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温泉戦隊バスバスター ☆ センターは草津グリーン  作者: nandemoE


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変身! 草津グリーン!


 アマゾナイトノベルズ様より2026年1月6日配信開始!

 『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』


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 隠し部屋にアルカとナトリが遅れてやってきたとき、すでに中央の台座にはなにも残されていなかった。


「おーいセオン。なにかいいもんは見つかったのか~?」


「あ、うん。あるにはあったんだけど……」


 セオンは呆然としたままの表情でアルカとナトリのほうへ振り返った。


「たった今、僕の目の前で全部消えちゃったんだ……ううん? 全部この腕輪の宝石の中に吸い込まれていっちゃった感じ……」


「なに言ってんだお前? とうとう幻覚まで見え出したか?」


「ちょっとアルカ! その言い方は酷いよ! アルカだってもうセオンだけが聞こえる石の声の存在は信じたんでしょ!?」


「ま、まぁな……どうせさっきの隠し通路を見つけた手順だってそうなんだろ……?」


「ちゃんとセオンの話を聞いてみようよ。セオンも一度落ち着いて話してくれる?」


「あ、うん。そうだねナトリ。……ごめんね、僕、つい夢中になっちゃったみたいで」


 セオンは苦笑いで中央の台座から離れ、二人の前まで戻ると道中の疲れを癒すように座り込み、ここであったことを詳らかに話し始めた。


「なるほどねぇ……にわかには信じられん話だが、俺たちはお前が嘘をつくような人間じゃないこともよーく知ってる。さてはて、いったいどうしたらいいもんか」


「それが本当なら、セオン、温泉戦隊バスバスターの一員になっちゃったってことだもんね?」


「うん……どうやら僕の緑色のスーツは『草津グリーン』っていうらしいんだけど……」


「それもまた石の声が教えてくれるってか?」


「そう」


「あのよ、言いにくいんだが、石の声に騙されてるってことはないのか? だって変じゃねーか。バスバスターって五人の戦隊なんだろ? ずっと昔からそう言われてるって話なんだろ? なのになんでここでグリーンなんて出てくるんだ」


