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温泉戦隊バスバスター ☆ センターは草津グリーン  作者: nandemoE


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麗しの令嬢ユナミ


 アマゾナイトノベルズ様より2026年1月6日配信開始!

 『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』


 悪役令嬢が現代日本に逆転移!?

 戸籍も、頼りも、お金も、住処すらない絶望的な状況。

 しかも「人を一生愛せない呪い」まで掛けられていて……。


 男性にも女性にも読んでほしい作品です。

 ぜひぜひ応援よろしくお願いいたします!



 日も暮れ始め、セオンたちが宿屋の扉を押し開けると外の冷たい空気とは対照的に暖かく乾いた空気と煮込み料理の香りがふわりと漂ってきた。


 広間は木造で床や梁には長年の使用でできた傷や染みが刻まれている。中央には大きな暖炉があり赤く揺れる火が部屋全体をやわらかく照らしていた。


 壁際には長椅子と丸テーブルが並び、粗末ながら清潔な麻布がかけられている。片隅では旅人らしい女性が一人、イスに腰掛け湯気の立つスープをすすっていた。宿の女将は奥のカウンターで帳面をつけながら客の様子を鋭くも温かい目で見守っている。


 奥には二階へ続く階段があり、そこが客室である。廊下には油ランプが灯され、ほのかな明かりと木の匂いが外界の荒々しい空気を忘れさせてくれるようだった。


 セオンたちは静かに食事をとりながら会話の糸口を探していた。


 先ほどの一件が脳裏から離れなかったのだ。


「な、なんかみんな暗くなっちゃったね! せっかく故郷まで戻ってきたんだから、もっと元気だそうよ~」


 不自然にはにかみながらナトリが切り出した。


「そうだな……おいセオン。俺たちも気を取り直していこうぜ? まだウミノツヤまでの道のりは長いんだからよ」


「う、うん……」


 セオンは歯切れの悪い感じに言う。


「あの子、かわいそうだったな……」


「ミストとか言ったよな。ありゃあまだ十二、三ってところだな」


「同じ奴隷でも、アタシたちとは全然扱われ方が違ったね……」


「僕、なにもできなかった……大人に言われるがまま、これが正しいみたいに押しつけられて何も言い返せなくなっちゃったんだ……グリンシーにいた頃と何も変われていない。いくら強い力を得られたと言っても、それだけじゃダメなんだって思い知らされちゃったよ……」


 セオンは悔しそうに頭を垂れた。


「だがよ。あの子だって生きるために自分から選んだって言ってたじゃねーか。それを俺たち他人がどうこう言うのは、それも何か違うんじゃねーのか?」


「でもあの子は、身寄りがないからって言っていたんだ。本当に望んでいたわけじゃない」


 辛そうに言うセオンを見てナトリが心配そうに切り出す。


「セオンはどうしたいの?」


「あの子を助けたいんだ」


「どうやって?」


「僕の力なら、アルカとナトリを抱えたって基地の外壁くらい飛び越えられるはずさ」


「でも基地の中にはトツィギ兵たちもきっとたっくさんいるよ?」


「なるべく見つからないようにする。もし見つかっちゃったら、そのときは少しだけ静かにしてもらって……」


「じゃあ仮になんとか救出できたとして、助けたあとはどうするの……?」


「それは……」


「一人じゃ生きていけない子を放り出すの? それとも、アタシたちと一緒に連れていくの? セオンわかってる? アタシたち、これからトツィギ軍と協力していくんだよ? あの子ごと戦争に巻き込むの……?」


「それは……」


 セオンが口ごもったときだった。


「ちょっといいですか」


 宿屋の片隅にいた女性が三人に声をかけてきたのだ。


 その女性の顔を見る限り肌は白磁のように滑らかだが、ところどころに淡い灰色の紋様が浮かび、どこか浮世離れした不思議な印象を醸し出している。そしてそれらを隠すように身体の線をゆるやかに覆う薄手の外套と、裾の長い緩やかな衣装を身にまとっていた。


