強くなりたい
アマゾナイトノベルズ様より2026年1月6日配信開始!
『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』
悪役令嬢が現代日本に逆転移!?
戸籍も、頼りも、お金も、住処すらない絶望的な状況。
しかも「人を一生愛せない呪い」まで掛けられていて……。
男性にも女性にも読んでほしい作品です。
ぜひぜひ応援よろしくお願いいたします!
退却した下呂イエローが駆るゲロゲリヲンの影が見えなくなっても、関所のなかには依然として重苦しい雰囲気が漂っていた。
兵たちは絶望感にうなだれ、何度も何度もため息をつく姿があちこちに散見される。
負傷した者も多くあったが、激しい戦いの爪跡が残る関所内では崩れた建物も多く、満足に体勢の立て直しもできない状態となっていた。
「これでグンマーもトツィギも互いに関所が機能しなくなってしまったな……グリンシーからニツコゥに繋がるこのルートは山間にあることもあって比較的争いの場になることは少なかったのだが……」
イガッセが悔しそうに呟きつつ顔を上げた。面前にはセオンたち三人のほか、重症を免れた兵たちが集められていた。
「しかし! 辛いときこそ前向きにならなければいけないな。特にセオン君。キミがいなければ私たちはとっくに全滅していただろう……私はこの幸運に感謝をしたい。ありがとう」
「いえ、僕はそんな……」
謙遜するセオンのうしろから兵たちの明るい励ましの声が響く。
「謙遜しなさんなって! キミはあのバスバスターを追い払ったんだぞ!」
「おかげで命が助かった! 俺はもう、二度と家族の顔が見れないものかと……」
「ありがとう! 俺たちはみんな、キミに感謝をしてるんだ! もっと胸を張ってくれよ!」
そんな声を受けてセオンは照れ隠しのように後頭部をかいた。
「だってさ! ホレ、もっと胸を張ったらいいじゃねーか!」
「そうだよセオン! アタシたち、すっごいことをやったんだから!」
「う、うん……」
アルカやナトリの励ましもあってかセオンは少し頬を赤らめながらも誇らしげに微笑んだ。
そんな様子を微笑ましく見守りながら、イガッセはまた気を引き締めて一同に語りかける。
「だが喜んでばかりいられない状況となってしまったのもたしかだ。敵に我々の目論見が露見してしまったばかりか、セオン君の存在すらもバレてしまった」
一同は重く頭を垂れる。
「懸念があるとすれば、敵がこのままセオン君を野放しにしてくれるかどうかだ」
「それは……」
セオンはハッとした顔を上げてイガッセを見た。
「怖がらせたいつもりはないんだが、イオウはまた来るようなことを言っていた……だからこのままキミが故郷のニツコゥで暮らしていたとして、はたしてそれで本当に安寧の暮らしが手に入るのか……と、どうしても考えざるを得ないんだ」
「それは……僕がいるとニツコゥが狙われる、という意味でしょうか?」
「そうとも言える。イオウの発言から考えるに、キミのいる場所ごとあの巨大ロボで蹂躙しようとする可能性もあるからね」
「マ、マジかよ……あんなの逆立ちしたって勝てっこねーぞ……」
「ど、どうしよう……アタシたち、逃げ続けるしかないのかな……」
戦慄する三人にイガッセは言う。
「対抗策を考えるなら、真っ先に思い浮かぶのは草津グリーンの巨大ロボを手に入れることだね……場所ならおおよその場所もわかっている」
「グリンシーのどこか、でしたよね?」
セオンが言うとイガッセも頷く。
「だけど問題は、どうやってグンマー側に眠る巨大ロボを回収するか、という点だね」
それに対してアルカが能天気な声を出す。
「それなら簡単じゃねーか。俺たちは元々グリンシーにいたんだぜ? 村の人たちもいい人ばっかりだし、事情を話せば協力してくれるって!」
しかしそれを聞いた周囲の目には若干の悲壮感が含まれていた。
「僕たちも状況が変わったし、ちょっとすぐってわけにはいかないんじゃないかな……」
「そうよアルカ。大体、村の人がよくってもほかの人が黙ってるわけないでしょ? 考えなしに向かえば、待ち構えられて捕まっちゃうに決まってるじゃない」
「お、おう……たしかにあのイザナやサウナって奴らならセオンを捕らえて利用しようとしてきたって不思議じゃなかったな……」