「赤、青、黄、桃、金……実際に今まで確認されている戦闘スーツだけですでに五色……だからセオンの緑を入れたら六色になっちゃうよね」


「もしかして、今のバスバスターのなかに偽者が混じっているとかか……?」


「や、やめてよアルカ。そんなおっかない話!」


 ナトリが顔を青くして言う。


「じゃあ文明崩壊前、実はもう一人、謎の戦士がいたとか……」


「そ、そんなの考えたってアタシたちにわかる訳ないよ……」


「だが俺たちの知ってる話とじゃ辻褄が合わねーのはたしかだぞ? そうなるとやっぱ、疑いたくなるのは石の声のほうじゃねーのか?」


「たしかに……セオンには悪いけど、石の声って、そもそも何者なの……?」


 アルカとナトリの不安げな視線がセオンに向く。


「わからない……物心ついたときから僕には自然に聞こえていたことだから……」


「さっき、いつもは石から語りかけてくるとか言ってたよな?」


「うん。でも不思議なんだ。この世界には声のする石と声のしない石があって……」


「もしかしてセオンが集めてる石って、声のする石だったの?」


「うん……普段はあんまり見かけないくらいには珍しいんだけどね」


「それってさ……もしかして、トツィギ兵がグリンシーに攻めてきたのと何か関係があったり……しないのかな?」


 ナトリがおそるおそる切り出した。すると二人ともハッとした顔になる。


「そういえばセオンさっき、遺跡自体が語りかけてくるとか言ってたよな?」


「うん……バスバスターの一色が眠っていただけでもすごい遺跡だっていうのはわかったけど、もしかしたらこの遺跡自体もすごいのかな……」


 三人は顔を合わせる。


「グリンシーの村のほうじゃなく、なんでこんな山奥にトツィギ兵が集中しているのかと思っていたけど……やっぱりこれはなにかあるって考えるべきだろうね」


「六色目の戦闘スーツ、語りかける石と遺跡……トツィギ兵の狙いはこれか!」


「ね、ねぇ……だとしたらアタシたち、ここでノンビリしてるの、まずくない……?」


 三人の背筋に冷たいものが通り過ぎたときだった。遺跡の入口のほうから数人の男たちの声が響いてきた。


「うっひょ~! これ、全部が原律石じゃねーか!」


「これだけの原律石があれば……もうグンマーなんて軽く踏み潰せる兵器になるぞ!」


「奴ら原始人すぎて、このお宝の価値にまったく気づいてねーんだもんなぁ!」


「本当に土人には呆れるぜ! 科学のかの字も受け入れようとしねぇんだからな!」


 湿った石の床に足音が響き、遺跡の奥へとトツィギ兵の影が忍び込んできた。機械の探査音が低く唸り、薄明かりに浮かぶ壁の紋様を青白く照らす。


 セオンたちは息を殺し、閉じた隠し扉の裏に身を潜めていた。ナトリの肩が小刻みに震え、セオンは拳を固く握って彼女の手を押さえる。


 ほんの数歩先、トツィギ兵のブーツが苔を踏みしめ、しぶとく何かを探す視線が岩の隙間を這う。原律石と呼ばれた鉱石の粒が脈動を止めたかのように沈黙し、時間そのものが凍りついたようだった。


「ん? なんだここ……何かが擦れたような跡があるが……」


 それを聞いただけで三人は息を飲んですくみ上がる。


「やけに新しい跡のようにも見えるな……ん? よく見れば苔やほこりの上に誰かの足跡があるぞ……どこに向かって……こ、これは隠し通路か!」


 隠し扉のすぐ反対側からそんな声が聞こえた。


 それを聞いた三人は扉の裏で声を殺し肩を跳ね上がらせて驚いた。そしてそれによって端を切ったとばかりに真っ先に動き出したのはアルカだった。


「うわあああぁぁぁっ!」


 自分を奮い立たせるように大声を上げ、目の前の扉を突き破るようにして広間に向かって飛び出すと、すぐ目の前に迫っていたトツィギ兵を肩からぶつかって弾き飛ばし、そのまま槍を構えて広間の中央まで駆けた。


 槍を無闇やたらに振り回しては大声でトツィギ兵を威嚇するアルカ。どうやら遺跡内に入ってきたトツィギ兵は最初に突き飛ばして尻餅をついている兵を除いて三人おり、いずれもバラバラになって広間の壁の模様などを調べていた様子だった。


「オラァ! かかってこいよ! 俺が相手だぁっ!」


 トツィギ兵たちの視線を十分に集めたことを確認してからアルカはまた駆け出し、遺跡の入口のほうへと向かって行った。


「アルカ、もしかして僕たちのために囮になるつもりじゃあ……」


「だ、だめだよセオン! 一人で行かせちゃダメ!」


「わかってる! 相手は大人四人だけど、今度は僕たちにだって武器があるんだ! 勝ち目がまったくない訳じゃない!」


 セオンとナトリは覚悟を決めた表情で頷きあい、武器を構えて同時に広間へと駆け出した。


 しかしそのとき、セオンたちの目の前にある状況はさらに悪くなっていた。遺跡入口のほうへ向かっていたアルカの足は止まり、冷や汗を垂らしながらジリジリとあとずさりを始めている。最初に視界に入ったトツィギ兵四人のほかにもあとから遺跡内部に入ってくるトツィギ兵によって完全に入口は塞がれており、どこにも逃げ場がない状態となっていたのだ。