 室内であっても深く被ったフードからは輝く金糸のような髪がチラリと窺え、整った顔立ちからしても相当に美人の部類に入ることがわかる。しかしそれでいながら左腕には細身の盾、腰には鍛え抜かれた片手剣を下げており、外見と心証がアンバランスで素性の読めない神秘さを放っていた。


 そしてなにより彼女の存在を異質めいたものに感じさせるのがその瞳であり、切れ長の双眸の右は深い碧、左は淡い蒼であった。


「お話が聞こえてしまいましたわ? そういうお話は、もう少し声をお控えになったほうがよろしいのではないでしょうか?」


 透きとおるような声、上品な言葉遣い。まるで育ちの良い貴族令嬢のようでもあるが、その武装がどこか物々しい。しかしそれでも隠し切れない美しい顔立ちを見ただけでセオンは紅潮せざるを得なかった。


「あ、す、すみません……べ、別によからぬことを企んでいるわけでは……」


 慌てふためくセオンを見ながら女性は柔らかく微笑む。


「いえいえ、構いませんわ。なにせ私も同じようなことを考えておりましたから」


「えっ!? あなたも!?」


 セオンは驚く。


「ええ。……申し遅れました。私の名前はユナミ。訳あって彼女を助けようとしている者です」


「どうもご丁寧に……僕はセオン。こっちはアルカとナトリです。三人とも最近までグンマーにいたんですが、ようやく故郷であるトツィギまで戻ってきたところなんです」


 簡単に自己紹介を済ませてよろしくと掛け合う四人であったが、すぐに本題に戻る。


「それで……彼女っていうのは、ミストっていう青髪の女の子のことですか?」


「はい。実は私も、彼女の親族から依頼を受けてここにいるのです」


「あの子の……親族の方がまだいたんですね」


「そうですわね……ですが、人々のミストさんへの扱いを見る限り、親族である依頼主が表立って動くわけにもいかず私に依頼をした、と言ったところでしょうか」


「そうだったんですか……」


「ええ。近いうちに隙を見て基地に潜入し、彼女を救出しようかと考えておりましたが、そこへあなた方の話し声が聞こえてきましたので、失礼ながらお声を掛けさせていただきました」


 それを聞いてアルカとナトリの疑念の目がセオンに向いた。


「なはは、こんなに簡単に人に聞かれてちゃあ、俺たちだけで救出作戦なんか上手くいきっこないぜ、セオン?」


「あはは、計画性もなにもなかったよね、アタシたち……」


 それでもユナミは上品に微笑む。


「とんでもありませんわ……ですが、救出をするにも手段を間違えますと最悪の結果にも繋がりかねませんので、実は私としても単独では動きにくく、協力者がほしいと考えていたところだったのです」


「協力者……もしかして僕たちと手を組もうってことですか?」


「ええ。もちろん大変な危険を伴いますから、無理にとは言えませんが……」


「大丈夫だぜ。俺たち、これでもけっこう強いからな」


「うん。いい作戦さえあれば、アタシたちならなんとかなると思う」


 それを聞いてユナミは嬉しそうな顔をした。


「本当ですか? ありがとうございます……もちろん作戦ならありますわ。もしよろしければ聞いていただきたいと思いますが……」


「もちろん聞くよ! 僕たちだけじゃ強引に突撃して騒ぎになっちゃうかもしれないし……」


「それでは僭越ながら」


 セオンたちはユナミの言葉を待つように彼女に視線を向けた。


「まずはじめに、ミストさんをはじめ奴隷となった方々に装着された首輪についてですが、無理に外そうとしたり、アシオ基地から遠く離れると、装備者を殺害してしまう仕様となっているようですの」


