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温泉戦隊バスバスター ☆ センターは草津グリーン  作者: nandemoE


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19/30

情報交換


 アマゾナイトノベルズ様より2026年1月6日配信開始!

 『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』


 悪役令嬢が現代日本に逆転移!?

 戸籍も、頼りも、お金も、住処すらない絶望的な状況。

 しかも「人を一生愛せない呪い」まで掛けられていて……。


 男性にも女性にも読んでほしい作品です。

 いよいよ明日、配信開始です!

 ぜひぜひ応援よろしくお願いいたします!



 関所の門を抜けると右手に木造の小屋があり、通行人向けの簡素な休憩所となっていた。


 中には粗末な腰掛けと、中央に薪をくべた囲炉裏があり、煙は天井の隙間からゆっくりと抜けていく。壁には通行記録の帳面が掛けられ、隅には水桶と木製の湯飲みがいくつか置かれていた。外の張りつめた空気とは対照的に、ここだけはわずかにぬくもりが漂っていた。


 道中、常に気を抜けなかったセオンたちはようやく一息つけたとばかりに安堵すると、そのまま腰が砕けたように動けなくなってしまった。


「ははは。いいよいいよ、動けないならそのままキミたちの話を聞かせておくれ」


 イガッセはそんなふうに笑いながら三人に温かい飲み物を提供し、同じように地べたに腰を降ろして三人の身の上話に耳を傾けたのだった。


「うん、信じよう。キミたちの言うことに矛盾はない……言葉を濁すような様子もない。セオン君、十六歳、ニツコゥ出身。アルカ君、十六歳、ニツコゥ出身。ナトリ君、十六歳、サラクシ生まれではあるがニツコゥで育った……と。約束どおり、キミたちの身元は僕が保証しよう」


 それを聞いてセオンたちの表情は明るくなる。


「「ありがとうございます!」」


「どうやらグンマーでも主人に恵まれたようだね。とはいえ大変な思いもしただろう。……まずは言っておくよ……トツィギへおかえり」


 迎え入れるイガッセの表情はとても柔らかかった。


「「ありがとうございます」」


「ここはただの関所とはいえ、最低限の事務はできるからね……明日までには必要な手続きを済ませておこう。キミたちもまだまだ疲れているだろうから、今日はここへ泊まっていくといい」


「僕たちが泊まってもいいんですか?」


「もちろんさ。ここは山の上だからね。平時では通行人もなかなか大変だから、元々簡易的な宿泊所も備えてあるんだよ。あまり立派ではないがお風呂もある。疲れを癒していきなさい」


「うおおおっ! 助かるぜー!」


「うわあ~! お風呂に入れるの、本当に嬉しいなぁ~!」


 アルカもナトリも息を吹き返したように喜んでいた。


「あ、でもイガッセさんはどうするんですか? ウミノツヤの人って言ってましたけど……もしかしてグンマーに来ていた隊の指揮をなさっているのではないですか?」


 セオンは心配そうに尋ねる。


「セオン君が心配することはないよ。戦利品は先にアシオ基地に送ったからね……私たちは遅れて来るかもしれない同胞たちを少し待ってからウミノツヤに向かうつもりだったのさ」


「そうだったんですね」


 セオンが納得する隣でアルカが何食わぬ顔で続ける。


「なぁ、イガッセさん。戦利品ってのは、あの原律石って石のことかい?」


「こらアルカ! そんなの聞いちゃダメでしょ! イガッセさんたち、遺跡で極秘任務だって言ってたじゃない!」


「あ、すまんナトリ……。つい気になっちまってさ……もしかして俺たち、知りすぎちまったってやつか……?」


 それを聞いてイガッセは笑った。


「そんなことはないよ。キミたちがトツィギに来る以上、そのうち自然とわかることだからね」


「そうなんですか?」


 セオンが問う。


「ああ。これはトツィギにおいても最近になってようやくわかってきたことなんだけどね。どうやら原律石には魔物を退ける力があるみたいなんだ」


「魔物を、退ける……?」


「そう。人類は長い間、魔物の脅威に怯えてきただろう……? 特にトツィギの魔物は強いからね。この辺はまだマシなほうだけど、山の深くに入っていけばとんでもなく強力な魔物がゴロゴロといるんだ。こっちとしては死活問題ってわけさ」


