潜入! アシオ基地(2)
アマゾナイトノベルズ様より2026年1月6日配信開始!
『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』
悪役令嬢が現代日本に逆転移!?
戸籍も、頼りも、お金も、住処すらない絶望的な状況。
しかも「人を一生愛せない呪い」まで掛けられていて……。
男性にも女性にも読んでほしい作品です。
ぜひぜひ応援よろしくお願いいたします!
「どうやらここが管理室のようですね……」
「どうするセオン? 管理室っていうくらいだから、この中には少なくとも誰かがいるだろうぜ」
「そうなると、どうしたって戦闘は避けて通れないよね。やっぱり……」
「パパっとやっつけないと援軍を呼ばれちゃったりして収拾がつかなくなっちゃうよ?」
その扉の前でセオンたちは突入のための心構えを整えていた。
「ごめんね、アタシの原創術で守衛さんと同じように眠らせられたらいいんだけど……扉を開けて、相手がどれだけいるのかわからないと、成功するかどうかもわからなくて……」
「いいんだぜナトリ。ここは確実に攻めるところだ。中に何人いようが、腹くくるっきゃねー! 相手が混乱しているうちに一気に畳み掛けるぜ!」
「でもアルカ。相手だって本来なら僕たちの同胞、トツィギ兵なんだ。なるべく傷つけないように倒さないと」
「あぁ、わかってる……それじゃあみんな、準備はいいな?」
四人は互いに頷きあって、一気に管理室の扉を押し開けると、問答無用で内部に飛び掛かった。
管理室の中は狭く、壁一面に古びたモニターと通信装置がぎっしり並んでいた。低く唸る機械音と、時折走るノイズ混じりの無線音が空気を震わせ、紙の地図や書類が無造作に机へ積まれていた。中央の操作卓には分厚いレバーやスイッチが並び、その上に配置された管制ランプが赤や緑に瞬き、部屋全体を不規則に照らしている。
「ふぅ……相手が武装してないうえに大混乱してくれて助かったぜ……」
結果的に管理室には数人のトツィギ兵が控えていたが、敵襲を想定していなかったところになだれ込んできたセオンたちになす術なく制圧され、現在は全員まとめて縄で括られたうえ、ナトリの原創術によって仲良く眠りに就くこととなっていた。
「運が良かったのかなぁ……僕もまさかここまでスムーズに事が運ぶとは思わなかったよ」
「そうですわね……ある意味この管理棟が一番の難所だと考えていましたから、ここまでまったく気づかれずに来れたのは大きいですわ……みなさんのおかげですね、本当にありがとうございます」
ユナミは三人に丁寧に頭を下げた。
「ユナミ。それよりも早く電波の書き換えってやつを済ませちゃおうよ」
「そうだなセオン……って言っても、そもそも電波の書き換えって、いったいどうやるんだ?」
「ご心配にはおよびませんわアルカさん。実は私、依頼主からその方法を伝授されてここへ来ておりますので」
「へぇ! そうだったのか、そりゃあいいぜ! ……って、あれ? ということはその依頼主って、わりとトツィギ軍の内情に詳しい奴ってことになるよな?」
「こらアルカ! あんまり深く詮索しちゃダメでしょ? ごめんねユナミさん、うちのアルカったらデリカシーってものがなくて……」
アルカの代わりにナトリが明るく謝る。
「ふふ……大丈夫ですわナトリさん。今のは完全に私の失言でした……みなさんと一緒にいますと、どうしてか私も心が緩んでしまうようですわ……」
「こんなところまで一緒に来たんだ。会ったばかりだけど、僕らはもう立派な仲間だもんね!」
「セオンさん……そう仰っていただけて、私、とても嬉しいですわ」
ユナミは柔らかく微笑む。
「では早速ですが、私はこれから遠隔信号の発信に向けて集中します。少しだけ時間がかかりますので、みなさんはその間、周囲の警戒をしていただいてもよろしいでしょうか?」
「わかった」
セオンの返事を待って、ユナミはパネルの操作を始めた。
「あのさ……ユナミが操作をしている間に、僕、ちょっとみんなに聞いておきたいことがあるんだけど……」
