日曜日の朝からレベル上げ
翌日日曜日、朝起きてすぐダンジョンに入った俺は、昨日の探索中に見つけていた階段を登り最短ルートで四階に行き、四階の攻略開始。
四階では三階とは違って回廊に付属した部屋がなくなり一階や二階と同じようなフロアになっていた。
三階は宝が多いボーナスフロアだったのかもな。
大きな回廊の迷宮であることは変わらないが、植物の量がさらに増えてより入り組んでいる。石の壁も一部崩れて自然の岩壁が見えている部分があったり、奥深くに来た感じがする。
そんな四階には、コボルトの上位種がいた。
[コボルトエリート]という名前で、コボルトと似ているが、毛が黒っぽくなっていて、武器が木の棒から石の剣になっている。
こちらも石の槌で戦闘開始――だが、まずは一発攻撃をわざともらう。
コボルトチェック、やっておこう。
相手の振り下ろした石剣に、わざと当たってみる。
だが、受けた左手の甲は切れることなく赤い線が浮かんだだけだった。
「なるほど、[耐久力C]とってよかった。輪ゴムを手の甲でパチンとやったくらいのことだ。チェックできたことだし、倒させてもらうよ」
俺は攻撃をしかけていく。コボルトエリートはコボルトよりも動きも俊敏になっているが、しかし俺はそれについていくことができていた。
レベルアップで基礎能力も上がっているんだ。やはりレベル。レベルが全てを解決する。
そしてとどめの一撃を胸に打ち込み、完勝。
その時には、チェックの時に受けた傷も自然治癒完了していた。
やはり耐久重視は正解だったな。
これで安心して四階のモンスターとも戦える。
四階はコボルトエリートやコボルトの集団など、コボルトがたくさんいるフロアだった。
特にコボルトは一度に5,6体の群れで回廊を徘徊しているので、普通なら結構厄介だろう。それだけの数の攻撃を全部見切るなんて非現実的。
集団で囲んで殴るっていうのは、シンプルだけどそれ故に厄介なんだよな。
だが今の俺はコボルトの攻撃をノーダメージにするほど防御力があるので、何体いようがまったく怖くない。
0に何をかけても0。
攻撃をくらっても気にせず倒していけるので、むしろ最高の狩り場だ。
しかも一匹ごとに武器のボーナスで経験値が+6されるから、強い奴を一匹倒すより、弱い奴をたくさん倒す方が武器のボーナスをいかすことができる。
だからコボルトの集団ほど俺にとっておいしいモンスターはいないんだよね。
ここで一気に狩って狩って狩りまくってレベリングしてやるぞ。
俺は目を皿にしてコボルトを探しながら、回廊を進んでいた。
さながらコボルトハンターだ。すべてはレベリングのため、コボルト君達には諦めて経験値になってもらいたい。
邪魔な芝を払い、崩れた瓦礫を乗り越えて、回廊を進み、右に左にと歩いて行く。
コボルトの集団を見つけたら倒し、再び遺跡の中を進んで行く。
三日目となりダンジョンに慣れてくると、色々気付くこともあるな。
歩くときの足音が石に反響していい音を出すこととか、遺跡内部に生えている花が甘い香りを放っていること。その花の蜜を吸っている蝶々までいるってことも。
こんな平和な場所でじっくりレベル上げをしていく休日の午後。
いいねぇ、こういうのが一番平和でいいねぇ。
『ァ……ワ……ェ……』
だがまったり歩いていた俺の邪魔をするように、異音が聞こえてきた。
ざわざわと、まるで人混みのような音が、石の壁を何度も反響しながら遠くから聞こえてきている。
「これって……もしかして、他の探索者?」
ダンジョンにはギルドがあるという話を聞いたことがある。
大勢の探索者が協力してダンジョンでの活動を有利に進めていくための組織で、中には結構な大所帯のギルドもあるらしい。
そんな大人数の人達が一所に集まってるのかも。
好奇心がくすぐられた俺は音の方へと吸い寄せられるように歩いて行く。
音の方へ進むにつれて、石壁に錆びたような赤茶けた色あいが混ざってきた。
石を割って生える植物に茶色く枯れたものが目立つようになってきた。
なんか妙な雰囲気だ。いや~な空気を感じるというか。
でもこんな変化があるのは面白いし、音も大きくなっているし、この先に何があるか確かめずに引き返すことなどできるはずがなかろうよ。
「キーーーーーー!」
「ギャギャギャギャ!」
「フォーン!フォーン!」
音の出所の広間に到着した俺の耳に聞こえたのは、絶対に他の人間の声なんかじゃない鳴き声だった。
回廊の先にひしゃげて開きっぱなしになった扉があり、そこの先はドーム型の超大広間になっていて、そこにうるさく鳴き声をあげるコボルトの大群がいたのだ。