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温泉戦隊バスバスター ☆ センターは草津グリーン  作者: nandemoE


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破られた関所


 アマゾナイトノベルズ様より2026年1月6日配信開始!

 『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』


 私の作品が電子書籍化しました!

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 やがて山道をかき分けて抜けた先、岩肌の間にひっそりと設けられた関所が見えてきた。


 しかしその関所はもはや機能を失っており、粗末な木製の門は片方が折れ、焚き火のあとには踏みにじられた食器や血の跡が残っていた。


 簡素な板張りの詰所は砕かれたように潰れ、足元では重く残る無数の靴跡だけが無情さを主張していた。


 激しい戦いだったのだろう。グンマー側と見られる獣皮の衣類を着た者、トツィギ側と見られる簡素な鎧を身につけた者。多くの兵たちの身体が無造作に、至るところに打ち捨てられている。なかにはすでに獣によって食い破られている者の姿もあった。


 そこにはもう人の気配はなく、ただ打ち捨てられた廃墟が残るだけだった。


「ひでぇ……こりゃあ全滅か……?」


「そんな、酷い……」


 アルカもナトリも呆然と立ち尽くしていた。


「まだ生きている人がいるかも……!」


 そう言って駆け出そうとするナトリの肩をセオンが掴んで引き止める。


「待ってナトリ!」


「どうしてセオン!? もしかしたらあのなかに……!」


 振り切ろうとするナトリに対してセオンは力のない表情で首を横に振って見せた。


「もう何日か経過してる」


「そんな……」


 膝から崩れ落ちるナトリ。


「僕だって早く駆けつけたいけど、こういうときこそ慎重に状況を判断したほうがいいよ」


「おっと! それならもう少し待ったほうがいいかもな……見ろよ、グリンシーのほうから正規の街道を登ってくる奴らがいるぜ……? ありゃあトツィギ兵だ」


 遠くのほうを手をかざして見ながらアルカが言った。


「どうやらグリンシーに攻め込んだ奴らが撤退していくようだな……さすがにキーリュのグンマー軍が兵を出せば、あの数じゃ耐え切れねーよ」


「でもたぶんトツィギとしてはそれでよかったんだろうね……撤退するとはいえ、目的は果たしたって感じの顔つきだ」


 セオンも目を細めながら関所までの道を登ってくるトツィギ兵たちの姿を見ていた。なかには荷車を馬に引かせている兵の姿も見受けられる。その荷台に乗せられているのは石だ。


「遺跡で戦った人たちが言ってた……原律石って、いったいなんなんだろう?」


 荷車に積まれた石の山を見つめながらセオンが首を傾げる。


「そういえば奴ら、これだけの原律石があればグンマーを踏み潰せる兵器になるとかなんとか言ってなかったか?」


「そういえば言ってた! 意味はわからなかったけど、たしかにアタシにもそう聞こえたよ!」


「あの石が兵器に……? いったいどういう意味なんだろう……?」


 三人は疑問を抱きながら、大事そうに戦利品の石を運ぶトツィギ兵の一団を見ていた。


「バスバスターの戦闘スーツをグンマーに独占されて、頭がおかしくなっちまってる……なんてことはないんだろーな?」


「あのトツィギ兵たちの誇らしげな顔を見る限り、そんなことはないんだろうね」


「してやった! って感じだもんねぇ……」


「トツィギはトツィギで、なにか考えがあるんだろーな」


 やがてトツィギ兵の一団は堂々と無人の関所を通過してトツィギ方面へ向かって進んでいく。


 途中で転がったグンマー兵の死体を蹴り、気に入った装飾品などがあれば剥ぎ取ったりする兵も見受けられたが、ただの通過点にすぎなくなった関所はその行為を黙って受け入れるしかなかった。


 そしてセオンたち三人もまた、それを黙って見ていることしかできなかった。


「奴ら……行ったな」


 トツィギ兵の一団が去ったあと、アルカが小さな声で言った。


「そろそろ僕たちも関所に寄ってみよう!」


「うんっ!」


 セオンたちは山の斜面を滑り降りるように崩壊した関所へと駆け寄った。


「誰か! 誰か生きている人はいませんかー!」


「俺たちは敵じゃねー! 声が出せなきゃ物音を出してくれ!」


「少しなら回復もできます! 誰か!」


 三人はそれぞれ関所の付近で声を上げて生存者を探した。けれど結局反応はなく、再び壊れた門のところに集まって肩を落とした。


「やっぱり遅かったか……」


 セオンがそう言ってため息をついたときだった。


 崩落した簡素な板張りの詰所の中から何かを叩く乾いた物音がした。


「物音だ! 詰所の下敷きになってる人がいるんだ! アルカ、瓦礫をどかすの手伝って!」


「おう! 任せろ!」


 セオンとアルカは素早く潰れた詰所へと駆け寄り、二人で協力しながら手際よく残骸をどかし始めた。そして残骸の除去が進むと中に倒れていたのは見知ったグリンシーの民だった。


