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3人パーティ ★

タイトルに★があるエピソードは別視点です。

 弓の弦が引き絞られ、空気を切る音を立てながら矢が射られた。

 耳の先が刃になっているモンスター、エッジラビットの群れの最後の一匹は鼻をひくっと動かすと飛び跳ねて避ける。


「玲奈さん、追撃お願いします」

「うん! まかせて!」


 そこに向かって、栗色のロングヘアを揺らしながら走り込んで行ったのは石の剣を手に持った女探索者。

 真剣な目でエッジラビットの弱点を見定めると、裂帛の気合いとともに剣を振り下ろした。


「はあぁぁぁっ!!!」


 剣の一撃は兎のモンスターに命中し、ダメージを受けて地面を転がる。

 それを見て女探索者は表情を緩めた。


「やったね、今回も私達の大勝利」


 仲間達の方へ振り返って、にっこりと笑う女探索者。

 だがその後ろでは危険な兎が音もなく起き上がり、耳の刃を振り回して女探索者へと跳びかかろうとしていた。


「玲奈さん! 後!」

「え? きゃあああっ!」


 耳の刃が切りつける。


 と思われた寸前、土砂の塊が跳びかかった兎に直撃し、撃ち落とした。

 エッジラビットはきゅーんと鳴き声を上げながらふわふわの尻尾の毛だけを残し、光となって消えていった。


「油断したらダメっていつも言ってるでしょ~? 玲奈ちゃ~ん」


 間延びした声で言ったのは、杖で肩を叩いている背の高いぼさぼさ頭の男。


「わ、ありがとっ! 助かったよ篠倉さんっ」


 自分が狙われていたことに気づき、玲奈は胸をなで下ろし、あらためて周囲を確認する。今度こそモンスターがいないことを確認して後衛の仲間達の元へと駆け寄った。


 風早玲奈、篠倉しのくらりょう景山かげやまれん


 最近ダンジョンに入った新人の3人組は、パーティを組みダンジョンの第一層、四階を探索していた。

 彼女達はちょうど同時期に同じ入り口を利用していたことで、ダンジョン内でばったりと会い、一人よりは複数の方が探索しやすいだろうと自然とパーティを組む流れになり、そのかいもあってこれまでのところはなかなか順調。

 着実に奥へと歩を進め、最高記録は第一層五階まで行ったことがある。


 今もエッジラビットの群れをコンビネーションで撃破したところだ。


「助かった~、篠倉さんがカバーしてくれて。一人だったらブスリと耳に刺されてたところだよ」

「パーティの力よ、絆の力。なあ、景山ちゃん」

「はあ。まあ、そうですね。一人よりは複数の方が安全かつ効率的にダンジョンを攻略できるのは間違いありません」


 景山は装備していた弓をインベントリにしまい、クラス ★レンジャー 固有の特殊能力[藪斬り]を発動し一時的な草刈り鎌を生成すると、前方の回廊を塞いでいる茂みを斬る。


 パーティ最年少ながら一番達観した景山の様子に肩をすくめながら、最年長の ★自然魔道師 篠倉は玲奈に目配せして後に続いた。

 そして ★ファイター 玲奈も、目にかかった髪を横に流し、ダンジョンを先へと進む。


「私達って結構強くなってきたねー。レベルも結構上がってきたし、みんなクラスの力も使いこなしてきてるし!」

「はは、そうだね~。景山ちゃんの弓矢も一撃で急所にズブリとやれるようになったしね」

「まあ、初対面のレベル1の時よりはさすがに能力がアップしてますしね。弓術のスキルもとってますし」


 このダンジョンではスキルを習得することでその能力が大きく上がることは、探索者ならば周知のことだ。

 景山も★レンジャーが習得できる・弓術Dのスキルによって弓の威力・精度を大きく上げている。


 だがそれだけではなく、景山達も言っている通りレベルを上げること自体でも基礎能力が上がっている。素早さや膂力が上がったことで、弓を強く素早く射ることができるようになっているのもあった。


 もちろんスキルによる特定の能力向上>>>レベルによる全体的な能力上昇ではあるが、だからと言ってレベルの影響が無視できるというわけでもない。

 現に魔法系スキルしかとっていない篠倉でも、レベルアップで素早さや体力などが上がっていることにより、この階層のモンスターの動きにも最低限対応することができるようになっている。

 もし彼が1レベルでここに来ていたら、あっという間にエッジラビットに懐に潜り込まれ、耳の刃の一撃でやられるということになっていただろう。


「これだけ強くなってきたなら、レアドロもそろそろ手に入ったりして!」


 回廊を歩きながら玲奈が明るい声で言う。


「そう簡単ではないと思いますけど。何せレアドロップは多くの探索者が追い求めてるもの。おいそれと見つかるようなものは、もう誰かに発見されているでしょうし」

「景山くんそれ正論過ぎー。でも景山君だってレアドロ見つけたいんでしょう?」

「それはまあ、もちろんいずれは手に入れたいですけど」

「じゃあさあ……そうだ、人が少ないところなら、見つかる可能性高いってことだよね。我ながらナイスアイディーア! そっちの方に探索行ってみようよっ」

「待ってください、玲奈さん。そろそろ時間が」

「あ、そうか。今日結構あちこち探索したもんね」


 走り出しかけたところで景山から指摘されて時間を見た玲奈は、たしかにと頷いた。


(私や篠倉さんは平気としても、景山くんがあんまり遅くなるのはまずいよねー。ここからゲートまでダンジョンを戻るのにかかる時間と、ゲートから出た後に、ゲートがあるマンションの一室から家まで帰るのにかかる時間を考えたら……うん、もう帰らなきゃか)


「よし、それじゃ続きは明日ね! 土曜日だしガッッッッチュリ行くぞよ」

「はい」

「へーい」


 そして3人のパーティは、ダンジョンを引き返していった。

 いつかレアドロを手に入れられればいいと思いながら。

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