快楽雷鳴ゲロゲリヲン
アマゾナイトノベルズ様より2026年1月6日配信開始!
『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』
悪役令嬢が現代日本に逆転移!?
戸籍も、頼りも、お金も、住処すらない絶望的な状況。
しかも「人を一生愛せない呪い」まで掛けられていて……。
男性にも女性にも読んでほしい作品です。
ぜひぜひ応援よろしくお願いいたします!
「これ、もう動かねぇよな……?」
アルカが槍の柄でイオウの身体をつつくが反応はない。
「これ、倒したってことだよな? 俺たち、あのバスバスターを倒したってことだよな!?」
その顔は徐々に明るくなっていく。
「し、信じられねぇ……軍隊にも匹敵すると言われるバスバスターの一人を、俺たち、たった三人だけで……」
「セオンが同じバスバスターだったのと、この人が思いっきり油断してたからなんとかなったって感じだけどね……次はこう上手くはいかないと思うよ……」
ナトリが心配そうに言うのをアルカが軽く笑い飛ばす。
「なっはっは~! その点は心配いらねーぜナトリ。なんたって俺たちはバスバスターがどうやって変身するかを知ってるんだ……要するに、今こいつが気を失ってる間に変身ブレスレッドを奪い取っちまえばそれでいいのさ」
「あっ! なるほど!」
ナトリが手を打っている間にも、アルカが颯爽とイオウの身体からブレスレッドを剥ぎ取ろうと手にかけていた。
「んでもって、あわよくばこの俺が新たな下呂イエローに……って、あれ、なんだこれ、このブレスレッド外れねーぞ?」
「えっ!? ちょっとアタシにもやらせてみて……あれっ? 本当だ、どうなってるんだろう……?」
アルカに続いてナトリも一緒になってブレスレッドを外そうとするが、それでも上手くイオウの手首からそれは外れてくれなかった。
「二人とも、次は僕が……」
続いてセオンも挑戦するが、やはりそれでも外れない。
「本当だ……もしかしてこれが戦闘スーツに選ばれてるってことなのかな……?」
三人が腕を組んで考え始めた頃、最初に吹き飛ばされたきり戦線を離脱していたイガッセが脇腹を抱えてやって来た。
「おそらくセオン君の言うとおりなのだろう……そんな奴でも明るく陽気な性格は天性のイエローとも言えるからね」
「なんだよ~! それなら別に俺だっていいだろ~!? なぁセオン! 俺だってイエロー向きの性格だと思わねーか?」
悔しそうに大声で頭を抱えながらセオンに同意を求めるアルカ。だがセオンは悪戯な笑顔でアルカをなじった。
「たしかに! アルカだけはこのイオウって人にも散々バカにされてたからね。これが同族嫌悪ってやつなのかも!」
「あっ! 言ったなセオン! くぉら! くすぐってやらぁ!」
「うわっと! 僕だってもうそう簡単には捕まらないぞ!」
飛び掛かるアルカを軽く身をひるがえしてかわすセオン。
「こら! 二人とも! 今はふざけてる場合じゃないでしょ!」
「「はい……」」
ナトリに叱られて二人は途端に小さく身を丸めるが、アルカだけはすぐにその視線を厳しくイオウに向けた。
「こうなったら、意地でもブレスレッドを奪い取ってやらぁ!」
「なんだか追い剥ぎみたいでヒーロー像とはかけ離れてる気もするけど……」
「アルカだし別にいいんじゃない?」
セオン、ナトリはそれを呆れた様子で見ていた。
「いや、でももし下呂イエローの戦闘スーツまで手に入るならこれはすごいことだよ? ぜひトツィギとしてはそうなってほしいくらいのところなんたが……」
イガッセだけが期待した目でアルカの背中を見守っていた。
しかしそれからしばらく、アルカが力任せにイオウの腕からブレスレッドを引き剥がそうとしていると。
「う……ぐ……」
気を失っていたイオウからそんな声が漏れた。
「まずいアルカ君! そろそろ意識が戻りそうだ! 離れなさい! ここは私がそやつの腕ごと断ち斬る!」
言うが早いかイガッセは引き抜いた剣をもって地に伏せたままのイオウの腕に斬り掛かった。
「っ! 変身っ!」
だが意識を戻したイオウが変身し、その場から力任せに飛びのくほうが一瞬早かった。
ただし、着地と同時に変身は解け、イオウはまた膝をついて胸を押さえた。
「ぐぅ……! オレっちとしたことが、気を失っちまってたのか……」
イオウは苦渋に顔を歪めながら周囲の状況を確認する。
「ふぅ……どうやら戦闘スーツは無事だったようだ……だが、くそ……深手を負っちまった……一度退却するしかないな……」
「逃がすかよっ!」
引こうとするイオウをアルカが追おうとするが、イオウはさらに力を振り絞ってもうひと跳躍をすると、投げ捨ててあった彼の専用武器ゲロガンハンマーを拾い上げた。
