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温泉戦隊バスバスター ☆ センターは草津グリーン  作者: nandemoE


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ミスト救出


 アマゾナイトノベルズ様より2026年1月6日配信開始!

 『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』


 悪役令嬢が現代日本に逆転移!?

 戸籍も、頼りも、お金も、住処すらない絶望的な状況。

 しかも「人を一生愛せない呪い」まで掛けられていて……。


 男性にも女性にも読んでほしい作品です。

 ぜひぜひ応援よろしくお願いいたします!



 セオンたちが窓の外から室内を覗き込むとミストは薄い毛布にくるまれて横たわっていた。


 薄暗い室内に簡素なベッドが一つ。木製の棚には水差しと薬草が並び、外からの月光が小さな窓から細く差し込んでいる。それがミストの横顔に差し、肌を青白く映し出していた。


 セオンはまず、小さく窓をノックしてミストに呼びかけた。


 外からの音にミストは少し身を震わせたあと、毛布に包まったまま、おそるおそる首だけをセオンたちのいる窓のほうへと向けた。


「あ、あなたたちは、昼間の……」


 セオンたちの姿に気づいたミストは安堵のため息をついてから身体を起こし、オドオドした動きでゆっくりと窓ぎわに近づいてきた。そして一度辺りを見渡したあと、音を立てぬようにそっと窓を開ける。


「ど、どうしたですか……? お兄さんたち、軍の人たちだったですか……?」


 常に何かに怯えるように小声で話すミスト。


「僕たちは君を助けに来たんだ」


「ボ、ボクを……?」


「そうだよ? アタシたち、正義の味方なんだ」


 セオンとナトリはそんなミストを安心させるように笑顔を向けた。


「とりあえずここだと人目につくかもしれねーから、病室に入れてくれよ」


 そしてアルカはミストの意向も聞かぬうちから窓辺に手をかけてサッと病室の中へと入ってしまっていた。


「えっ!? わっ!?」


 ミストはそんなアルカに驚きつつも何もできずに戸惑っているだけだった。


「もうアルカってば強引だなぁ」


「だけどセオン。たしかにここでこのまま話をしていたらアタシたちも見つかっちゃうかも」


「そうだね。だったら……」


 セオンとナトリも頷きあって一気に病室の中まで飛び込んでいた。


「あ、あうぅ……お、お兄さんたち、いったい誰なんですか……?」


 さらに深く怯えて縮こまるミストに三人は明るく微笑みかけた。


「言ったでしょ? 僕たち、君を助けに来たんだ」


「で、でもボク、奴隷だからここから離れることはできないのです……」


「安心しろって。俺たち、ここに来る前にちゃんとその首輪の機能も停止させてっから」


「機能を停止ですか……あ、あれ……? 首輪の光がいつもと違う……?」


 部屋にあった鏡を見てミストは驚いた顔をした。


「驚いた? でも、今ならその首輪も自由に外せちゃうんだよ? だから、すぐにそんなの外しちゃおうね~?」


 ナトリはそう言いつつ、ミストの反応を待たずに奴隷の首輪を彼女から取り除いていた。


「あ、あ……ボ、ボクの首輪……」


 それを取り戻そうと、力のない両手をナトリに伸ばすミスト。


「おいおい……そんな首輪、もうお前には必要ないだろ……?」


「でもボク、その首輪をしてないと、ここでは生きていけないです……」


 三人は首輪にすがるように手を伸ばすミストを憐憫に見た。


「ミスト、よく聞いて? 僕たちは君を助けにきたんだ……だから君をこのままこんなところに置いていくわけないじゃないか」


「そうだぜ? 俺たちがちゃんとここから連れ出してやるからよ」


「ミストちゃんはここで無理して奴隷でいる意味なんかないんだからね」


 三人の笑みを見ながらもミストはさらに視線を落とす。


「でもボク、ここから出られたって、一人で生きてなんかいけないから……」


「大丈夫。僕たちの仲間に君の親族から依頼を受けてきたっていう人がいるんだ。その人が必ず君を安全なところまで連れて行ってくれるからさ」


「ボ、ボクの親族……?」


 そこでミストは泣きそうな顔をした。


「そ、そんな人、知らないよ……だって、ボクのお父さんも、お母さんも、もう……」


 セオンたち三人は憐憫な顔を合わせた。


「ミストの気持ちはわかるぜ……? なんせ俺たちも戦争で家族を亡くしているからな……だけどよ、そんなふうにいつまでも塞ぎ込んでいたって何も変わらないだろ?」


「いや、ちょっと待ってアルカ……その前に、僕にはミストがほかの親族を知らないって言っているほうが気になるんだけど……」


「二人とも、今はそんなことどうでもいいでしょ? 今は一刻も早くミストちゃんと安全なところに逃げないと!」


 ナトリの指摘に二人は思い出したように頷いた。


「そうだった……色々と考えることはあるけど、今、僕たちが最優先にすべきことはここから脱出することだったよね」


「おうよ! それでもし何か問題があるようなら、それも俺たちが解決してやんぜ!」


 セオンとアルカが気合いを入れたところで、ナトリはミストの前にかがんで彼女と視線を合わせた。


「ね? ミストちゃん。ここはひとつ、アタシたちについてきてくれないかな? ひとまず安全なところに着いたら、アタシたちの仲間と合流してゆっくり話をしてみようよ」


「は、話……?」


「うん、そうだよ? もしそれでミストちゃんが信用できなそうなら、アタシたちも一緒にほかのいい方法を考える」


「いい、方法……?」


 ミストは怯えたようにナトリを見て反芻していた。


「そうだ! アタシたち、今、トツィギの首都ウミノツヤを目指しているんだけど、よかったらミストちゃんも一緒にこない?」


「ボ、ボクも一緒に……?」


「うん、そうだよ? もちろん信頼できる家族がいるならミストちゃんにとってそれが一番いいのかもしれないけど、もしもアタシたちの仲間とお話してみてミストちゃんが不安なままだったら、そのときにはほかの方法もあるよねってことだよ」