「えっ!? ……それじゃあもし、僕たちがただ彼女を連れてこの土地を離れていたら……」


 ユナミはその先の言葉を遮るように視線を伏せた。


「い、いきなり重大案件だった……ア、アタシたちだけでやらないで本当によかったね……」


「助けたつもりが大変なことになっちまうところだったのか……だけど、そんなのどうやって助けたらいいんだ?」


 頬に冷や汗を流すように三人は苦笑いを浮かべてユナミの言葉を待った。


「ですから、まず私たちが行うべきは基地中央にある管理棟から、首輪の機能を止める遠隔信号を送ることなのです」


「遠隔信号……なるほど、そういう仕組みだったんですね」


 セオンが頷く。


「おいセオン。一人で納得してないで俺たちにもわかるように説明してくれよ」


「たぶん、奴隷の首輪をしていると管理棟から発せられる信号の届かない範囲には逃げられない仕組みになっているんだと思う」


 アルカの問いにセオンが答えると、それを聞いたナトリは辛そうな顔をした。


「酷い……そんなふうに人が人を管理するなんて……」


「そういや、さっきもミストの首輪が赤く光って、苦しそうにしてたよな」


「ええ。装着者が命令に反したりした場合も、徐々に強く首輪が締まっていくようです……無理に外そうとした場合には即座に爆発するとも聞いたことがありますが……」


「なるほどな……だから機能を止めてから外す必要があるってか……」


「爆発するっていうのはちょっと厄介だね……」


 アルカとナトリは視線を落とした。


「じゃあ、首輪の機能が止まっているかどうかはどうやって判断すればいいんですか?」


 セオンが問う。


「機能を停止する遠隔信号を受信すると、首輪は青い光を発するそうですわ。その状態であれば無理なく首輪が外せる状態になっているそうです」


「お! それじゃあ事のついでに遠隔信号を受け取ったほかの奴隷も一斉解放できるってわけか! 青く光った首輪を見て自分たちで外せるなら、それで万事解決だもんな!」


「でもさアルカ……さっきの監視官が言っていたよね? ここの奴隷たちはみんな自ら望んで奴隷をやっているんだって。解放なんか望んでいないんだって……」


 明るく思いついたように言うアルカの勢いを削ぐようにナトリが影を落として言った。


「解放してあげたいだなんて実はアタシたちの自己満足で、あの監視官が言ってたように奴隷としてでしか生きていけない人からしたら余計なお世話なのかもしれないんだよ……?」


「そ、それはだな……」


 アルカも困った顔をする。


「二人とも、それは仕方のないことなんじゃないかな」


 セオンが言う。


「きっと、僕たちにできるのは選択肢を用意してあげることだけなんだと思う」


「首輪を外せるようになっても、自ら外そうとしない人はしょうがないってことか?」


「かわいそうだけど、そこから先はアタシたちが決めることじゃないってことだよね……」


 三人は重く視線を落とした。


「ただ、もし一緒に逃げようとする人がいるならば、私も全力で支援をするつもりですわ。基地を脱出するまで全員を守りきる保証まではできかねますが……」


 ユナミが控えめに言った。


「そうなったら僕たちも可能な限り協力しますよ。助けを望んでいる人がいるなら、僕たちはそれに応えてあげたいから」


「ありがとうございます……ですがやはり、ここから先は手を差し伸べられた方々の最終的な判断と責任の部分でもありますから、私たちも最善を尽くす以上のことはできないことを受け入れていくべきなのでしょうね」