「ダンベーおじさん! 待ってて! ……原始の息吹、万象を抱く淵源となりてかの者の傷を癒せ! ワイルド・ヒール!」


 ナトリが目を閉じて手をかざすと、そこから不思議と柔らかい光が放たれてダンベーの身体を包み込む。


 ダンベーの身体は瓦礫に潰されて骨折でもしていたのか真っ青なアザができている箇所もあったが、それらも含めて瞬く間にナトリの原創術によって回復された。


「ヒュー! 相変わらずすげぇな、ナトリの原創術はよー」


「僕たちもここに来るまでの間、何度も助けられたもんね」


 アルカとセオンはその腕前に呑気に感嘆をもらしていた。ナトリは回復の原創術を施し続けながらもそんな二人を厳しく睨む。


「二人とも、なにボサッとしてるの? 傷は癒えてもおじさん衰弱してるんだよ!? もう何日も瓦礫の下だったんだから! お水と、何か栄養になるもの!」


「お、おう! すぐに準備するぜ! ナトリは回復に専念していてくれ!」


「もう少し詰所の瓦礫をどかせば何か食料が出てくるかもしれない!」


 その後も三人は世話しなく動き、やがてダンベーの意識もはっきりとしてきたのだった。




 崩れかけた関所の柵に背を預け、ダンベーはセオンたちの顔を改めて見るなり大きく安堵のため息をついた。


「オメェさんたちはハルナちゃんとこの……ありがとうなぁ。三人とも、わざわざグリンシーから助けに来てくれたんだべか?」


 その疑いのない言葉に三人は気まずそうに顔を合わせた。


「そうか、そういうわけでもないのか……いや、しかしそうなるとトツィギ兵が攻め込んでいったグリンシーはどうなっただか……? オラの妻や子どもたちは……? うっ!」


 無理に身体を動かそうとしたダンベーは苦しそうに顔を歪ませた。


「まだ急に動いちゃダメだよおじさん。アタシ、まだそんなに完璧に治せるわけじゃないし」


「いやぁ、十分助かっただよ……命の恩人だ、オメェさんたちは」


 再び柵に背を重く預けて空を仰ぎながらダンベーは言った。


「いったい、なにがどうなってんだべ。トツィギの奴ら、いつもの気のいい連中じゃなかっただ……急に押し寄せてきてオラたちの話も聞かずいきなり……あっと言う間の出来事だった……あの様子じゃあグリンシーまで攻めていったんじゃねぇべか?」


