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温泉戦隊バスバスター ☆ センターは草津グリーン  作者: nandemoE


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戦い終わって


 アマゾナイトノベルズ様より2026年1月6日配信開始!

 『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』


 悪役令嬢が現代日本に逆転移!?

 戸籍も、頼りも、お金も、住処すらない絶望的な状況。

 しかも「人を一生愛せない呪い」まで掛けられていて……。


 男性にも女性にも読んでほしい作品です。

 ぜひぜひ応援よろしくお願いいたします!



 イオウとの戦いが終わり、騒がしくなったアシオ基地内の混乱を尻目に今度こそミストを連れて無事に脱出をはたしたセオンたちであったが、廃坑道を抜ける頃には身も心も疲れ果てた様相となっており、今にも倒れそうな足取りになっていた。


 月明かりが木々の間から薄く差し込む森の中、疲れ果てて消え入りそうな声でナトリは言う。


「あ、あのさ~……こんなときに言うのもなんだけど、アタシたちって、このまま宿屋に戻っても大丈夫なのかな~……?」


 そのひとことはセオンたちの頭を垂れさせるには十分だった。


 バスバスターの巨大ロボが二体も現れて周囲一帯が警戒態勢に入っているときに、そのアシオ基地の周辺にある宿屋に、あろうことかアシオ基地で奴隷だったミストを連れて泊まろうと言うのである。それはとても正常な判断と言えるものではなかった。


「どうしよう……僕たち、ユナミとは宿屋の前で待ち合わせをしてたんだったよね……」


「ウソだろおい……こんな状況じゃあ、人目の間を縫って宿屋付近まで帰れたもんじゃねーぞ……?」


「ボ、ボクたち、どうなっちゃうです……?」


 全員が重いため息をついたときだった。


「大丈夫ですわ。私ならここにおりますから」


 木々が遮る森の奥の闇の中から、弾むように明るい声を発しながらユナミが姿を現した。


「ユナミ! よかった! 無事だったんだね!」


「ええ、おかげさまで。あのあと基地内が大混乱となりましたので、私のほうは用意してあった別の脱出ルートから逃げることができましたの」


 そう言ってユナミは柔らかく微笑む。


「みなさま、まずはお礼を言わせてください。私に代わってミストさんを救出していただき、誠にありがとうございました」


 背筋をまっすぐに伸ばした状態から深々と頭を下げてユナミは言う。


「お礼なんていいんだよユナミ。どのみち僕たちだって見過ごせなかったんだから……」


「それでも、それでも私はみなさんに感謝の気持ちでいっぱいなのです」


「へへっ。感謝されるのは悪くねーけど、ユナミがいてこその結果だぜ?」


「そーだよそーだよ! うちの男子たち、とにかく突っ走るってタイプだから、ユナミさんがいてくれなかったらどうなっていたことか……」


 ナトリがセオンとアルカを横目で見たことで、一同は軽く笑い合った。


「ま、お互いに無事だったからよかったものの、俺たちは俺たちで本当に大変だったんだぜ~……? なんたってバスバスターが二人、しかも巨大ロボを引っ提げて現れたんだからなぁ……」


「ええ、存じております。ゲロゲリヲンを駆る下呂イエローと、アリマグナスを操る有馬ゴールド……巻き込まれるかと考えるだけでも恐ろしい戦いでありましたわ……みなさん、よくぞご無事で」


「これを無事というか、アタシたちみんな酷い目にあって、もうボロボロなんだけどね~……」


「ナトリさんも、本当にお疲れさまでした……実は私のほうも待ち合わせ場所に早く着いたのですが、基地内の混乱が伝わってか、集落のほうも騒がしくなってきたものですから、もしやみなさんと合流できなくなるのではと思い、ここまでやってきたところだったのです」


