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温泉戦隊バスバスター ☆ センターは草津グリーン  作者: nandemoE


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潜入! アシオ基地(1)


 アマゾナイトノベルズ様より2026年1月6日配信開始!

 『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』


 悪役令嬢が現代日本に逆転移!?

 戸籍も、頼りも、お金も、住処すらない絶望的な状況。

 しかも「人を一生愛せない呪い」まで掛けられていて……。


 男性にも女性にも読んでほしい作品です。

 ぜひぜひ応援よろしくお願いいたします!



 坑道を抜けると、湿度をまとった四人の身体を夜の風が爽やかにぬぐっていった。


 岩壁の中腹から見えるのはぼんやりと月明かりで浮かび上がるいくつかの建物。灯火が点々と散らばり、兵の巡回する足音が岩壁にこだまする。


 坑道の口から覗くその光景は、まるで闇夜に潜む獣の巣を覗き込むような緊張感をはらんでいた。


「ようやく抜けたってところだな……出口がふさがれてなくてよかったぜ」


「ここはもうアシオ基地内とみていいのかなぁ?」


「そうなんじゃない? 建物が明らかに集落のものとは違うよ?」


 アルカ、セオン、ナトリが口にする。


 アシオ基地内にそびえる建物群は周囲の素朴な木造家屋や畑とは明らかに異なる雰囲気を放っていた。厚い石壁が幾重にも積み上げられ、窓はわずかに細長い隙間程度。鉄で補強された門扉は閉ざされ、表面には幾筋もの傷と焦げ跡が刻まれている。


 屋根は低く抑えられ、全体は重苦しいほど無駄のない直線で構成されていた。外壁の一部にはかつて崩れかけた部分を急ごしらえで補修した跡が残り、その継ぎ目は不自然なほど滑らかで妙に新しい。


「ええ、間違いありませんわ。あちら中央に見える建物が管理棟、そこから回り込むように宿舎、医療棟、研究棟、奴隷収容棟に労務管理所、それから鍛冶工房に修繕所、軍馬小屋に倉庫など……ですね。見張り塔や監視台にも気をつけねばなりませんわ」


「うへぇ~……指差し確認しても俺には覚えきれねーぜ……あっちこっちどっちだ?」


「僕もすぐに全部覚えるってわけには……さすが軍事基地って感じだよね」


「でも、この中のどこかにミストちゃんがいるんだよね? 奴隷収容棟でいいのかな~?」


「たしか昼間、監視役の人から今日は医療棟で休んでろって言われてなかったかなぁ……?」


 セオンの呟きを聞いてすぐにアルカは飛び出そうとする。


「よっしゃ! じゃあ医療棟だな! すぐ殴り込みにいこうぜ!」


「待ってくださいアルカさん。お忘れですか? すでに奴隷の首輪を付けられているミストさんを救出するには、まずは管理室から首輪の機能を止める遠隔信号を送る必要があるのですよ?」


 一歩踏み出していたアルカはグッと踏みとどまる。


「そ、そうだった……うっかり忘れてたぜ……」


「まったくアルカはいっつも猪突猛進なんだから!」


 苦笑いのアルカにナトリが冷静にツッコむ。


「ではここでもう一度簡単に作戦を確認しておきましょう。まず私たちは管理棟を目指します……そこで首輪の機能を停止する遠隔信号を送るためですわ」


 ユナミの説明を聞いて三人は反芻するように深く頷く。


「そして首輪を無効化しているうちにミストさんの首輪を取り外し、なるべく騒ぎを起こさずにここから脱出するという作戦ですの」


 四人はお互いに見合って深く頷いた。


「気をつけて行きましょう……おそらくですが管理棟は警備も厳しいはずですわ」


「アルカ? 正面突破とか目立つようなことはダメだよ?」


「セオンに言われなくたってわかってるぜ」


「どーだか。アタシはアルカが一番心配だな~?」


「ふふ……いざとなったらアルカさんの力技もありかもしれませんが、ここは敵地。見つからないことに越したことはありませんからね……なるべく見つからぬよう、闇夜に隠れて行きましょう」


 そうしてセオンたちは足音を殺すように基地内を駆けた。


 アシオ基地の中心にはほかの建物よりひときわ背の高い石造りの施設がそびえていた。外壁はかつての鉱山事務所を改修したもので、黒ずんだ煉瓦と補強用の鉄骨がむき出しになり、時折、風に軋む音を立てている。屋根には見張り台を兼ねた小塔が設けられ、鉄製のはしごが側面に張り付いていた。


 正面には厚い鉄扉が構えられ、その上方には基地全体を監視するための大窓が並び、内部に管理室があることを示していた。周囲には通信アンテナや信号灯が立ち、ほかの粗末な兵舎や倉庫とは一線を画す、まさにこの拠点の中枢にふさわしい管理棟としての威圧感を放っている。