「だ、だけどよ……遺跡じゃあ兵器になるとかなんとか、俺にはそう聞こえたんだけどな……」


「あっはっは。アルカ君は意外と耳が聡いんだねぇ……まぁ、あのときは私たちもあれだけの原律石を前に気分が高揚していてね。つい大袈裟に言ってしまっただけなんだが、要するに、原律石を大量に使って強力な魔物をグンマーのほうへ押し出してやれば大打撃を与えられるんじゃないかって、そう考えているんだよ……まぁ、現状じゃあ集落を襲わせないための魔除けに使っている程度だから、そう上手く魔物を操れる見込みなんてないんだけどね」


「なるほど……そういうことだったんですね……」


「聞かれちゃったから仕方なく答えたけど、一応、これはグンマーの人には内緒だよ?」


 サラッと笑って語るイガッセの説明に三人は簡単に納得した。


「ところで私からも一つ聞いていいかな? と、いうよりもこれが本題なんだけどね……遺跡で戦ったときにセオン君が使った力のことなんだけど……あれはどう見たって……」


 イガッセの表情から緩みが消えた。


「単刀直入に聞こう……キミはバスバスターなのかい?」


 セオンは返答に困っていたが、やがてゆっくりと口を開く。


「信じてもらえるかはわかりませんが……実は僕にもよくわからないんです。あの緑色の……草津グリーンというらしいんですが、あの戦闘スーツも、あの遺跡の奥で見つけたばかりだったんです……」


「いや、信じるよ……。なにせ私たちがグリンシーに侵攻した本当の目的はそこにあったんだからね」


「「やっぱり……」」


「少し前のことになるが、トツィギにも優秀な科学者がいてね……彼女はバスバスターが放つ特別なオーラのような存在を見つけたのさ。そしてそれがどうやらグリンシーからも微量に放出されていることがわかってね。もしやと思い、私たちはそれを探していたという訳さ……まさか本当に六人目のバスバスターが出てくるとは思わなかったけどね」


「たしかになぁ。トツィギとしちゃあグンマーに全部バスバスターを取られちゃたまんねーもんなー!」


「ちょっとアルカ! 言い方、気をつけなよ!」


「あ! いっけね!」


 ナトリに叱られてアルカはまた口を噤む。


「あはは……耳は痛いが、実際はそのとおりだからね……だけど私としては本当に安心したよ。六人目のバスバスターがグンマーにつかなくてよかった、と……」


 そこでセオンは苦笑いをした。


「ああっと、誤解はしないでおくれよ? さっきも言ったけど、セオン君を軍事利用しようというつもりはさらさらないんだ」


 イガッセは少し焦った様子で取り繕っていた。


「んじゃあ一応聞くけど、セオンを殺して奪おうとか考えてないよな?」


「ちょっとアルカ!」


「わかってるってナトリ。こんなことを聞くのは失礼だよな? だけどこれだけは言っておくぜ? セオンに何かしようってなら、相手が誰だろうと俺はなりふり構ってらんねぇ」


「アルカ……」


 アルカの強い決意を持った表情に今度はナトリが言葉を失っていた。


 そしてイガッセはアルカの言葉を重く受け止めたあと、ゆっくりと微笑んで口を開いた。


「アルカ君は本当に友達思いだね……それだけでキミたちがこれまでお互いによく助け合って生きてきたのがわかるよ。だけど安心してほしい。それだけはないと断言する」


「そう言い切る理由を聞かせてもらおーか」


 アルカは物怖じせずに踏み込む。


「簡単だよ。そんなことをしてその後に適格者が現れなかったらどうするんだい? 箱根レッドがいい例じゃないか……誰も着れない戦闘スーツに意味なんかないのさ。ましてや草津グリーンは今までその存在すら明らかになっていなかった……適格者にどんな条件が求められているのか誰も知らないんだ。そんなリスクはさすがに負えない。となれば、現所有者のセオン君がどんな人物であるかが重要になってくるわけだが……これに関して言えば、所有者がキミであってよかったと思っているくらいだよ」