「はい。ちょうどキーリュでの戦闘が激しくなっていて、グンマーの戦力もそこに集中していたので奇襲を受けたグリンシーはかなり混乱に陥っていました」


 セオンが答える。


「村の連中はどうなっただか?」


「僕たちも逃げるように飛び出してきたので、詳しくはわかりません……」


「そうかぁ……オメェさんたちも、大変だったなぁ……」


「でも、トツィギ兵は村を制圧するというより何かを探していた様子でしたから、無闇に人を殺めることはなかったように思います」


「それを聞いて安心しただ……だが、探すっていったい、なんのことだべか……そんな大層なモンはグリンシーにはないはずだがなぁ……?」


「もしかしたらよぉ。トツィギの奴ら、俺たちが遺跡で見つけた……」


 そこで途中まで言いかけたアルカの脇腹をナトリが突いて止めた。なんだよとばかりに振り向いたアルカに対し、無言で首を振ってさらに制止するナトリ。


「たぶん、トツィギの目的は石だったと思います」


 再びセオンが答える。


「石、だべか?」


「ついさっきも引き上げていくトツィギ兵が荷車に大量の石を積んでいました」


「なんだがよぐわかんねぇが、そんなにすごいモンなんだべか?」


「僕たちにもわかりません……ですが、たしか『原律石』と呼んでいました」


「原律石……この辺じゃあ、とんと聞かねぇ言葉だべ」


「そうですか……」


 場には少しの間、沈黙が訪れた。


「オメェさんたちは、これからトツィギさ向かうべか?」


 静かに問うダンベーと困ったように顔を見合わせるセオンたち三人。


「ええよ……なにも言わんでも、なんとなくわかるべよ……オメェさんたち、元はトツィギのモンだったからなぁ」


「すみません……グリンシーのみなさんにはすごくお世話になったのに……」


 セオンは申し訳なさそうに頭を下げた。


「謝るこたぁねぇ。オラも子どもがいる身だ。オメェさんたちのことはいつも可哀想だと思ってたんだぁ……そうか、とうとう故郷に帰れることになったんだなぁ……よかったなぁ」


「ダンベーさんも、みんなも奴隷の僕たちに本当によくしてくれて……本当にありがとうございました」


「なぁに、気が向いたらまたいつでも帰ってこいよ。グリンシーはオメェさんたちの家でもあるんだ。それに、オラの命の恩人だかんな……ちゃんと礼もしてぇだ」


「でも、僕たちトツィギの人間で……今は戦争もしているのに……」


「なぁに言ってんだ。たしかに今は戦争さしてるが、なにも下々のモンまで全員がいがみ合ってるわけじゃねぇべ。話してみりゃあ気の合う奴らだっているし、近くに住んでりゃあ交流もあるべ……表立っては言いにくいがなぁ」


「そうなんですか?」


「そうさ。戦争はしていても商人を始め人々の流れだってある……この辺だって強い魔物が出りゃあ、あっちの関所のモンと協力して退治してきたんだ、今までだって」


「それは知らなかったです」


「世の中にゃ、正義と悪、白黒つくってモンばっかじゃねぇんだ。覚えておくといいべ」


「「はい」」


 ダンベーはにっこりと笑って見せ、セオンたちは元気よく頷いた。


「そうだ。なんの役に立つかはわからんが、これを持ってくといいだよ」


 そう言ってダンベーは腰につけた小袋から手のひら大の魔物の牙を一本取り出した。


「これは昔、向こうの関所のモンと一緒に退治したゴブリンジェネラルの牙でなぁ。そりゃあ強ぇ魔物だったんで、記念に一本ずつ分けあって持ってたんだぁ。奴らが攻めて来たとき、こいつを見せて思い止まってもらおうと詰所に取りに戻ったんだが、詰所ごと潰されちまってあのザマよ……ま、結果的にはそのおかげで命拾いしたって訳だが」


「そうだったんですね……」


「お互いになにか相手の集落に用事があるときはこれを見せ合って、こっそりと用を足してたんだがなぁ……今となっちゃあ、もうそういうわけにもいかねぇだろうから、これはオメェさんたちにやるだ」


「い、いいんですか? そんなに大切な物を……」


「いいさ。もうオラたちが持っていても仕方ねぇ……売れば多少の金にはなるべよ」


「ありがとうございます」


 セオンは礼を言って受け取り、腰につけた小袋の中にそれをしまった。


「あの、ダンベーさんはこのあとどうされるおつもりですか……?」


 セオンが心配そうに切り出した。


「心配すんな。回復してもらったおかげでもう平気さ……これでもこの辺りの魔物くれぇ簡単に退治できるべ。一人でグリンシーさ帰れるだよ」


 ダンベーはドンと拳で胸を叩いた。


「すげーな……俺たち、ここに来る途中、けっこう苦労して魔物と戦ってきたんだけどな……」


 アルカが苦笑いをしながら言う。


「まだまだオラも若ぇモンには負けねぇだ。侮ってくれるな」


 ダンベーは豪快に笑い飛ばして立ち上がると、セオンたち三人の肩を励ますように叩いた。


「それじゃあオメェさんたち、気をつけて行くだよ」


「「はい!」」


 ダンベーとセオンたちは笑顔を向け合って、互いに別の方向へと歩き出した。



お読みいただきありがとうございます。


「だんべー」は群馬の方言っぽいです。

だけどアニメとかでよく聞く「〜だべ」の田舎オジサン口調との関連性まではわかりませんでした。


ん〜、ま、いいべか。


さて、拙作『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』

2026年1月6日 アマゾナイトノベルズさま より電子書籍化だんべ〜!


下のほうに表紙とリンク貼っておくべ!

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