「助かったよユナミ……僕たち、どうやって人目を避けて待ち合わせ場所まで行こうかと困ってたんだ」


「ま、合流したところで集落が騒がしくなってるんじゃあ今夜はゆっくり休めそうもないんだけどな」


 アルカが両手を上げてお手上げのポーズをするも、ユナミは軽く微笑んで応える。


「それならば心配ありませんわ。こんなこともあろうかと、隠れ家を一つ、用意しておりますから」


「うわっ! それ本当!? ユナミさん!」


 ナトリはパッと華やいだ顔でユナミの手を握った。


「ええ、本当ですわ。これも私の依頼主がもしものときのためにと、この近くに手配してくれていたものなのですが……」


「えらく準備がいいんだな……アシオ基地の内情も知ってそうだし、いったい何者なんだ? その依頼主って」


「アルカ。前にも言ったけど、ユナミにだって僕たちには話せない事情があるでしょ?」


「そうそう。あんまりしつこい男は嫌われちゃうぞ~?」


 セオンとナトリの言うことを聞いてアルカは一歩引く。


「わ、悪かったよ……すまんユナミ、この件はもう聞かねー……」


 そうして大人しく頭を下げたアルカを見て、やはりユナミは柔らかく微笑んだ。


「アルカさん、どうかお気になさらず……それよりも、こんなところで立ち話もなんですから、そろそろ隠れ家のほうに移動しませんか? 私が案内をしますので、みなさんついてきてくださいね」


 そうして一行はユナミ案内のもと、隠れ家に向かうことになった。




 その隠れ家の外観は森に面した斜面にひっそりと建つ古い山家だった。板壁は風雨に晒されて色あせているが、屋根瓦は修繕されており、時折使われている気配がある。周囲には畑の跡が残り、夜は人目につきにくい場所にひっそりとたたずんでいた。


「けっこういい雰囲気の隠れ家だねぇ」


「よくこんな隠れ家を用意できたもんだぜ」


「アタシ早くゆっくり休みた~い」


「ボ、ボクもこんな立派なところに泊まっていいですか……?」


「ええ、もちろんですわミストさん。みなさんもご遠慮なさらずに、ゆっくりとくつろいでくださいね」


 ユナミは一同に微笑みながら早々に扉を開放し、皆を室内に招き入れた。


「この人数ですと少々狭いかもしれませんが、どうぞ」


 内装は木の温もりが残る素朴な造りだった。囲炉裏は煤けているがまだ火が入り、粗末ながらも寝具や棚が整えられている。窓から差す月明かりが床板を淡く照らし、逃亡の疲れを抱えた彼らを静かに迎え入れてくれていた。