「う、うん……」


「ここにいても何も変わらないよ? でも、勇気を出して一歩踏み出してみればミストちゃんにはきっとたくさんの選択肢があると思うんだ……だからお願い。今はアタシたちを信じて、一緒にここから逃げてくれないかな?」


 ミストは真剣なナトリの瞳を真っ直ぐに見つめていたが、やがて、その表情に潜む怯えを払拭するように強く口元を結んだ。


「うん……! ボク、わかったです!」


「ホントっ!? ありがと~! ミストちゃん!」


 ミストの力強い返事を聞いて、ナトリは嬉しそうな顔をして彼女を抱きしめた。


「ボ、ボクのほうこそ……助けに来てくれて、ありがとうです」


 ミストはナトリに抱きしめられながら少し照れたようにはにかんでいた。


 そしてナトリはミストの肩を離してからまた優しく微笑む。


「そういえば、まだアタシたち自己紹介もしていなかったね。アタシはナトリ!」


「僕はセオン。よろしくね」


「俺はアルカ。昼間に話したかもしんねーけど、俺たちも最近までグンマーで奴隷だったんだぜ? 元奴隷同士、よろしくな!」


「う、うん……ナトリお姉ちゃんに、セオンお兄ちゃん、アルカお兄ちゃん……よ、よろしくです……」


 ミストは少し紅潮した頬を見せながら、恥ずかしそうに視線を落としたのだった。


「よっしゃ! ミスト救出、上手くいったぜ! こうなりゃこんなところ、早いところ逃げようぜ?」


 アルカが明るく切り出した。


「うん、そうだね。みんな、このまま突っ走っても大丈夫?」


「もちろんアタシはオッケー! ミストちゃんは?」


「ボ、ボクも大丈夫です……」


「よぉし! そうと決まれば敵の目を欺くためにも基地の反対側にドカーンと一発……」


「アルカはすぐ調子に乗らないの!」


 ナトリに窘められるアルカを不思議そうに見ながら、やがて表情を緩めるように笑みを見せたミストを伴って、セオンたちは再び窓から医療棟を抜け出し、そのまま静かに進入時に通ってきた廃坑道を目指して駆けだしたのだった。




 元来た廃坑道を目指す道中、セオンたちは周囲の建物と比べてひときわ粗末な造りの建物の近くを通ることになった。


 基地の一角、兵舎や倉庫から離れた場所に低く重苦しい建物が並んでいた。外壁は粗末な石と泥で固められ、所々に打ち込まれた鉄板が錆びついて赤茶色に染まっている。窓らしい窓はなく、壁面の高い位置に小さな格子付きの換気口が数か所開いているだけだ。入口には二重の木扉があり、分厚い鉄の閂が脇に備えられているものの扉自体に掛かっているわけではない。周囲の地面は踏み固められ、柵で囲われた細い通路の先に監視小屋が一つ。


 だがしかし、厳重そうに見える雰囲気とは異なり、監視小屋には見張りの姿すらない。


 建物からは人の声はほとんど漏れず、かすかに湿った藁と汗の混じった匂いが漂ってくる。その重苦しい空気は外から見ているだけで胸を締めつけられるようだった。


 そんな建物を一目見て、ミストはふと走る足を止めた。


「どうしたの? ミストちゃん」


 立ち止まったミストを心配するようにナトリも立ち止まって振り返った。


「もしかして、あの建物って……」


「ボクがいつもいるところ……です。ほかの奴隷の人も、あそこに……」


「そう……」


 ナトリは憐憫にミストを見て言った。


「あのねミストちゃん。アタシたち、ミストちゃんを助けるためにみんなの首輪も停止したんだよ……? だから、たぶんあの建物の中の人たちも、本当は自分たちが望めばここから逃げられるってこと、わかっているんじゃないかなぁ……?」


 だがしかし、建物の内部はシンと静まり返り、騒ぎが起きているような様子はなかった。


 ナトリの言葉を聞いてミストは力なく首を振る。


「わかってるです……さっきまでのボクも、同じだったです……ここの人たちは逃げようとも思っていないのです……鍵がかかっていなくても……見張りの人がいなくても……」


「ミストちゃん……」


 ナトリは悲しそうな顔でミストのもとへ近寄り、その手を握った。するとミストはその辛い思いを振り切るように視線を建物からそらし、ナトリを見上げて笑顔を作った。


「ナトリお姉ちゃん……ボクたちは、行くです!」


「……うんっ!」


 ナトリはミストを励ますように大きく明るく頷いて、再び駆け始めた。



 お読みいただきありがとうございます。


 拙作『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』

 2026年1月6日 アマゾナイトノベルズさま より電子書籍化!


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