「辛いことだが……現実は甘くねぇってことを俺たちも学んでいかなきゃいけねーもんな」


 アルカが腕を組みながら頷く。


「わかった……辛いことだけど、そういうことならほかの奴隷の件はアタシも受け入れていく」


 ナトリも覚悟を決めた表情で頷いた。


「じゃあ次はアシオ基地内への潜入方法ですけど……アタシにはなんにも思いつきませんが、ユナミさんには何かいい作戦があるんですか?」


「ええ。もちろん私のほうで下調べは済んでおりますわ」


「ほーぅ? ならユナミの作戦とやらを聞こうか」


「ちょっとアルカ! いきなり呼び捨てとか、なれなれしすぎでしょ!」


 アルカとナトリの掛け合いを聞きながらもユナミは柔らかく微笑む。


「私は構いませんわ? セオンさんもナトリさんも、どうか私のことは遠慮なくユナミとお呼びくださいね」


「それじゃあ……ユナミ。僕たちにも潜入のための作戦を聞かせてもらってもいいかな?」


「ええ、もちろんです」


「あ、あぁ……セオンまでいきなり呼び捨て……なんでよぅ。いくらユナミさんが美人だからって、いきなり距離を詰めようとしすぎでしょ……?」


 肩を落とすナトリにも配慮するよう柔らかく笑みを向けながらユナミは続ける。


「みなさんはアシオ基地の一辺が坑道だった断崖を活用しているところをご覧になりましたか?」


「そーいえばそうだったような気がする、程度だけどな」


「実はですね、過去にここが銅山だった頃の話らしいのですが、どうも掘り進めているうちに一部、外まで突き抜けてしまった箇所があるようなのです」


「と、いうことは……その突き抜けた坑道の入口を見つければ、そこからアシオ基地内に潜入できるってことでいいのかな?」


 セオンが首を傾げるとユナミは頷く。


「そういうことになりますわ。そしてその坑道はこの付近の山の中にある、とのことです」


「へぇ! そりゃあいいぜ! その坑道の入口さえ見つけちまえばこっちのもんよ!」


「ちょ、ちょっと待ってよみんな! そんなに簡単な話ってある?」


 ナトリが慌てて声を上げる。するとユナミは神妙な顔をして再び口を開く。


「そうですね。ナトリさんが気にされたとおり、まったく問題がないわけではないのです。実はその坑道は長らく使われていない廃坑道になりますから、当然基地側も塞がれている可能性がありますし、坑道自体も中が複雑に入り組んでいる可能性もあります。また、長く放置された結果、魔物の類も棲みついている可能性もあり……」


「うわぁ! サイアクー! もうそれ半分ダンジョンじゃん!」


 ナトリは頭を抱えた。


「ま、いいじゃねーかナトリ。魔物が棲みつくって言っても、この辺の魔物なら今の俺たちにとってそこまで脅威にはならねーだろ?」


「そうだよナトリ。僕も少しは戦闘にも慣れてきたし、頑張るからさ」


「う、うぅ……わ、わかったわよぅ~……」


 ナトリはしぶしぶ了承し、そんな様子を見てユナミはさらに微笑む。


「ふふ……そういえばみなさんは三人で協力し合ってグンマーからここまでやって来たのですよね。とても心強いですわ」


「なーはっは! 特に道中では俺の活躍がきわ立ってだなぁ……」


「こらアルカ! すぐ調子に乗らないの!」


 おちゃらけるアルカをナトリが咎める。いつもの三人の雰囲気にユナミも加わって和やかに笑い合いながら、彼女を仲間に加えたように四人は親睦を深めていった。


 そして作戦を共有したあと、テーブルの中央に気を引き締めた四人の視線が合わさる。


「それでは、ミストさん救出作戦はいつの決行になさいますか?」


 ユナミが問い、ほかの三人が目配せをし合ってから答える。


「僕たちはいつでもいいですよ。でも、なるべくなら早く助けてあげたいかなぁ」


「ならば善は急げ。今日このまま決行というのはいかがでしょうか?」


「僕たちは構わないけど……大丈夫? もうじき完全に日が暮れるけど……」


「だからこそ、ですよ? 夜の闇に紛れて潜入する、という作戦ですわ」


「お! なんかそれカッコいいな! 解放せよ! 解放せよ! っていっちょやったるか!」


「夜間なら多くの兵も休んでいる時間帯だろうし、アタシとしてもありがたいな~」


「アルカとナトリもいいなら決まりだね! じゃあ早速、出発しよう!」


 四人はテーブルの中央で拳を合わせ、部屋に荷物を置いたあと、そろって宿屋をあとにした。



 お読みいただきありがとうございます。


 ちょくちょく戦隊ネタを差し込んではいるんですが、今回は「解放せよ」くらいでしょうか。

 50周年、ゴジュ○ジャー……まさかこんな結果になろうとは、でしたね……。


 拙作『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』

 2026年1月6日 アマゾナイトノベルズさま より電子書籍化!


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 配信日:2026年1月6日
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