 そしてその鉄扉の脇、管理棟の入口には守衛室があり、その中には衛兵が一人、緊張感もなくあくびをしながら深々とイスに腰掛けていた。


「あの守衛さん、セオンやアルカよりだらしないな~……今にも寝ちゃいそうじゃない?」


「おいナトリ。俺たちをあんなだらしなさそうな奴と一緒にすんじゃねぇ」


「軍事基地とはいえ、平時の夜間ともなるとこんなものなのかなぁ?」


 セオンたちは肩透かしをくらったように物陰から守衛を見ていた。


「とはいえ正面から入ろうとすれば確実に見つかるぜ? どうする?」


「こういうときはアタシにおまかせ! 原創術で眠らせてやるんだから」


「なるほど……やはりナトリさんの原創術は頼りになりますわね。たしかにあの守衛さんの様子ならばその方法が一番自然かもしれません……残念ですが、私たちが作戦に成功したあかつきには上司の方に叱られていただきましょう」


「でしょ? アタシちょっと行ってくるね!」


 言うが早いか、ナトリは静かな駆け足で守衛室の死角から近づき、窓の端から覗き込むように室内を見た。


「原始の息吹、万象を抱く淵源となりて虚無へと誘う霧となれ! ワイルド・スリープ!」


 そして小声で詠唱された原創術によって見事に守衛を眠りに落としたナトリはガッツポーズをしてから物陰のセオンたちを呼び寄せる。


「すごいやナトリ。闇属性の原創術まで使えるなんて!」


「だな。攻撃原創術しか使えない俺とは違って、本当に器用だよなぁ」


「えへへ……。アタシ、原創術はハルナお姉ちゃんにみっちりと仕込まれたからね!」


「ナトリさん、お見事ですわ。さ、今のうちに管理棟へ侵入してしまいましょう!」


 四人は頷きあって管理棟内部に足を踏み入れた。


 管理棟の内部は実に無機質なものだった。廊下は薄暗く、周囲の壁には古びた配管と配電盤が並び、かすかに油と金属の匂いが漂っている。いくつも並ぶ分厚い鉄扉には小さな覗き窓があり、その奥で何本もの通信機器のランプが明滅しているのが見えたりもした。


 四人は周囲を気にしながら廊下を進んでいたが、やがて前方から人の足音が近づいてくる。


「ヤバい! 誰かが向こうから歩いてくるぜ!?」


「みなさん、ここはひとまず隠れてやり過ごしましょう」


「隠れるって……こんな一直線の廊下じゃ僕たちが隠れられる場所なんて……」


「みんな! この部屋、誰もいないみたい! 一旦ここに避難しよっ!」


 ナトリが見つけた一室になだれ込むように身を隠した四人。息を殺すように静かに歩いてきた人影をかわしたところではあったが、闇夜に目が慣れてきたところでその部屋の全容に注視するようになった。


「なんだろう、ここ……資料室、かなぁ?」


 薄暗い室内には金属製の書棚が並び、埃をかぶったファイルや資料箱がぎっしりと詰まっている。床には散乱した書類が黄ばみ、湿気で端が波打っており、長らく人の手が入っていない静けさが漂っていた。


「おいおい……仮に軍事の資料だとしたら施錠もせずに無防備がすぎるだろ……」


「ホコリかぶって放置気味みたいだし、そんなに大したことない資料なんじゃない……?」


 セオン、アルカ、ナトリが首を傾げるなか、ユナミは思うところがあるかのように真剣な表情となり、窓からの月明かりを頼りに書棚へと近づいた。


 そして原創術によって手元にかすかな光を灯すと、その中の一冊を手にとって軽く目を通し始めたのだった。


「どうしたんだユナミ? ここの資料がなんなのか気になるのか?」


「え、ええ……もしやと思うことがありまして……」


 アルカの問いに戸惑いながらも資料から目を離さないユナミ。


「なんだなんだ? もしかして本当にお宝級の資料ってわけじゃないだろうな」


 そんなふうに言いながらアルカもファイルを一冊手にとって同じように目を通し始めたが、すぐに顔をしかめてそらした。


「うげっ! なんだよ、このいかにも難しい研究資料ですみたいなファイルは!」


「どれどれ……うわっ! アタシも無理!」


 ナトリも同じく、手に取ってすぐにまた書棚へと戻す。


「二人とも諦めるの早すぎだよ……どれどれ……?」


 セオンは苦笑いをしながら同じようにファイルを開いたが、徐々にその表情からは緩みが消えていった。


「これ……サウナって人が書いた研究資料だ……」


「サウナって……あのサウナかよっ!?」


「トツィギを裏切った登別ブルーの人!?」


 驚くアルカとナトリに告げるように、真剣に資料に目を通していたユナミが言う。


「どうやら間違いないですわね……おそらくは彼女がいなくなって継続困難となった研究ですが、その成果をただ捨てることもできず、たまたま空いていたこの部屋に押しやるように保存した……そんなところなのでしょう」


