金泉騎士アリマグナス VS ゲロゲリヲン
アマゾナイトノベルズ様より2026年2月3日配信開始!
本日です!
『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』第2巻!
悪役令嬢が現代日本に逆転移!?
戸籍も、頼りも、お金も、住処すらない絶望的な状況。
しかも「人を一生愛せない呪い」まで掛けられていて……。
男性にも女性にも読んでほしい作品です。
ぜひぜひ応援よろしくお願いいたします!
空を貫く一筋の光線――黄金のビームが閃き、ゲロゲリヲンの砲撃を止めた。
そしてその一瞬の間に戦場を通り抜けた一陣の風が吹き去ると、空中へと投げ飛ばされたはずのミストの身体はもうどこにも見当たらなかった。
「くっ……! テんメェ……なにしにきやがった……」
それまで余裕の笑みで高らかに笑っていたイオウの表情が怒りに歪んでいた。
「見間違いやしねェぞ……そのキザったらしい金ピカの風貌に、陽剣ソル・ルクス、月盾ルナ・グラディア……そんなもんを持った奴は一人っきゃいねェ……」
セオンたちがイオウの視線を追うように振り返ると、そこに立っていたのは巨躯の騎士。
黄金の鎧は月光を浴びて星空のように瞬き、その表面には精緻な紋様が浮かび上がる。右手には太陽のように輝く『ソル・ルクス』、左手には月のように煌く『ルナ・グラディア』を構え、重厚でありながら洗練された戦士の構えを取っていた。
「金泉騎士アリマグナス! テメェ! 有馬ゴールドだなっ!?」
「「えっ!?」」
それを聞いて戦慄するセオンたち。
「ってことは、あの巨大ロボもグンマー側、つまり、僕たちの敵ってことだよね……?」
「は、はは……絶望だぜ……ゲロゲリヲンだけでもお手上げだってのに、バスバスターがもう一人、しかも新たな巨大ロボまで引っ提げてきちまった……」
アルカは蒼白となった顔で地に膝を落とした。
「でも待って! こんなのおかしいよ! アタシたちの敵だって言うなら、なんでアリマグナスはゲロゲリヲンを攻撃したの? 本当はアタシたちの味方なんじゃないの!?」
「どうかな……? それだけじゃ、まだ僕たちの味方って決まったわけじゃないよ……」
緊張の面持ちで戦況を見定めようとしているセオンたちを尻目に、地に降り立ったアリマグナスはゆっくりと地に膝を下ろし、その手のひらの上に乗せたミストを再び大地に戻す。
「ミストちゃん!」
ナトリは何が起きたのかもわからないとばかりに茫然自失となっているミストに駆け寄り、力強くその身体を抱きしめた。
「怖かったよね……ごめんね、ごめんね……」
「ナ、ナトリお姉ちゃん……ボ、ボク……わ、わああぁぁっ!」
次第に追いついてきた実感によって泣き出したミストをさらに強く抱きしめながら、ナトリはミストの後頭部を優しく撫でていた。
「チィィ……! どういうつもりか知らねェけど、いきなり現れたと思ったらオレっちのゲロゲリヲンを不意打ちってのはどういう料簡なんだい有馬ゴールドさんよォ……? まさかグンマーを裏切るってわけじゃねェんだろうなァ!」
そう言いつつもイオウはゲロゲリヲンをアリマグナスに差し向ける。
ゲロゲリヲンは砲台こそ先ほどのアリマグナスの攻撃によって破損しているものの、その長い舌状ケーブルをしならせてムチ打てば、その空気を裂く音と衝撃は間近で見上げていたセオンたちの動きを縛り上げたも同然のようだった。
一方、アリマグナスのほうもゲロゲリヲンの攻撃に対して一歩も引かなかった。丸い盾で伸びる舌状ケーブルを巧みに弾き、返す剣先から放たれる黄金の光刃によってゲロゲリヲンの装甲を切り裂いていく。
「う、うわあぁぁ! こ、こんなところで巨大ロボ同士の戦いになっちゃった!」
「や、やべぇぞセオン! ここは巻き込まれる前に逃げるんだ!」
セオンとアルカは急いで離れた場所にいるナトリとミストに合流しようとするが、その行く手には下呂イエローとなったイオウが立ち塞がった。