 それを聞いてアルカとナトリは嬉しそうに顔を合わせた。


「な~はっは! おっさん! 見る目があるじゃねーか!」


「こらアルカ! 呼び方っ! 失礼にもほどがあるよっ!」


 漫才のようなアルカとナトリのやり取りを苦笑いで見守りながらイガッセは続ける。


「正直にいうと、伝説でも五人と言われていたバスバスターになぜ六人目がいたのか、それは私にもわからない。だけど実際に戦ってみてキミの力が本物だということもわかっている……となると、やっぱりどうしてもアレの存在が気になってくるな……」


「「アレの存在……?」」


「そう。それはバスバスターの各色に対応した巨大ロボの存在だ」


「巨大ロボ! 俺もグリンシーで見たぜ! あの青い竜みたいな奴か!」


 アルカが身を乗り出すように聞く。


「それはきっと登別ブルーが駆る深冷蒼龍ノボリュオンだろうね」


「もしかして、あんな奴がほかにもいるってことか?」


「そうだね。しかもその姿や性能は色にもよって大きく異なっているんだ。赤は炎の恐竜、青は氷のドラゴンと言った具合にね」


「へぇ~! じゃあ緑の巨大ロボもいるってことだよな?」


「だろうね……だけど、残念ながらそれはまだ見つかっていない。私たちがオーラを測定した結果、グリンシーの村のほうにあるのは間違いなさそうではあるのだけど……」


「なるほど。だから遺跡だけじゃなく、村のほうでも何かを探していた様子だったんだな」


「ところが、そっちは上手くいかなかったらしい。予想以上にキーリュからグンマー軍が戻って来るのが早くてね……これもおそらく深冷蒼龍ノボリュオンが予想以上に強かったせいなんだろう……くそっ! サウナ……あの裏切り者め……っ!」


 イガッセは悔しそうに顔を歪めた。


「サウナ……その名前は僕たちも知ってます。たしか登別ブルーの人で……僕たちの兄にも等しい人、アカギの死を言葉一つでなかったことにした人です」


「俺も思い出したぜ……許せねぇ! アカギの命を簡単に切り捨てやがった奴!」


「私もハルナお姉ちゃんから聞いたよ……絶対に許せなかった……!」


 三人は怒りを露わに震えた。


「そうか、キミたちにも色々あったんだな……実を言うと登別ブルーは私たちにとっても因縁のある相手でね……その昔、彼女はトツィギ側で研究者をやっていたんだ」


「もしかして、さっき言っていた優秀な研究者というのが……?」


 セオンが控えめに尋ねる。


「うむ。今から約十年前、そう、おそらくはキミたちがグンマーに連れ去られた襲撃のときだね……そのときサウナは研究者としてニツコゥにいたんだ。当時はまだトツィギ側の人間としてね」


「どうしてそいつはトツィギを裏切ったんだ?」


 アルカはやや怒ったような表情で問う。


「詳しい理由はわからない……だが彼女は当時、グンマーから攻めてきた登別ブルーをあらゆる手段を使って撃退したんだ。すると今度は奪った登別ブルーの戦闘スーツにサウナ自身が認められてね、彼女が新たな登別ブルーとなった……それからしばらくしてのことさ、彼女がトツィギを捨ててグンマーに寝返ったのは」


