廃坑道のヌシ
アマゾナイトノベルズ様より2026年1月6日配信開始!
『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』
悪役令嬢が現代日本に逆転移!?
戸籍も、頼りも、お金も、住処すらない絶望的な状況。
しかも「人を一生愛せない呪い」まで掛けられていて……。
男性にも女性にも読んでほしい作品です。
ぜひぜひ応援よろしくお願いいたします!
月明かりの下、木々の隙間からかすかに漏れる光を探るようにセオンたち四人は山道を歩いていた。
「今日は満月、夜でもそこそこ明るくてよかったねぇ」
「そうやって油断してコケるなよセオン」
「もう。そそっかしい男子たちは足元に気をつけてよね~」
「ふふ……にぎやかな道中ですわね」
やがて見えた山肌の斜面には不自然な影が口を開けていた。かつて銅を掘り出した坑道の跡だ。崩れかけた木枠の支柱は苔と蔦に覆われ、入口付近には野草や低木が生い茂っている。
「お! あったあった! たぶんここがアシオ基地内に繋がる廃坑道の入り口だぜ?」
いち早くアルカが駆け寄った坑道の中は深い暗黒の世界であり、ひんやりと湿った空気が外まで漏れ出していた。入口の奥には水滴が落ちる微かな音が響き、地底に続くかのような闇がぽっかりと広がっている。
「ようやく見つけたね……だいぶ時間かかっちゃったけど」
「森の中をさまよったせいで、道中も無駄に魔物と戦闘になっちゃったからね……でも」
アルカ、セオン、ナトリの視線は平然と息も切らさずついてくるユナミに向かった。
「ど、どうかしましたか? みなさん」
ユナミはとまどった表情で尋ねる。
「いやぁ。魔物と戦うときのユナミ、すごかったなぁと思って……」
「ああ……俺たちみたいな素人とは明らかに動きが違うぜ。特に攻防一体の剣技な! 魔物からしたら盾の影からいきなり剣が突き出してくるように見えるんだろうな!」
「イクリプス・ピリオド! すっごい技だったよね~! 月明かりの下で舞ってきらめく剣の光が流れるようで、アタシ思わず見惚れちゃったな~!」
「そ、そんな……大したものではありませんわ……」
ユナミは困ったように謙遜しながら少し顔を背けた。
「そ、それよりも心の準備を整えて先へ進みましょう!」
そんなユナミを見て三人は頬を緩めた。
そして一同はそろって坑道へと足を踏み入れる。
坑道の奥は真っ暗な闇となっており、湿った空気が肌にまとわりついた。坑道の岩肌に沿うように木枠で組まれた通路が続いているが、長く使われていなかったせいか途中から明かりは途絶え、どこかから羽虫が舞う音だけが空間の先行きを伝えてくる。
「原始の息吹、万象を抱く淵源となりて黎明を照らす光となれ! ワイルド・サモンライト!」
一同はナトリの召喚した光源球を頼りに慎重に歩みを進めていた。
「光源の原創術ですか……ナトリさんの原創術はとても頼りになりますわね」
「いえいえ。道中でのユナミさんの剣さばきに比べれば……そ、それにアタシ、ここの戦闘では役に立てませんしぃ……なぁんかこの辺りのモンスター、生理的に無理ですぅ……」
「たしかに、この暗い坑道でムカデやゲジゲジみたいな虫型モンスターとなると、さすがに僕も気持ち悪いなぁ……」
「それだけじゃねぇ。通路もそんなに広くないから槍を振るいにくいったらねーぜ」
そんななかユナミだけは軽やかに剣を振るい、また上手く盾を用いて敵の攻撃をかわしながら立ち回っていた。
「みなさん無理をなさらず。ここは私が先頭に立って道を開きましょう」
ユナミはその上品な物腰からは想像もできないような豪胆さでパーティーの先頭を突き進んでいた。
やがて一同は通路の先にひときわ広い空間へとたどり着く。
「みなさん一度止まってください。どうやらこの先に大型モンスターがいるようですわ……廃坑道のヌシでしょうか」
「どれどれ……? うわホントだ。超巨大ムカデじゃねーか!」
「えぇ~!? アタシ苦手かもぉ……」
そこに巣食うのは岩肌と同化するような灰褐色の巨大ムカデ型モンスター。
節くれ立った外殻が光源球の光を鈍く反射し、無数の脚が砂利を擦って不気味な音を立てている。そして何よりもおぞましさを感じさせるのは顎から大きく突き出る角張った牙だ。不規則無数に生える棘は捕らえた獲物をズタズタに切り裂き逃すまいとする禍々しさを放ち、コキコキと音立てて動くたびに冷たい殺気が坑道の空気を震わせるようだった。
「どうするセオン? あの牙は相当ヤバいぜ……? 挟まれたら一巻の終わりだ。さすがにあれをユナミに至近距離でさばかせるわけにもいかねーぞ」
「いえ、私のことはお気になさらず……あの程度のモンスターくらいわけはありませんので」
ユナミはまるで動じた様子もなく淡々と口にしたが、アルカは彼女を背中のうしろに押しこくるように一歩前に出る。