「ちょっと待ってよキミたちィ……。キミたちの相手はオレっちだぜィ?」
「ふ、ふざけんな! こんな状況で戦えるわけねーだろ!」
「おいおいアルカ君さァ……戦場でもそんな呑気なことを言ってるつもりかい?」
「く、くそ……アルカ、残念だけどここはやるしかないよ! ババンバ・バンバン!」
覚悟を決めた表情でセオンも草津グリーンへと変身し、その専用武器セントスピアをアルカへと手渡す。
「ちっくしょう……頭上では巨大ロボ同士の戦い、目の前にはとんでもなく強いバスバスター……なんて状況だ」
アルカは顔をしかめながらも受け取ったセントスピアを構えた。
「へぇぇ……覚悟を決めたってのかい。でも大丈夫かい? オレっちは前回のように油断してないんだぜィ? そのうえ今回は二対一だ。まともに戦いたければもうちょっとキミたちにハンデが必要なんじゃないかなァ?」
舌を出して笑うイオウ。
「僕たちだって以前より強くなっているんだ! 負けるもんか!」
「おうよ! そんでもって今度こそ、この俺がその戦闘スーツを貰ってやんよ!」
だがもはやセオンもアルカも戦う覚悟を決めたとばかりに少しも怯まなかった。
「ハハッ! 好きに言ってろよ……すぐに後悔させてやるからよォ……!」
互いに強く睨み合いながら、セオン、アルカ対イオウの戦いが始まった。
闇夜の岩壁に数十合目にも及ぶ轟音が響いた。
「やああああっ!」
草津グリーンとなったセオンが疾風のごとく踏み込み、鋭い拳と蹴りを連続して放つ。
「ハハッ! イイネ、イイネェ! キミたち、本当に強くなってんじゃん!」
イオウは笑みを浮かべながら大槌ゲロガンハンマーを片手で振り抜き、その衝撃波だけで大地を震わせた。
「ナトリちゃんがいないのに、こないだよりまともな戦いになってるって! ヒャハハ!」
「その笑い、すぐに俺が止めてやるぜぇっ!」
アルカがセントスピアを構えて突撃する。連続して突き出される槍の穂先が月光を反射して流星群のようにイオウの胸を狙うが、黄色い戦闘スーツと鍛え抜かれた肉体から生み出される人間離れした動きによってかわされる。
「んじゃ次はオレっちのターンね」
それどころか二人の連続攻撃の合間を縫って大槌がうねりを上げながら迫り、二人は咄嗟に左右へ飛んでそれをかわした。岩肌を砕く一撃が炸裂し、破片が火花のように飛び散る。
だがセオンたちは頬を裂くように飛び散る破片にも怯むことなく、上手く体勢を維持して間髪置かずに反撃へと転じる。
「へェ! その身のこなし、やるじゃん! オレっち、マジで楽しくなってきたァ!」
「そう言っていられるのも」
「今のうちだけだああっ!」
セオンは拳に原始力をまとわせて渾身のストレートを叩き込み、アルカはそこからの逃げ道を塞ぐように先回りした位置取りから強烈な追撃を狙う。
「ヒャーハッハァ! オレっちにこれを使わせるのかよォ!」
だがイオウは追い詰められても豪快に笑い、全身を捻って大槌を振り回し、二人の連携を力任せに押し返しにきた。
「超絶回転! ゲロロロ・ブレイクゥーッ!」
「ヤバいアルカ! あの技がくるっ!」
「わかってる! セオンもここは引けっ!」
二人はすぐさま後方に飛び退くことによって大槌の回転は空振りに終わるが、それでもなおイオウは口の端を吊り上げてニヤリと笑った。
「ヒャッハーッ! それでかわしたつもりかよォ! 忘れたのかい? オレっちのゲロガンハンマーは雷を司る雷槌さァ!」
次の瞬間、振り回されるゲロガンハンマーから飛び退くセオンたちを追いかけるように放射線状に稲妻が放たれた。その電撃は闇夜を斬り裂き、周囲を一瞬昼間に戻したような明るさを放ちながらも逃れようもない速度でセオンたち二人の身体を同時に貫いていた。
「うわあああっ!」
「ぐああああっ!」
全身を駆け抜ける稲妻の痛みによってセオンたちは空中で仰け反るように叫びながら、それぞれ反対方向に飛び退いた勢いのまま地面に崩れ、転がった。
