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2日目、2階目

 翌日の朝。


 今日は土曜日で高校は休みだが俺はいつも以上に早くから起きていた。

 もちろん、ダンジョンに行くためだ。


 でも準備する前にもう少しだけ布団にいさせてくれ。

 五分だけ布団に入ったままスマホをいじると、昨日のダンジョン探索者のSNSが更新されていた。


「危険な兎と戦った。へー。レアドロを見つけたい。なるほど。そのために今日は人気ひとけのないところを探索するぞ。俺のゲートの周辺は人気ないからおすすめ」


 と独り言しながら見ていた。

 レアドロか、せっかくダンジョンに入ったなら手に入れてみたいよな、やっぱり。


 レアドロ。

 レアドロップと呼ばれるモンスターがごく稀に落とすアイテム。


 この世界にダンジョンが出現した当初、ダンジョンに入ったのは興味本位の者達だった。

 しかしダンジョンの中にはモンスターという脅威があり、怪我人や死人が出たことから徐々に下火になり、公的にも危険だからと既知のゲートを封鎖――もちろんゲート自体を封鎖はできないので、周囲を立ち入り禁止にする措置しかできないが――する流れになっていった。


 だが、ある時を境に状況は変わった。

 一人の日本人がダンジョンからレアドロップと呼ばれるアイテムを持ち帰ったのだ。


 基本的にはダンジョンの中のものは外には持ち出せない。 

 手に持ったままゲートを出ようとしても強制的にインベントリに収納され、インベントリは再びダンジョンに入るまでは使えない。


 しかしレアドロップは違ったのだ。

 ダンジョンの中でしか存在できないと思っていた特殊な物を現実に持ち帰れたので、その調査を大学と企業が連携して行った。

 その結果、新たな物質が生み出された。


 それが、今では無限電池と呼ばれているものである。

 その名の通り、充電する必要もなく永遠に電圧を保ち続ける電池。これまで世界に存在し得なかったもの(科学者によると正確には10の10乗年ほどの時間が経つと消えるらしいが、人間の尺度では無限だろう)。


 ダンジョンで手に入るレアドロップは現実に持ち帰ることができて、現実の技術を一変させることがわかり、またそのアイテムを見つけた最初の一人は巨万の富を手にした。


 これが切っ掛けとなり、個人も企業も国も、ダンジョンに再び熱視線を送るようになったのだった。

 ここから最初を超える第二次ダンジョンブームが始まった。


 ……が、しかしそれも長続きはしなかった。

 いくら稼げようが、結局のところモンスターやその他の危険があることに変わりはない。金のために怪我や命のリスクを冒す人はそう多くはない。命を賭けて一攫千金を狙うより、安全・安定の中で普通の収入を得る方を選ぶ人がほとんどだったというわけだ。


 そしてダンジョンブームはまたも下火になり、今では行く人はいるけれど決して多くはない、という現状に落ち着いている。


 そういった事情があるので、レアドロップはダンジョンの探索者にとって特別な意味を持っている。お金という現実的な意味の他にも、ダンジョン探索者の成功の象徴としてのトロフィー的な意味あいが。


 玲奈達のパーティもこれを見つけたいのは当然だな。

 俺もいずれはこの目で実物を見てみたい。

 ダンジョンの新入り同士お互い頑張りたいもんだ。


「といっても、そう簡単に手に入るものじゃないだろうし、今はそれよりも地道にレベリング。安全安心安定のダンジョン攻略をするために」


 ラッキーなことにちょうど今週末は予定が何もないので、体力の続く限りダンジョンに潜っていられる。

 朝起きてもベッドのそばにしっかりと残っている青色の霧をくぐり、俺はダンジョンへと再突入した。




「うん、同じ場所だな」


 石造りの遺跡に種々の植物が繁茂している回廊。間違いなく昨日と同じダンジョンだ。

 そして昨日のスタート地点と同じ場所に俺はいる。


 毎回ここからのスタート。初心忘れるべからずという教訓かな。

 今日はいきなり次のフロアを目指そう。

 階段は昨日見つけているし、そこまでの道筋に目印も残している、すぐ行ける。


 実際サクサク進んだ。

 ダンジョンって正解ルートだけ進んでいくと、案外短いことが多いよな。


 そして上り階段を見つけたが、そこには別のものもいた。


「昨日の[ダンゴロムシ]だな。ちょうどいい」


 転がって高速タックルしてくる巨大団子虫モンスター。

 会いたいと思っていたんだ。


 ダンゴロムシは後を向いていて俺に気付いていない。

 先制攻撃できそうだけど、それでは検証ができない。


 なので、地面に落ちてた小枝を投げつけてみた。

 お、こっち向いた。怒ってる怒ってる。そして体を丸めて……来た!


 昨日戦った時と同じように、高速で転がってきて、跳ね上がり顔面を狙ってくる。俺はそれに対して、前と同じく両腕でガードする。


「おっ。……これはこれは」


 全然効いてない。

 昨日は痛くて痣になるし、痺れて少しの間武器をまともに握れなかったけど、今は腕に衝撃を感じはしたけどそれだけで、痛みも痺れもない。


 ほら、こんな風に即武器を握ってダンゴロムシのお腹をフルスイングできる。


『ゴローーーーー!』


 あっという間にダンゴロムシは光と消えて撃破完了。


「そして検証も完了。[耐久力D]のスキルはEの時に比べて格段に防御力アップしている。スキルのランク上げる価値はかなり高いと言えるな。複数のスキルをつまんでいくより、一つを伸ばす方が良さそうだ……スキルポイントが多くかかることを除けば」


この耐久力なら、次のフロアに行っても問題はないな。一階のモンスターが楽勝なら、二階のモンスターも十分相手どれるのが道理だろう。

 俺は安心して階段を上っていった。




 一層二階。


 二階の光景も一階と同じように回廊と植物が織りなす遺跡だった。

 しかしダンジョンじゃ奥に進むほどモンスターが強いのがセオリーだから、同じに見えても気をつけなければ。


 目印を忘れずに進んで行くと、案の定モンスターの種類が一階とは変わっていた。

 耳の先に鋭い爪がついたウサギのモンスターや、棍棒を持った獣人、コボルトなんかも現われた。

 また一階にいた[ワンダーベイン]が3,4体同時出現するなど、既存のモンスターも数が増えるという形でパワーアップして襲いかかってきた。


 だがしかし、耐久力をあげたことが功を奏して、致命傷を受けることはなく堅実に倒していって経験値を稼ぐことができている。

 新モンスターの経験値はそれぞれウサギが3でコボルトが4。


 さらに、素晴らしいことに二階を探索している時に宝箱を見つけた。

 それはもういかにもな宝箱で、開くと[ウッドメイス]、木の棍棒が入っていた。

 新しい武器にテンションも上がる……けれど、なぜまた棒。王道のロングソードとかはないんですか?


 まあ木なら蔓よりは強いだろうし、こっちを装備武器にしておくか。


 スマホから投影される画面を操作して[ウッドメイス]を装備に登録する。

 装備に登録しておけば、普段はスマホのインベントリ機能でデータとして収納しておき、戦闘に入ると自動的に手もとに現われるようになるので、重い物を持ち歩かずにすむので、探索が快適だ。


 こうして手ぶらでいられるので、ダンジョンをサクサク進んで行くことができた。

 サクサク進んで、モンスターをサクサク探し出す。そしてサクサク倒して経験値を稼いでいけ。



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