもった五色の戦闘スーツだけは今もまだこの世界に残っているんだぜ?」


「知ってる。僕たちの故郷だったトツィギの村、ニツコゥもそのうちの一人、登別ブルーによって侵略されたんだ」


「もう十年も前のことか……あれは悪夢だった。村は焼き払われ、両親は殺され、俺たちはグンマー兵に捕まり……拉致された馬車の中でナトリがずっと泣いてたの、まだ覚えてるぜ」


「……僕たち、その馬車の中で初めて会ったんだよね」


「あぁ。子どもながらに絶望的な状況であることだけはハッキリしててよ。あの場にアカギがいなかったら発狂してただろうぜ」


「正直に言うとオレもあのときは限界だった。なにせオレもまだ八つの頃だったからな……だが、あの馬車の中ではオレが最年長だったからな。しっかりしないといけないという思いがあって、なんとか自分を奮い立たせたんだ」


「親も兄弟も失った俺たちには唯一の希望だった。今日からオレたちは新しい家族だって、あのときのアカギの言葉……思えばあのときから俺たちのリーダーはアカギだった」


「そういえばそうだったね……僕も当時の記憶はおぼろげだけど、そのときのことだけはハッキリと覚えているよ」


「ははっ! まさにアカギは天性のレッドって感じだな!」


 アルカは軽快に笑った。


「ん? それはどういうこと、アルカ?」


「なんだよセオン知らねーのか? 戦闘スーツはよ、たしかにすげぇ力を秘めているんだが誰でも装備できるものじゃねーんだぜ? なんかこう戦闘スーツの色によって適正みたいなもんがあるらしくてよ。その戦闘スーツに認められた人間以外には装備できねーんだ」


「そうだったんだ……そこまでは僕も知らなかったな」


「オレもすべて知っているわけじゃないが、アルカの言うとおり傾向はハッキリとしているらしい。例えば登別ブルーはクールな者が選ばれやすいし、下呂イエローは明るい者、とかな」


「そうそう。で、別府ピンクは優しくてべっぴんな女がいいとかも聞くよな。ただ、残る有馬ゴールドだけはちょっと謎めいた存在らしくてな……まだ情報が少ないんだ」


「へぇ~……それじゃあ温泉戦隊バスバスターの五色は、赤、青、黄、桃、金、なんだね」


「おう。そうだぜ!」


 アルカは得意げに声を張った。


「で、だ。いつの時代もなかなか適格者が現れないのが箱根レッドらしくてよ。戦闘スーツだけはグンマーが保有しているんだが、今も箱根レッドだけは空席なんだそうだ」


「へぇ~。じゃあ箱根レッドって、どんな人が選ばれるんだろう……?」


「そこだけはハッキリしてんだ。ひとことで言えば、まとめ役、リーダー的存在なんだよ」


「それじゃあアカギは適任じゃないか!」


 セオンは驚いたような声を上げた。


「よせよ二人とも。聞いてるだけで恥ずかしい」


 照れたようにアカギは言った。


「だが、そう言われてみると箱根レッドを目指してみるのも悪くないのかもしれんな」


「おっ! やる気になったのかアカギ!」


 アルカはひときわ明るい声を発した。


「あぁ。考えてみたんだ。もし本当に箱根レッドが戦隊のまとめ役なのだとしたら、ほかのメンバーにもオレの願いを聞いてもらえるかもしれないからな」


「「アカギの願い?」」


 セオンとアルカは首を傾げる。


「ああ。オレはこの世界をグンマーとトツィギが争わなくてもいい世界にしたいんだ」


 アカギの語った夢のスケールにセオンとアルカは言葉を失った。


「今の世はパワーバランスが乱れすぎている……なにせ、そんなすごい力を持ったバスバスターの戦闘スーツが五色ともグンマーにそろっているんだからな」


 すると部屋のなかにセオンとアルカのため息が響いた。


「アカギの言うとおり、箱根レッドが空席の状況でもトツィギはジリ貧だろうぜ」


「じゃあ、そんな状況でもし箱根レッドの適格者が現れてグンマー側についたら……」


 セオンはおそるおそる尋ねる。


「だから、もしもオレが箱根レッドになれるのなら、ほかのメンバーにも戦争などさせはしない……そんなふうに思ったんだ」


 力強くアカギは語る。


「オレは……ただ戦争の道具に成り下がったバスバスターを、再び人々を守るヒーローとして復活させたい」


「すげぇ。それはすげぇ夢だぜ……俺もアカギがその夢を叶えるところを見てみてぇ」


「僕も……やっぱりアカギはすごいや!」


「二人とも、応援していてくれよな」


 そんなふうに熱く夢を語らい盛り上がる三人ではあったが、それでもやはりその部屋の中は真っ暗な闇に覆われており、それぞれが胸に何か突っかかえる思いを抱えた顔をしながら、行き場のない思いを言葉にすることなく次第に眠りへと落ちていくのだった。




 深夜、寝静まった部屋に響いた物音に気づいてセオンが目を覚ますと、天井から射し込む月の光が揺らぐのが見えた。


「アカギ……?」


 どうやらアカギが窓から屋根のほうへ上がっていったらしい。それを見てセオンは首を傾げながら追って天井へと上がる。するとそこにはやはりアカギがいて、夜空を仰ぐように寝そべっていた。


「セオンか。すまない、起こしてしまったか」


「ううん。大丈夫……僕もちょっと眠りが浅かったみたいでさ」


 そう言ってセオンもアカギの隣に仰向けになる。


「心配をかけるな……単純なアルカとは違ってセオンは色々と察しているだろう」


「本当のことを言うと、ね」


「ははは……参ったな。夢やなんだと明るく誤魔化してみても、セオンには通用しないか」


「だって話も勢いだけで矛盾だらけだったよ? 戦果を上げて箱根レッドになるって? そもそも戦力的にグンマーのほうが圧倒的に強いんだからさ。戦果を上げすぎたら箱根レッドになって争いをなくす前にトツィギがやばいでしょ」


「そう言うな……アルカはちゃんと話に乗っかって笑ってくれただろう? これが最後になるかもしれないんだ、オレだってお前たちとケンカ別れみたいなことはしたくないんだよ」


 二人の間にはしばらくの沈黙があり、夜風が冷たく通り過ぎていった。


「わかったよ……僕もさっきみたいにアカギと嫌な雰囲気になるのも嫌だ。だからもう、このことについては……我慢する」


「……すまないな」


 セオンは残念そうに一つため息をついた。


「結局、どんな夢を語ったところでこの胸に奴隷紋が刻まれている限り僕たちは自由になんてなれはしないんだ。ヒーローにも、なれはしないんだ」


「セオンはまだオレが自分の意思で戦争へ行くことを信じていないのか?」


「当たり前だよ……生まれ故郷の人と戦うだなんて誰が望むもんか」


「そりゃあオレだって、そんなことを望んでるわけじゃない」


「だから! だからこれは誰かが望まないアカギに命令したことなんだ……僕のなかではそう決まってる。でも、僕には受け入れることしかできないから、我慢するとも決めた」


「わかった……今はそれでもいい」


「でも、僕はアカギが無事に帰ってきてくれることを祈ってる」


「ありがとう……必ず、無事に帰ってくるよ」


 苦笑いのような笑顔をセオンに向けて、アカギはまたすぐに夜空を仰いだ。



お読みいただきありがとうございます。


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2026年1月6日 アマゾナイトノベルズさま より電子書籍化です!


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