そんななか、セオンがアルカとナトリに言い出した。
「なんだセオン? 改まって……」
「もしかして、さっきのこと気にしてるんじゃ……」
「うん……実は、そうなんだ……」
セオンが少し視線を落としたのを見て、アルカとナトリは心配そうに顔を合わせた。
「二人は、幼い頃の記憶って、ある?」
「それって、俺たちがまだトツィギで暮らしてた頃ってことだよな?」
セオンは無言で頷く。
「そんなに心配しなくてもいいんじゃない? アタシだってよく覚えてるわけじゃないし」
セオンは力なく首を振る。
「でも、生まれはサラクシで父親の仕事でニツコゥまで来ていたって覚えていたじゃないか」
「で、でもそれくらいのことは……」
セオンはまた力なく首を振る。
「僕は……全然、その前のことを覚えていないんだ……」
「両親のこともか?」
セオンは頷く。
「今までごまかしてきてゴメン。今までも昔の話になると、どうも居心地が悪くなるというかさ……なんというか、物心がつくのが遅かったとか、幼い頃の記憶が薄れたっていうのとは少し違ってさ……本当に、本当に覚えてることがないんだ……」
「でもよぉ。前に言ってなかったか? 機械がいっぱいあったような記憶……って、あ」
アルカは途中で言葉を止めた。
「アルカ……たぶんそれ、今のセオンには逆効果だと思う」
「わ、わりぃ……」
「いいんだ。本当のことだから。僕に残されたわずかな記憶……それはたぶん、僕が何かの研究施設にいたっていうこと」
「「セオン……」」
アルカとナトリは悲しそうに視線を落とした。
「それがさっき見たゴールド計画と関係しているのかはわからないけど……今の僕は、自分のルーツみたいなものが知りたいなって、そう思っているんだ」
視線を上げて言うセオンを見て、アルカとナトリは少し安堵したように微笑んだ。
「アタシはいいと思うよ。セオンがそうやって過去に前向きに向き合える気持ちなら、きっと何があっても大丈夫だよ!」
「おう! それに、セオンはセオン。そこんとこは変わんねーしな!」
「あっ! アルカ、すっごい意地悪な顔してるけど、それって僕の悪口だよね!?」
「な~はっは! 俺は元気づけてやろうとしただけだぜ!」
などと三人が掛け合っていると、ユナミが安堵の表情で息を抜きながらパネルから手を離した。
「……よし。これで完了ですわ。みなさん、お待たせしました」
「ユナミ、終わったの?」
「ええ。今ならば奴隷の首輪は機能停止しているはずですわ」
「よっしゃ! それじゃあ今度こそ医療棟だな!」
アルカが勢いよく言うと、そこでユナミは少し残念そうに微笑む。
「そうですわね……しかし、ここからは私とみなさんは別行動にしましょう」
「「えっ?」」
「私としてもご一緒したいところは山々なのですが……考えてみれば誰かがここに残って操作パネルを見ていないと、もしかしたら別の者がやってきて再び首輪の機能を復活させてしまうかもしれません」
「「たしかに……」」
「それに、もし機材に何か問題が発生した場合、ここにいる四人のなかで対応できるのは私しかおりません」
「それはそうだけど……ここにユナミ一人じゃ危険だよ。二手に分かれるなら僕も残る」
「いいえセオンさん、私なら平気ですわ。いざとなればここから強行突破して逃げられるくらいの実力は持っているつもりですので」
「そりゃあ俺たちだって道中でユナミの強さを目の当たりにしてきたんだ、只者じゃないことくらいわかってるけどさ……」
「でしたらお早く。ここは私が死守しておりますから、みなさんはなるべく早く医療棟にいるだろうミストさんを救出していただければと思いますわ」
強い力のこもるユナミの瞳を見て三人は深く頷いた。
「そういうことなら、ここであーだこーだ言ってるうちに俺たち三人でサッと駆け抜けちまったほうがかえって早いぜ、セオン」
「そうだね。ユナミさんのためにも、アタシたちでなるべく早くミストちゃんを助けよう!」
「わかった……でも、僕たちがミストを助けたら、そのあとユナミはどうするの?」