 すぐに照明が灯って明らかとなった室内を見てセオンたちは嬉しそうに驚く。


「すごいや! 内装も家具も、僕たちが元いた小屋よりも全然いいよ!」


「おいおいセオン。それじゃあハル姉がなんにも気をつかってくれなかったみたいに聞こえるだろ?」


「そんなことより、アタシ早くお風呂に入りた~い!」


 みんながそれぞれ勝手に反応を示すなか、ユナミはゆっくりと奥の扉のほうへ向かっていった。


「ふふ……ではまず先にお湯を張りますわね。実はこの建物の持ち主はとても温泉が好きな方でして、ここのお風呂も広くてちょっとしたものなんですよ」


「そ、そんな立派なお風呂にボクも入っていいのです……?」


「もちろんですわミストさん」


「うわぁ~! それじゃあユナミさん! ミストちゃん! アタシたち一緒に入ろうよ! お背中流しっこしよ~!」


「ふふ。それは楽しそうですわね」


「それならボク、一生懸命お二人のお背中を流すです!」


 女性陣は和気あいあいと賑やかに笑い合いながら、さっそく休息とばかりにくつろいでいく。


「セオン、俺たちもゆっくり休もうぜ?」


「そうだね! 僕、何か食べるものでも用意しておくよ」


 セオンとアルカもほっこりと頬を緩ませながらその輪のなかに入っていく。


 そうして戦いを終えたその夜は、終始にぎやかに、互いの親睦を深めつつ、実に和やかな雰囲気のなかでみんなが笑って過ごしたのであった。




 翌朝、朝靄に包まれた森の中、隠れ家の前に柔らかな陽光が差し込み始めていた。露に濡れた草葉が白く輝き、静かな風が木立を揺らしている。


 小さな荷を背負ったミストはユナミの傍らに立ち、振り返ってセオンたちに微笑みを残す。


 ミストはまだやせ細ってはいるものの、自由の身となった喜びに小さく笑みを浮かべていた。


「さあ。ともに行きましょう、ミストさん」


「は、はいです……! よろしくお願いしますです、ユナミお姉さん」


 ユナミの差し出した手を握りしめ、ゆっくりと歩み出すミストの瞳には久しく失われていた光が戻りつつあるように見えた。


 ユナミもまた優雅にセオンたちへ一礼し、二人の姿はやがて森の道に溶けていった。


「二人とも、行っちゃったね……」


「結局ミストもユナミの人柄を信用してついていくことになったな……元気でいてほしいぜ」


「アタシ、二人とはもっと仲良くなりたかったな~」


「きっとまたどこかで会えるよ、ナトリ」


「ああ、俺もそんな気がするぜ」


「うん。そうだね! アタシたちもアタシたちで、前に進まなきゃだもんね!」


 見送るセオンたちの胸には別れの寂しさとともに、新たな旅路へ向かう決意が静かに芽生えていた。


「さぁ! 僕たちもそろそろ行こう! 目指すウミノツヤはまだまだ先だよ!」


「「おー!」」


 三人は元気よく拳を突き上げ、アシオ基地をあとにして旅路を進み始めた。


 そしてそのアシオ基地周辺の集落が遠く離れてきたときのことだった。


「おーい、ちょっと待ってくれ兄ちゃんたち!」


 そんな声が聞こえて三人が振り返ってみると、集落のほうから手を振り駆け足で近寄ってくる男が一人。見れば昨日、ミストに鞭を打っていた監視官であった。


 反射的に身構える三人の前に辿り着いた男は肩で息をしながら少し気まずげな笑顔を見せて言う。


「よかったぜ。昨夜は大惨事だったが、兄ちゃんたちも無事だったのか」


 基地内に潜入しミストを救出したことが露見し咎められやしないかと身構えていたセオンたちは三人で目配せをしたが、やがてその心配はなさそうだと警戒を解いた。


「ええ……昨夜はバスバスターが二人も現れたそうで……お互いに大変でしたね」


 セオンが苦笑いを浮かべながら言うと、その様子を見て監視官は何かを察したように、少し気まずそうに頬を人差し指でかいた。


「そうだな……こっちは一人、どさくさに紛れて奴隷がいなくなっちまったけどな……ほれ、昨日兄ちゃんたちの前で俺が鞭を打っていた、あの女の子だよ」


「……そう、だったんですね」


「かわいそうな奴でよ……俺がああでもしねぇと、ほかの奴らがもっと強く殴ったり蹴ったりするもんだからよ……あんな幼い女の子に最低なやり方だと思ってはいたが、下っ端の俺にゃあ、ああして医療棟に突っ込んでやることくらいしかできなくてよ……情けないぜ」


 監視官は申し訳なさげに目を瞑り、悔しげに口にしていた。


「何も知らねぇで基地から離れてやしねぇかと探してたところだったんだが、そこでちょうど兄ちゃんたちの姿を見つけてな……そういや、いつもは奴隷収容棟にいるミストが昨夜たまたま医療棟にいるなんて知ってる奴はそういねぇと思って、念のため声を掛けさせてもらったんだ……」