 広間の中央に身を寄せあったセオンたち三人はトツィギ兵十名によって完全に包囲された。


「いきなり飛び出してくるんで驚いたが、なんだグンマーの子どもたちか……と言っても、遺跡で秘密基地ごっこをするような歳でもあるまいに……」


「かわいそうに……俺たちだって見逃してやりたいのは山々なんだが……」


「原律石の話を聞かれてしまったとあっては運が悪かったとしか、なぁ……」


「すまんなぁ……せめて捕虜として生かしてやれればよかったんだが、俺たち、今は極秘任務中なんでなぁ……」


 最初は三人を憐憫に見ながら口々に語るトツィギ兵たちであったが、セオンたちの持った槍を見るなり徐々に表情が変わってくる。


「ん? だがこの子たちの持った槍、我々の持っている槍と同じだぞ」


「なんでそんな物をグンマーの子どもが持ってるんだ……? まさか……?」


「おいお前たち、その槍、いったいどこでどうやって手に入れたんだ?」


 疑いの色が濃くなったトツィギ兵の目を見てアルカは悔しさを滲ませる。


「くっそぉ……大人たちはいつもそうだ。どうせ俺たちの言うことなんか信じねーんだろ……? 俺たちだって、俺たちだって好きで戦ったわけじゃねーんだ!」


 それを聞いてトツィギ兵はさらに表情を厳しくし、三人に対して四方八方から槍を構えた。


「まさかとは思ったが……すでに同朋を討った敵だったか……」


「と、なるとそれなりに戦えるぞ? 子どもとは言え油断はするなよ」


 すぐにでも飛び掛かるような構えとなった兵たちを見て背中合わせのセオンたちはさらに怯んだ。


「くっそぉ……な、なんか手はねーのかよセオン……」


「アタシたち、ここで殺されちゃうのかな……」


 二人の顔が絶望に沈んだとき、セオンはまた何かに導かれるように宙を仰いだ。


 そしてその声を聞き終えたあと、静かに背中越しの二人に語った。


「二人とも、僕が合図をしたら地面に伏せてくれるかな」


「そ、それでどうにかなるのかよ!?」


「そんなことしたら槍で刺されちゃうよ……!」


 アルカとナトリはそれぞれ前を向いたまま不安げに尋ねる。


「大丈夫……また石の声が聞こえたんだ。僕を信じて」


 そんな二人を落ち着かせるように静かな声でセオンは言った。


「ったく、意味がわかんねーけど、それしか方法がないんなら、やってやる」


「わかった……アタシ、セオンを信じてるから!」


 三人は背中合わせのまま頷きあって、それぞれ互いの前方からにじり寄るトツィギ兵と向かい合うように武器を構えた。


「なにをゴチャゴチャと……みんな、隙を見せるな! 一気にいくぞ!」


 そしてとうとうトツィギ兵が一斉に、全方位から三人に飛び掛かったときだった。


 セオンは一瞬の躊躇いもなく握った左拳を高々と天に突き上げ叫んでいた。


「変身! ババンバ・バンバン!」


 すると左腕に装着したブレスレッドから緑の光があふれ出し、セオンの身体を包み込んでいった。


 光は渦を描くように彼の服装を身体のラインに密着した緑の戦闘スーツへと変化させていく。特殊な装飾を施した緑のヘルメットが頭部をすっぽりと覆い、胸元には草木を象徴するような紋章が浮かび上がる。


 風のように爽やかで、それでいて大地とも深く繋がるような強い力が全身にみなぎっていくのを感じ、セオンは無意識に拳を握りしめた。身体の奥から力を放つように鼓動が地響きのごとく響いていた。


「温泉戦隊バスバスター! 草津グリーンッ!」


 そう叫ばずにはいられない心臓の高鳴り。今まさに迫りくる兵たちを前にしても手足を伸ばした余裕のポージングを決め、流れるような動作で攻撃モーションへと移行する。


「二人とも伏せて! 湯もみ槍・セントスピアァァッッ!」


 そして一瞬にして手の中に出現した槍の柄を握りしめ、身体ごと回転するようにそれを一周振り回すと、それによって生じた衝撃波が放射線状に広がり、全方位から迫りくるトツィギ兵たちを根こそぎ薙ぎ払った。


 吹き飛ばされた兵たちはみな等しく広間の壁に激突し気を失い、戦闘の決着は一瞬のうちについたのであった。



お読みいただきありがとうございます。


ネット小説ではもっと早めに物語の立ち上げを行うべきなのでしょうが、丁寧に書いていきますね。

ふぅ……ようやくタイトルの草津グリーンが出てきた……。



拙作『現実世界に追放された悪役令嬢はモブを育てる』

2026年1月6日 アマゾナイトノベルズさま より電子書籍化です!


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 配信日:2026年1月6日
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