「サウナの……研究……?」


 アルカが首を傾げる。


「ゴールド計画……ここにはそんなふうに書かれているけど……僕にはなんのことだかサッパリわからないや……」


「ユナミにはわかるのか?」


「いえ、私も詳しいことまでは……ですがこれを見るに、何かの実験記録が残されているようですわね」


「どんなだ?」


 代わりに答えるとばかりにセオンが資料を読み上げる。


「SE-011成長記録……二月四日、被検体と原律石の共鳴率が閾値(しきいち)を上回った。二月五日、被検体が野外活動中に監視員とも違う何かの声を聞いたと主張する。二月八日、被検体が知るはずもない単語を口にする。いったいどこで学習をしたのか……な、なんだろうこれ……?」


 セオンは資料を読みながらかすかに震えていた。


「被検体って……まさか、トツィギでは人体実験でもやってたって言うのかよ!?」


「ひ、酷い……」


 アルカとナトリも同じく反応を示す。


「たしかに人体実験など認めがたいですが、どうやらこれは間違いなどではないようですわ……」


 神妙な顔でユナミが続ける。


「こちらの資料では日時や場所の詳細が明らかになっていますわ……どうやらこの研究は十年ほど前、ここではない、ニツコゥにあるどこかの研究施設によって行われていたようです」


「十年前……それって、アタシたちがグンマーに捕まったときだよね……?」


「ええ……そして、そのときに研究施設もグンマーの襲撃を受け、建物や研究成果の一部を失っているようですわ」


「こ、怖いことを言うなよユナミ……け、研究成果って……もしかして、その人体実験の被験者って可能性もあるってことだろ……?」


「そこまではなんとも……ですが、少なくとも今の私にはそれを否定することはできませんわ」


「な、なんだよそれ……な、なぁセオン?」


 アルカは慄くようにセオンに意見を求めるが、セオンはそのとき思い詰めるように茫然としていた。


「お、おい。どうしたんだよセオンまで……」


「あっ、ううん? なんでもないよ。なんとなく引っ掛かることがあって、昔のことを思い出そうとしていたんだけど……やっぱり何も思い出せなくてさ」


「や、やめてよセオン……まさか自分がその被験者だったなんて言わないよね……?」


「んな偶然があるかよ、ナトリ」


「で、でもさっきの資料に書かれていたこと……何かの声を聞いたとかなんとかって……まるでセオンのことみたいじゃなかった……?」


「石の声……ってことか!?」


「アタシだってまさかとは思うよ? でも、セオンはアタシたちが知らない言葉をたくさん知ってるし……」


「知るはずもない単語を口にする、か……たしかに資料の記録と一致するな」


 アルカとナトリの視線は茫然とするセオンに向かった。


「な、なぁセオン……俺たち、グンマー軍に捕まって連れ去られる馬車の中で初めて会ったんだよな? その前のこと、なんか覚えてねーのか?」


「ちょっとアルカ! そんなことここで聞いてどうすんのよ! 前にセオン言ってたでしょ? 昔のことはよく覚えてないって……」


「で、でもよぉ……」


「もうやめようよ、こんな話……こんな十年も前の研究のことなんか、もうどうだっていいでしょ……? 今アタシたちと一緒にいるセオンが変わるわけじゃないんだから……」


「そ、そうだな……っていうか、そもそも被験者がセオンって決まったわけじゃねーのに、なに言ってんだろーな、俺たち」


 焦燥感をあらわにしたナトリから視線をそらすようにアルカも頬をかいて困ったような顔をした。


「そうですわね。人はなにか当てはまる特徴を聞くと自分のことだと思い込む習性があるようですから……たまたま、たまたま資料に書かれていた内容がセオンさんに似ていただけですわ、きっと」


 悪くなる場の雰囲気を察したようにユナミはパンと軽く音を立てて資料を閉じ、笑顔を見せてからそのファイルを書棚へと戻した。


「すみません、私が資料なんかを気にして足を止めてしまったから……考えてみれば私たちにはこんなことをしている暇などなかったというのに……」


 申し訳なさげに苦笑いとなったユナミを見てセオンたちも真顔に戻る。


「そ、そうだったぜ……早いところ管理室を見つけて首輪の電波を書き換えるんだったな」


「うんっ! ここは気を取り直して、慎重に先に進もうよっ!」


「ええ。管理室もそう遠くないはずですから、ここは一気に向かってしまいましょう!」


 アルカ、ナトリ、ユナミはあえて元気に振る舞って見せていたが、やはりそれでもどこかセオンは影をまとったままであり、再び管理室を目指して進むことになっても、言葉少なめに三人のあとをついてくるだけになってしまっていた。



 お読みいただきありがとうございます。


 拙作『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』

 2026年1月6日 アマゾナイトノベルズさま より電子書籍化!


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 配信日:2026年1月6日
 アマゾナイトノベルズ様より



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