そんな二人を傲岸に見下ろしながら、余裕にもゲロガンハンマーの石突を地に打ちつけるようにして攻めの手を休めるイオウ。
「フゥ~……! ちょっち休憩、休憩っとォ……」
「くっ! つ、強い……!」
「こいつ、冗談抜きに戦うとこんなに強い奴だったのかよ……」
「そうだよ~ん? オレっち、最強だからさァ……? ん~? どうしよっかなァ……せっかくだし、キミたちだけじゃなく、裏切り者の有馬ゴールドもここで一緒にブッ潰しちまおうかなァ……?」
イオウはわざとよそ見を見せつけるように、頭上で繰り広げられているアリマグナス対ゲロゲリヲンに視線を投げた。
「僕たちなんか目じゃないって言いたいのか……!」
「やろう……俺たちだってまだまだこれからだぜ!」
セオンとアルカは歯を食いしばって立ち上がり、再び戦闘の構えを取る。イオウはゆっくりとそんな二人に視線を戻しながら軽く笑った。
「そうだった、そうだった。オレっち、前回はこうやって油断してたから見事にやられちゃったんだっけ……危ない危ない。こればっかりはオレっち最大の弱点だからなァ……」
そう言って表情を引き締めながら構えるイオウ。
夜空の下、黄色と緑の閃光が交錯し、岩壁を舞台に火花と衝撃が次々と走る。
戦いはまるで山そのものを揺るがすかのように苛烈を極めていた。
「しっかし、まいったなァ……完全に有利な状況だと思ってたのに、とんだ乱入者のおかげで見事にひっくり返っちゃったよォ……有馬ゴールドの奴、どういうつもりなんだろうねェ」
「ハッ! お前の卑怯なやり方が気に入らなかっただけじゃねーのかよ!」
「あ~……言われてみれば、たしかにその線はありえそうだなァ」
「そんな仲間内にも敵をつくるようなやり方、直したほうがいいよっ!」
「ご説教、あざ~っす」
三人は言葉と拳を交わしながら激しい戦いを続けていた。
「ん~……キミたち二人との戦いも楽しくなってきたところなんだけどさァ。よく考えてみたら、この状況、オレっちにとってよくない状況なんだよねェ……いや、正直言うとキミたち二人くらいなら別にどおってことはないよ? でも、問題はやっぱ有馬ゴールドなんだよなァ」
そう言いながらチラリと上空に目を向けるイオウ。
「テメェ! またよそ見しやがったな!」
「あいつ、元々謎が多い奴だったんだけどさァ……オレっちが特に気に入らねェのは奴のカラーなんだよねェ」
セオンたちの攻撃を華麗にいなしながらイオウはひとりごとのように話し始める。
「あいつの金色ってさ、なんかちょっとオレっちの黄色に似てない? ってゆーか、むしろもしかしたら、オレっちの黄色より派手で目立ってるカラーじゃね?」
「そんなの僕たちの知ったことじゃないよ!」
「でもオレっちにとっては存在価値にも関わってくるだろ? なんで奴の劣化みたいな色をしてなきゃならねェわけ?」
「なら、大人しくその戦闘スーツを俺に渡せよっ!」
「なぁんかさァ。そんなふうに考え出すと、変なことを考えちゃうんだよなァ……ほら、元々バスバスターって五人の戦士だって言われてたわけだろ? 赤、青、黄、桃、金……もうちょっとキレイに色をバラせばよかったとか思わない?」
「何が言いたいんだキミはっ!」
「ん~……オレっちも子どもの頃からずっとバスバスターは五人だって聞かされてきたから、それが当たり前なんだって思ってたところもあるんだけどさァ……ここにきてセオン君の草津グリーンを見ちゃったからなんだろうねェ。ひとつ、考えちゃうことがあるんだよなァ……」
「テメェ! そのまま自分の舌を噛んでやられちまえっ!」
「アッハハ! たしかにオレっちのゲロゲリヲンは舌が長いし噛みそうだよねェ! アルカ君も戦闘中に面白いことを言う余裕が出てきたんだねェ……?」
「いい加減、真面目にやれぇー!」
怒りのまま振るったセオンのストレートをしっかりとガードしながらも後方へと吹き飛ぶ形で二人から大きく距離を取ったイオウ。そんな彼にはもう戦いは十分だとばかりに飽きたような表情が浮かんでいた。