セオンとナトリに詰められてアルカは一歩引いた。
「それじゃあ、僕たちはいったい、これからどうしたらいいんだろう……?」
それに対してイガッセが進み出る。
「それについて私から提案があるんだが、どうだろう? こうなってしまった以上はセオン君、キミがトツィギ軍と手を組むというのも一つの選択肢になるのではないかな?」
「僕が……トツィギ軍と……?」
「そうだよ。たしかにバスバスターのいないトツィギ軍は少し劣勢かもしれない。でもだからと言って完全にグンマーに遅れを取っているわけではないんだよ? 原始的な生活を続けるグンマーにはない、少しは発展した文明がトツィギにはあるんだ」
「そういえば、グリンシーで巨大ロボを探していたときも機械みたいのを使っていたよな」
「アタシも見た! ほかにも鉄の剣とか鉄砲とか、いろんな武器を使ってた!」
アルカやナトリの発言に満足そうに頷いてイガッセは続ける。
「それに今回の件で原律石も多く入手できた……これらを上手く活用していければ、そう簡単にはグンマーにもやられないはずさ」
「たしかに……」
セオンは頷く。
「セオン君たちだけでは対抗できない巨大ロボにだって、我々が一緒ならばきっとなにかほかの対抗策が見つかるはずさ! そうすれば、いずれグリンシーに眠る草津グリーンの巨大ロボにだって手が届く日がくるかもしれない」
「おう! そりゃあいいぜ! どの道、このままじゃ次にあのイオウって奴が攻めてきたときに対抗策がないんだ。それだけじゃねぇ……戦争を止めるにしたって、アカギの仇を討つにしたって、結局はほかのバスバスターとの戦いは避けられねーんだぜ?」
「アタシも……これはもう避けられない流れなんだと思う。敵があんなにも強大な存在なんだってわかった以上、ただ傍観しているだけなんてできないよ……これはきっと、バスバスターとなったセオンの宿命なんだと思う」
「宿命……。宿命か……」
セオンは表情に影を落としながらも自分の両手を見つめた。
そしてそんな手をナトリは包み込むように握った。
「アタシはセオンの本当の夢を知ってる。だから復讐だとか、宿命だとか、突然降ってきたような問題に振り回されたり、流されたくない気持ちもよくわかる……でも、今となっては、もうセオンにしかできないことがいっぱいあるんだと思うんだ。きっとそれは重かったり、苦しかったりもするよね……そしてアタシにはその本当の辛さを理解してあげることもできないんだと思う……」
ナトリは悔しそうな表情をしながらも、セオンの手を握る力を強めた。
「だけどアタシ、グリンシーにいたときに言ったよね? アタシはセオンの夢を応援したいって。そのために何ができるかなんて考えてもいなかったけど、なぁんか今、わかったような気がするんだ」
ナトリはにっこりと笑って続ける。
「アタシはたとえどんなに苦しい状況になったって、ずっと一緒にいてセオンを支えるよ。きっとそれがセオンの夢を叶える一番の近道だと思うから。セオンの夢がこの大きな問題を越えた先にあるのなら、アタシも一緒にこの問題を乗り越える! そうしてぜーんぶの問題をやっつけたところで、今度こそ二人の約束を叶えるんだから!」
「ナトリ……」
セオンは潤んだ瞳でナトリを見返していたが、やがて吹っ切れたように表情を引き締め、逆にナトリの両手を力強く握り返した。
「ありがとうナトリ! 今ので勇気が出た! でっかい夢は無限大だね!」
「セオン!」
迷いのなくなったセオンの表情を見てナトリはさらに嬉しそうに微笑む。
「イガッセさん! 僕、決めました! トツィギの軍と協力してグンマーと戦います!」
それを聞いてイガッセのみならず周囲にいた兵からも喜びの声が多数あがった。
「おお! ありがとうセオン君! とっても心強いよ! キミがいれば千人力さ!」
イガッセは素早く駆け寄り、セオンとナトリの間に入るようにしてまでセオンの両手を掴んだ。
「ちょ、ちょっとイガッセさん……」
セオンと繋いでいた手を離されたナトリが困ったような反応を示すがイガッセは笑い飛ばす。
「おおっと! 青春爆発ファイヤーしているところに邪魔してしまってすまないねナトリ君。だがこれはどうにも! どうにも嬉しくてつい割って入ってしまった」
「せ、青春って……ち、ちが……ア、アタシとセオンは別に……」