「大丈夫ですわ。ここは管理室。ミストさんの首輪が無事に外れれば、その情報はここへも届くことでしょう……そうなれば私もすぐにここから離れます」
「どこかで落ち合う?」
「そうですわね……私はミストさんを依頼主のところに連れて行かねばなりませんから、ことが無事に運んだらアシオ基地の外、またあの宿屋の近くで合流しましょう」
「わかった」
セオンたち三人は頷きあって、ユナミを残して管理室をあとにした。
管理棟を出たセオンたち三人は再びアシオ基地内の暗闇のなかを駆け、一直線に医療棟へと足を向けた。
医療棟は灰色の石造りの平屋で窓には白い布がかけられ、入口には赤十字を模した古びた看板が揺れていた。周囲は静まり返り、人影も衛兵の姿もない。病室にはまばらに明かりが点いており、まだ寝静まるには早い時間帯である。
「問題はここからどうやってミストを探しだすかだよね……」
脇道の垣根に身を潜め、建物を遠巻きに眺めながらセオンが言った。
「さすがにアタシたちが一つ一つ病室を見て回るっていうのは無理があるし~」
「じゃあよ、建物の外で一発、ドカーン! と大きな音でもすりゃあ、みんな窓側になんだなんだと集まるんじゃねーか?」
「ちょっと! そんなことしたら基地そこらかしこが警戒状態になっちゃうでしょ!」
「ユナミの身を危険に晒すようなこともできないからね……僕たちは今までどおり慎重にいくべきだと思う」
「お、おう……」
アルカは一歩引いた。
「慎重にいくべきだけど、なるべく早く済ませたいところだね……どうしたらいいんだろう」
セオンが顎に手を当てて考え込んだときだった。
「あ……見つけた」
ナトリがポツリとこぼした。
「「なんだって!?」」
「セオン、アルカ。建物の右から七つ目の窓を見て?」
「いや、暗くて見えねーよ」
「あ、そうだったね。二人とも、ちょっと待ってて……原始の息吹、万象を抱く淵源となりて虚無より暗き闇をまとえ! ワイルド・ナイトサイト!」
ナトリの原創術によってセオンたちにも夜目がきくようになる。
二人は目を凝らして病室の窓を注視した。
「五、六、七……あれ? その部屋は明かりが点いてねーじゃねーか」
「アルカはもっと良く見てよ」
アルカは眉をひそめ、ナトリは少し呆れたように言った。
「あ! 本当だ! ナトリの言うとおり、その部屋に誰かいる!」
そこでセオンが気づいたように言う。
「ん~……? あ、本当だ……窓の外でも見ているのか……? 明かりも点けないで、あいつ何やってるんだろうな?」
「待ってアルカ! ……あれ、ミストだよ。間違いない!」
「なに!? 本当かセオン?」
「本当よ……アタシも見間違えじゃないと思う」
「マジかよ……ナトリ、お前、よく見つけたな……」
「へへーん。アルカはもっとアタシを褒めてくれたっていいんだよ?」
「いや、普通にすげーよ……そもそもこの基地に侵入するにしたってナトリの原創術がなきゃ無理だったしよ……」
「うん! すごいよナトリ!」
「えっへへ~! セオンもありがとっ!」
ナトリは嬉しそうに笑顔を見せた。
「あ。二人とも、運よく見つかって喜ぶのはいいけど、ミストちゃん、奥に引っ込んじゃった」
「もしかして今から寝るところだったのかな」
「それじゃあ早いとこ迎えにいかねーと、寝ちまったら起こすのが大変だぞ」
「そうだね。それじゃあ二人とも、早いところ行こうか」
セオンの声掛けにアルカとナトリも頷いて、三人は建物の外側から回り込むようにミストが休む医療棟の病室へと静かに向かった。
お読みいただきありがとうございます。
拙作『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』
2026年1月6日 アマゾナイトノベルズさま より電子書籍化!
悪役令嬢が現代日本に逆転移!?
戸籍も、頼りも、お金も、住処すらない絶望的な状況。
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