「チッ! そんな裏切り者がよくグンマー最高指導者の側近なんかやってるぜ!」


 アルカは不満とばかりに舌を鳴らしてそっぽを向いた。


「もしかしたら戦闘スーツがトツィギを裏切ったことと何か関係があるのかな……? 僕には登別ブルーとなったことで人が変わったみたいに聞こえますけど……」


「どうだろうね……セオン君はどうなんだい? 草津グリーンになって、なにか自分の意識を乗っ取られそうになるだとか、そういう自覚症状はあるのかい?」


「いえ、そういうことはまったくないですけど……」


「ならやはり彼女には彼女の考えによって裏切る理由ができたと考えるべきなんだろう……彼女は昔から天才すぎて何を考えているのかまったくわからない人物だったからね」


「それにしたって、なんでそんなに簡単に物事を割り切れるんだろう……やっぱり冷たい人なのかな……」


 セオンは力なく呟いた。それに釣られるようにアルカとナトリも重く俯く。そんな三人の様子を見ていささかの逡巡を経ながらもイガッセは口を開く。


「どうだろう、キミたちを見ていて思ったことがあるんだが、一つ聞いてもらえるかい?」


「はい……どんなことでしょう?」


「キミたちはグンマーに対してあまりいい感情を抱いていない……違うかい?」


 三人で顔を見合わせたのち、順番に答える。


「そのとおりです。……もちろんすべての人が憎いわけじゃない。僕たちを育ててくれたグリンシーの人たちは本当にいい人たちばっかりで、正直、トツィギに向かって来るときもみんなとの別れが辛かったくらいなんです……」


「でも、グリンシーはグンマーのなかでも片田舎の小さな村にすぎなかった。子どもの俺たちにはそんな優しい村が世界のすべてのように見えていたけど、実はそれがほんの少数で、グンマーの上層部がクソだってことを知っちまったんだ……」


「アタシは今のグンマーを変えたい! だって、そんなところにハルナお姉ちゃんを一人で残しておけないよ……!」


「……キミたちの想いは痛いほど伝わったよ」


 三人の決意を見てイガッセは重く頷いた。


「始めに言っておくと、これは強制ではないよ? だけどもし、キミたちがキミたちに酷い行いをしてきたグンマーに対して思うところがあるのなら、これからはトツィギの一員として何かできることを探してみてはどうだろうかと私は言いたい」


「それは……僕たちに戦え、ということでしょうか?」


 セオンは慎重な面持ちで聞き返す。


「完全に違うと言えば嘘になる……でも、キミの存在はキミが思っている以上に大きいんだよ……そして、なにも戦争とは敵をすべて滅ぼしつくすのが目的ではないんだ。やり方によっては、早期に、そして無闇に被害を出さずに終わらせることができると私は考えている」


「それは……それは僕たちも同じ思いです。できることなら戦争を終わらせたくて、僕たちはトツィギまでやってきたんだ……」


「なら、私たちはわかり合える。手を取り合うことができるんじゃないかな」


「はい……でも、僕たちはまだ、何をどうしたらいいかがよくわかっていなくて……」


「そうだね……でもいいんだ。焦ることはない。キミたちのペースでゆっくりと考えたらいいんだ……。故郷に戻ってゆっくり考えてみるのもいいんじゃないかな。そして、私たちとともに戦ってもいいと思えたときは気軽に私を訪ねてくれて構わない。私はウミノツヤでキミたちが来てくれるのを待つつもりさ」


 あくまで強制せずに優しく微笑みかけるイガッセを見て、三人は少し緊張をほどいた。


 知り合って間もない間柄ではあったが、その誠実な立ち振る舞いに触れ、わずかながらに信頼が芽生え出したような雰囲気があった。


 しかしそんなほのかな雰囲気を裂くようにして、その陽気な声は突然に休憩所内に響いたのだった。


「いっやァ~! とっても素敵なお話だったねェ~……ヒャハハハ……!」



 お読みいただきありがとうございます。


 拙作『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』

 2026年1月6日 アマゾナイトノベルズさま より電子書籍化!


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 配信日:2026年1月6日
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