顔を赤くして小さくなるナトリと入れ替わるように、今度はアルカがセオンの肩に手を回した。
「おいおい……俺のことも忘れんなよ? 俺だって最後まで付き合うぜ? イザナも、サウナも、イオウも、それからあのオンドとかいう小者じみた貴族のおっさんも、ぜーんぶ俺がぶん殴ってやるからよ!」
そう言って歯を光らせるように爽やかな笑顔を見せるアルカ。
「みんな……ありがとう。みんながいてくれれば、僕、きっと戦えるよ!」
そんなふうにみんなから祝福を受けるような雰囲気のなかで、セオンは明るく笑顔を見せた。
その日はなんとか関所内に残った建物のなかで夜を明かし、翌朝、セオンたち三人はイガッセに見送られ、受け取った身分証明書を手に関所を発とうとしていた。
「ふむ。グンマーの服装ではこの先目立つと思ったが……キミたち、トツィギの服装も似合うじゃないか」
「ありがとうございますイガッセさん! 服までいただいてしまって……」
三人はトツィギ側の山岳服を貰い受け、見慣れぬ装いに身を包んでいた。
セオンは濃緑色の上着に灰色の麻ズボン、腰には細身の布帯を巻き、胸元は軽く開けて動きやすさを優先。髪は後ろで簡単に束ね、外見だけ見れば地元の青年兵に紛れそうだ。
アルカは茶色の麻ベストに袖なしのシャツ、動きやすい山用の濃灰ズボンを合わせ、腰には布帯と短剣を装備。日差し除けの布を首に巻き、肩には革の小さなポーチを掛けている。整えられた黒髪は短めで、軽快な印象だった。
ナトリは生成りの長袖シャツに濃紺のズボン、胸には革製の簡易防具を付けている。腰布には薬草袋や小瓶が吊られ、彼女の薬師としての一面を漂わせる。髪は左右に編み込まれ、山国の娘らしい素朴さと実用性が合わさっていた。
「さて、私は乱れたこの関所を立て直してからウミノツヤへ向かうことになるが、セオン君たちは気にせず先へ進むといい」
「先へ……?」
首を傾げるセオン。
「ああ。こうして互いに協力することになったんだ。トツィギ軍のなかでも正式にキミの力を共有させてほしい」
「具体的には何をすればいいんですか?」
「トツィギの首都、ウミノツヤを目指してほしいんだ。そこには私の家もあるし、トツィギ軍の本隊もある」
「なるほど……そこに力を結集して、グンマーに対抗する機を待つ、ということですか?」
「そういうことだね。きっとキミの力は大歓迎されるはずだよ」
「そうなれるよう、僕はもっと強くなります!」
「心強いね……期待しているよ」
イガッセは優しく微笑んだ。
「ここからウミノツヤを目指すなら、まずはこのまま山道を進みニツコゥに向かうといい。途中にあるアシオ基地も目印にはなるだろうから迷いはしないはずだよ」
「「わかりました」」
「ニツコゥについたならウミノツヤはもう目と鼻の先さ……ただ、道中の魔物も強くなってくるから油断をしてはいけないよ? まぁ、キミたちなら問題ないかとは思うけど……」
「な~はっはー! 強い魔物なら望むところだぜ! なんせこっちはガンガン強くならなきゃいけないんだからよ! な、セオン?」
「うん! 僕もみんなを守れるように、強くならなきゃって思ってたところさ!」
「っしゃあ! あんなに気弱だったセオンがこう言ってんだ! 俺たちはまだまだ強くなるぜ! あんのイオウとかいう奴が来ても返り討ちにしてやれるくらい強くなろーぜ!」
「うん! そうだね!」
セオンとアルカは力強く拳をぶつけ合った。
「それじゃあイガッセさん。僕たちは一足先にウミノツヤを目指すことにします」
「イガッセのおっさん! 俺たちの身分証明書、サンキューな!」
「イガッセさんもお気をつけて」
三人は手を振ってイガッセに別れを告げ、トツィギの関所をあとにした。
お読みいただきありがとうございます。
拙作『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』
2026年1月6日 アマゾナイトノベルズさま より電子書籍化!
悪役令嬢が現代日本に逆転移!?
戸籍も、頼りも、お金も、住処すらない絶望的な状況。
しかも「人を一生愛せない呪い」まで掛けられていて……。
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