「いーや、せめてここは俺たちにやらせてくれよ。協力関係とか言っておきながら、俺たちそれほど役に立ってないからな」
「そうだねアルカ。ここは僕たちが槍で距離を取りながら一気に倒しちゃおう!」
「よく言ったぜセオン!」
ここぞとばかりにセオンとアルカは槍を構えた。
「ここで時間を使うのももったいない。僕が変身してあいつの動きを止めるから、その隙にアルカは強烈な一撃をお願い」
「おいおい……変身って、いいのかよ? ユナミの前だぜ?」
「大丈夫! なんとなくわかるんだ。ユナミは信頼できる人だってね」
「ま、それもそうだな……まだほんの少ししか見てねぇが、剣さばきからもただひたすら実直って感じが伝わってくるようだぜ……俺も信用するさ」
そしてセオンはアルカと頷き合って叫んだ。
「ババンバ・バンバン!」
セオンの身体を緑色の光が包み込み、その姿を草津グリーンへと変えていく。
「こ、これは……」
ユナミは目を見開いていた。
「驚くかもしれないけど、実は僕、バスバスターってやつなんだ」
振り返って頬を掻くセオンの顔はヘルメットに隠れてはいるが、それでも少しはにかんだような苦笑いが見えるようだった。
「え、ええ。それは見ていればわかりますわ……わかりますが……まさか緑色の戦闘スーツが存在するとは……」
「へへっ! それもおなじみの反応だぜ! なんたってセオンは草津グリーン! 今まで存在すら明らかになっていなかった六人目のバスバスターなんだからな!」
「六人目……草津、グリーン……本当に……?」
「あぁ! すぐに本当だってわかるぜ! あんなムカデ野郎、俺とセオンにかかればイチコロだからよ!」
アルカは得意げに鼻の下あたりを指でこすった。
「アルカ、敵に気づかれた!」
セオンたちの存在に気づいた巨大ムカデは縄張りに侵入した者と捉えたかうごめく身体をうねらせ、一直線にセオンたちに襲い掛かってきた。
「あの牙は僕が押さえる!」
「おう! 任せたぜ!」
迫りくる巨大ムカデを迎え討つようにセオンは前に飛び出し、アルカは槍を縦に構えて詠唱を始める。
「原始の息吹、万象を抱く淵源となりてすべてを焼き貫く神威となれ! ワイルド・フレイム!」
詠唱によって生じた炎はアルカの手から生じて槍の柄を滑るように延び、先端にまで至る。
「アルカ! いつの間にそんな技を!?」
「へへっ! 俺だってセオンにゃ負けてらんねーのよ!」
「原魔槍……! これは見事な!」
ユナミは目を張った。
「アルカ! こっちは抑えたよ!」
そしてそのとき両手を使って牙を抑え、力技で巨大ムカデの動きを封じたセオンが声を上げる。
「なんと! あの巨体を力任せに抑えつけるとは……!」
「俺だって負けてねぇぜ! 見てろっ!」
驚くユナミを尻目にアルカは巨大ムカデに飛び掛かり、その胴体の中心に深々と必殺の一撃を突き刺したのだった。
断末魔をあげ、しばらくもがいていた巨大ムカデの生命力は並々ならぬものがあったが、やがて原魔槍から移った炎がその全身を包み込むとようやく力尽き、灰になるようにして果てたのだった。
「やったねアルカ! すごい技だった!」
セオンは変身を解いてアルカに駆け寄り、二人でハイタッチを交わす。
「おう! 俺だって強くなってるんだぜ?」
「二人とも、すごいすごーい!」
そこへ駆け寄ったナトリも含めて喜び合う三人を遠巻きに見ながらユナミは呆然と言葉をこぼす。
「す、すごいですわ……母の言っていたとおりだった……」
そして笑顔を向け合っている三人に、ユナミは微笑みながらゆっくりと近づいた。
「セオンさん、アルカさん。廃坑道のヌシ討伐、お見事でした」
「見たか。俺たちの力、チームワークをよ」
アルカがガッツポーズで応える。
「ええ、しかと。……それにしても驚きましたわ。セオンさんのそのお力、紛れもなくバスバスターそのものですわね」
「おおよ! セオンの力があれば、ミスト救出なんて楽勝ってもんだぜ!」
「なぁんでアルカが得意げに言ってんのよ」
「いいじゃねーか。俺たち仲間なんだしよ」
アルカとナトリのやりとりを笑って見ながらセオンは言う。
「そうだね。……でもみんな、今は早く先へ進もうよ」
「そうですわね。ヌシを倒せば、もう坑道は抜けたも同然。夜の闇に紛れてサッとアシオ基地内に侵入してしまいましょう」
四人は頷き合って坑道を先へ先へと進んだ。
お読みいただきありがとうございます。
拙作『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』
2026年1月6日 アマゾナイトノベルズさま より電子書籍化!
悪役令嬢が現代日本に逆転移!?
戸籍も、頼りも、お金も、住処すらない絶望的な状況。
しかも「人を一生愛せない呪い」まで掛けられていて……。
男性にも女性にも読んでほしい作品です。
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