 監視官の心配そうな顔を見てセオンたちはまた顔を見合わせた。彼はなんとなく真実に気づいているような気がしていたのだ。


「あの子なら、きっと大丈夫だと思いますよ」


 セオンは監視官に少しだけ微笑みかけながら言った。


「そうか……」


 監視官は少しだけ心が軽くなったとばかりに胸に手を当てて安堵のため息をついた。


「そうだ。兄ちゃんたちはこれからも旅を続けるんだろう?」


「ええ、そのつもりですが……」


 何を言われるのかとセオンは少し心配そうに言う。


「だったら、一つ頼みごとを聞いてはくれないか?」


「はぁ……僕たちにできるようなことなら……」


「本当か!」


 セオンが不思議がりながらも返答すると、監視官は一瞬顔を綻ばせたのち、嬉しそうに小さな皮袋を一つ取り出してセオンたちの前に差し出した。


「実はこれ……わずかながらミストの私物なんだけどよ……。ほれ、昨夜は医療棟から姿を消してしまったせいで、自分の大切なモンも部屋に置いて行っちまったからよ……」


 セオンたちはハッとした表情で顔を見合わせた。昨夜、基地から脱出しようとしていたときはそのことばかりを考えていてミストの私物にまで気を配る余裕がなかったのだ。


 そしてそんな三人の反応をやはりと少し頬を緩めながら見て、監視官はその皮袋をさらに強く差し出した。


「兄ちゃんたち、旅を続けるんだろ? もしよかったら旅先でミストに会えたときにでも渡してやってくれねーか?」


「ミストの大事な物かもしれないのに、僕たちが預かってもいいんですか?」


「こんなもん、ここから離れる気がない俺が持ってても仕方ねーからよ……」


 監視官は目をそらして頬をかく。


「そういうことなら……僕たちが預かっていきますね」


「おう! 頼んだぜ!」


 セオンが皮袋を受け取ると、監視官は嬉しそうに拳を胸の前で握った。


「それから……頼みごとの礼と言っちゃなんだが、これもやるよ」


 監視官はさらに丸めて閉じられた羊皮紙を取り出した。


「これは……?」


 セオンは差し出された羊皮紙を不思議そうに受け取りながら問う。


「トツィギの地図さ……ちょっと開いてみろよ」


 監視官に促されて地図を開いたセオンたちは目を見開いた。


「すごい! これなら僕たちでも道に迷わず進めるよ!」


「それだけじゃねぇ! 強い魔物の生息地がまとめられてるぜ……こりゃあ素直に真っ直ぐ進もうとしてたら案外ヤバかったかもな……」


「途中で休憩できそうな場所や、食べ物飲み物が確保できそうなポイントまで! おじさん、これをアタシたちのために!?」


「あ、ああ……同じトツィギ民だろ……? 実は昨日、兄ちゃんたちの辛い境遇を聞いてさ……なんか旅の助けにならねぇかと思って、俺なりに知ってることを書き加えておいたんだ」


 監視官は照れくさそうに頬をかいていた。


「「ありがとうございます!」」


 セオンたちからとびきりの感謝を向けられて、逆に監視官は困ったように視線をそらす。


「役に立ちそうでよかった……なんか、ミストに酷ぇこととしてたことに対する罪滅ぼしっつーか、偽善っぽく思えるところもあって、自分でも戸惑うところなんだけどよ……」


「そんなことないですよ。僕たちにとってはすっごくありがたいものです!」


「そうか……よかった。これで俺も少しは悪い夢を見なくて済むかもな……」


 そう言って監視官は少しはにかみながら踵を返した。


「それじゃあな! 兄ちゃんたち、元気に旅を続けろよ!」


 そしてもと来た道を駆け足で帰っていきながら、監視官は何度か振り返って手を振っていた。


 そんな監視官の姿を見送りつつ、踵を返して再び旅路に着いたセオンたちは少し笑う。


「なんか僕、さっきの人のこと、ちょっと誤解してたかも……」


「俺はなんとも言えねーな……心配げにしてたけど、ミストに鞭を打ってたのは事実だぜ?」


「難しいよね……トツィギにも悪い人ばっかりじゃないっていうのはわかったけど……世のなか、本当に白黒つかないことばっかりなんだもん……」


 そんなふうにまた少し苦い経験を積んだとばかりに嫌げな顔をしながら、セオンたちは受け取った地図とミストの荷物を大事にしまい、また元気よく前に足を踏み出していくのだった。



 お読みいただきありがとうございます。


 拙作『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』

 2026年1月6日 アマゾナイトノベルズさま より電子書籍化!


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 男性にも女性にも読んでほしい作品です。


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 配信日:2026年1月6日
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