「うっ……! その武器は……!」
その武器の脅威を目の当たりにしていたアルカは思わず足を止めてしまった。そしてまわりも同様に迂闊には近づけない雰囲気のなかでイオウは舌を鳴らした。
「別に自ら投げ捨てた武器がなかったから負けただなんてダセェ言い訳をするつもりはねーけどよ……お前ら、ちょっとオレっちを怒らせちまったようだな」
その口調と表情は明らかに登場時のひょうきんさを失った、怒気のこもったものだった。
「いいぜ? この場は見逃してやるよ……だが次はこうはいかねーぜ? 完膚なきまでに叩きのめしてやるから覚悟しておけよな……!」
そう言って一同を鋭く睨むイオウ。
「へっ! なにが見逃してやるだ! 逆にこっちが逃がすつもりなんざねーってんだ!」
改めて表情を引き締めたアルカが一歩前に踏み出したときだった。
「待ってアルカ! 動いちゃダメ!」
アルカを止めたのはナトリだった。
「なんで止めるんだよナトリ! どう見たって相手は重傷だろ! 今度こそ全員で飛び掛かればあんな奴……!」
「ダメ……ダメなのアルカ……動いたら、アタシたち、やられちゃう……」
そう言うナトリは全身が震えていた。
「は? 冗談だろナトリ……?」
首を傾げるアルカであったが、そこへ同じようにセオンも震える声を掛ける。
「ナトリの言ってることは本当だよ……アルカ、ゆっくりと上を見て……?」
「セオンまで、こんな有利な状況でなにを……」
そこまで言ってアルカの言葉は止まった。セオンとナトリが震えているものの存在に気がついたのだ。
それは一同のはるか頭上から影を落とす強大な存在、巨大ロボだったのだ。
「ヒャハハハ……! これがオレっちのスーパーメカ! 『快楽雷鳴ゲロゲリヲン』さ!」
それを聞いても一同は息を飲むばかりで言葉が出なかった。
「いつの間にって言いたげだけどさァ……最初に言っただろ? オレっち、潜伏が得意だってさ。わかるだろ? つまりキミたちは最初からロックオンされていたってわけさァ!」
突如として頭上に現れた黄色を基調とした異形の巨大ロボ、ゲロゲリヲン。
全身は滑らかでぬめるような装甲に覆われ、黄と深緑が迷彩のように絡むその姿はカメレオンのようにしなやかであり、カエルのように不気味な対称性を持っていた。
両眼にあたるレンズが赤く不規則に点滅し、胴体中央では不気味な脈動を繰り返すコアが淡く光っている。長く伸びた四肢は柔軟性を備え、鋭利な爪を備えた手足が山肌を這うたびに地面は悲鳴のような音を立てた。
ただそこに存在するだけであらゆる音が消えたかのような緊張感が周囲を包み、それを見上げる者は一様に言葉を失うしかなかったのだ。
「さて、オレっちはね? 楽し~いことが何よりも好きなんだ……本当のことを言えばここでキミたちをプチッとしちゃうのも簡単なんだよ……? でもね、さっきも言ったけど今回は特別に見逃してあげる。別にキミたちに温情をかけるつもりじゃあないんだよ? 今のオレっちは全身が痛くて、完全な状況でプチプチを楽しめないからさ。理由はただそれだけ。わかる? キミたちはオレっちの気分で生かされるってわけ。それを忘れちゃあダメだよ?」
そう言いつつイオウは身体を引きずるように関所からゲロゲリヲンのほうへ向かって去っていく。
「それにオレっちはもう目的を果たしてるんだぜぃ……? トツィギがグリンシーに侵攻してきた目的を探ること。つまり原律石とやらを使って悪巧みをしようとしている秘密を暴いちゃった時点でオレっちの勝ちってことだったんだよね。ついでに関所もボコボコにできたし、さらにセオン君の正体まで暴いちゃったんだから、もうオレっち大活躍ってわけさ」
「チッ! 負け惜しみを言いやがって!」
アルカは悔しそうに拳を握るが、セオンとナトリがそれをなだめた。
そして動けない一同を満足そうに見渡しながらイオウは巨大ロボに乗り込んでいく。
「次に会ったときは今回の仕返しも含めてグッチャグチャに楽しんでやるから、そのつもりで待っていてくれよな……?」
そんなふうに捨て台詞を吐いて去っていくイオウを見ても一同は誰もが動けず、呆然とそれを見送ることしかできなかった。
お読みいただきありがとうございます。
拙作『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』
2026年1月6日 アマゾナイトノベルズさま より電子書籍化!
悪役令嬢が現代日本に逆転移!?
戸籍も、頼りも、お金も、住処すらない絶望的な状況。
しかも「人を一生愛せない呪い」まで掛けられていて……。
男性にも女性にも読んでほしい作品です。
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