彼の視線の先にはやはり上空で行われている巨大ロボ同士の戦いがある。
「くっそう……やっぱ直接オレっちが搭乗してないゲロゲリヲンと奴のアリマグナスじゃあ、奴のほうが少しばかり有利だったってことかよ……」
その規模の違う戦いを見上げながらイオウは悔しそうに顔をしかめた。
アリマグナスは攻防の間合いを的確に保ちつつ、まるで戦場を支配するかのような落ち着きと威圧感を漂わせながら、力強く無駄のない動きによってゲロゲリヲンの攻撃を完封し、さらにはその巨躯をアシオ基地から追い出すように押し込んでいた。
そしてその巨影二つはそのまま徐々にアシオ基地から遠ざかっていったのだった。
「あ~くそっ! わぁ~った、わぁ~った! ここは引く! 引きますってば!」
その場に残されたイオウはそう言って、地面の石ころを蹴飛ばすように悔しげに呟いてから変身を解いた。
その理由のわからなさにセオンとアルカは少し呆然としながらも、戦意の消え去ったイオウの様子から徐々に警戒の色を緩めていった。
そしてそんなセオンたちに人差し指を向け、イオウは負け惜しみのように言う。
「いいかいキミたち! 勘違いしてはいけないよ? キミたちは決して実力でオレっちに勝ったわけじゃないんだ。クソみたいな乱入者がたまたまキミたちの味方のような動きをしただけ! そこんとこ理解しておくよーに!」
「だけどよぉ……あの金色の巨大ロボ、ミストも助けてくれたし、明らかにお前のやりすぎた態度を見かねて割り込んできてただろ……? だったら、お前が最初から正々堂々と戦おうとしてりゃあ、お前としては思いどおりの結果になったんじゃねーの?」
「グサァ! そこ、そこなんだよなァ……!」
アルカの言葉にふざけているのか本気なのか少なくとも凹んだ様子を見せるイオウ。
「これは卑怯な手を使うと必ず罰が下るっていう教訓なんだろうねェ……やっぱヒーローたる者、正々堂々と戦うのが一番なんだなァ……」
「それ、キミが言っちゃうの……?」
セオンは呆然とこぼすばかりだった。
「ま、いいや。キミたちと戦う機会はなにもこれが最後ってわけじゃないしねェ……今回はこのくらいで許してあげる。ミストちゃんにも、殺そうとしてごめんねって言っておいてね?」
「ふざけんなテメェ! ぶっ飛ばすぞ!」
「ヒャーハハハハ! ごめんごめん! まぁたすぐに会いに来るからさ、許してよォ」
「もう二度と来ないでくれると僕も助かるんだけど?」
「そういうわけにはいかないよォ……次こそは、ちゃあんと有馬ゴールドとも仲直りして、二人で仲良く攻めてきちゃうかもねん?」
「どーだか! 仲違いしたまま潰し合ってほしいくらいだぜ!」
「……ま、その可能性もあるんだけど、ね!」
イオウはケラケラと笑いながら言った。
「じゃあ、ま! 今回のオレっちはこの辺でオサラバするからさ! キミたちはここの基地の連中がこぞって集まってくる前に逃げたほうがいいかもね! ……ってことで、じゃあねェ~! よい子のみんな、まったねぇ~!」
そしてそんなふうに陽気に笑いながらイオウは大きく跳躍して岩壁を飛び越え、夜の闇の中に溶け込むように消えていったのだった。
お読みいただきありがとうございます。
『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』第2巻!
2026年2月3日 アマゾナイトノベルズさま より電子書籍化! 本日です!
悪役令嬢が現代日本に逆転移!?
戸籍も、頼りも、お金も、住処すらない絶望的な状況。
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男性にも女性にも読んでほしい作品です。
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