わがままな夢
六本木ヒルズがまさに爆誕した年に
私は産まれた
青い風が吹いていたという
赤い砂が舞っていたという
産まれ落ちたた直後から
鮮やかな記憶が残っている
なにものも許せないという
曲がらない針金で囲った想いだ
深い夜だったという
静かな冬だったという
罪ばかりが街中に転がって
まるですこし前に終わった
世紀末のようだったという
そして夢をみていたのを憶えている
幸せのために生きる意味を探す世界
転がり落ちそうな悪の道を歩まない人生
夜よりも明るい闇の中で微笑んでいる部屋
すき透るメロディーに纏わりつかれる
悲しみのカケラもないやさしい夢だった
今まで生きて来て
六本木ヒルズへ行ったことはないけれども
なにか彼女とは同志のように想い合っている
彼女が闇の中で聳え立つ切なさが
私の切なさを吸い取ってくれているのだ
六本木ヒルズには行ったことがないけれども
いつか死ぬ夜には行ってみたいと希っている
そして夢をありがとうとお礼を云って
彼女のほおにキスをして逝ってみたいと
すこしわがままな夢を抱いて今夜も眠るのだ