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 ダンジョンに入った俺は、自分のステータスを確認した。

 そこには次のように表示されていて。


───────────────────

[名前] 灰崎はいさき 楓真ふうま

[レベル] 1 

 NextEXP 1 / 10

[所持スキル]

・耐久力E

[クラス]★E

───────────────────


 [名前]は、そのまま俺の本名だ。


 [レベル]は1。始めたばっかりだから当然だな。

 次のNextEXP1 / 10っていうのは、そのまま次のレベルに上がるまでに必要な経験値だろう。最弱のモンスターを倒して1経験値が入ったと。


 そして[所持スキル]だ。

 このダンジョンに入った者は、最初に個人によって異なるスキルとクラスを付与される。これはダンジョンで生き残るための力で、その人の個性によって決まるとも言われてるけれど、法則は謎。


 スキルはそんな特殊な力で、これによって剣術が使えたり魔法が使えたり、忍び足ができたりと色々あるんだけど、俺は[耐久力E]か。

 これはその名の通り体が頑丈になるっていうスキル。ダンジョンではそもそも身体能力が上がるけど、そこからさらに頑丈さを底上げできるってことだな。そのランクEだ。

 このスキルのおかげでさっきの蔓のモンスターの攻撃を受けても、なんともなかった。


「でも、少し地味か」


 できれば華麗な剣技とか、炎を操る魔術師とか、せっかくファンタジーな力を得られるダンジョンに入ったんならそういうことしたかったな。


 とはいえ、実用性を考えるとこれも決して悪くない。

 どんなゲームでも打たれ強くて困ることってまずないし、死にステになることもない。だから耐久力を上げるのは絶対腐らないスキルだと思う。

 地味だけど。


 最後に[クラス]。

 それはダンジョンに入った人が最初に与えられるその人の根本的な特性。能力の基礎。


 ★ファイター なら身体能力が高く、武器の扱いに長け、また武器攻撃に関するスキルをレベルアップで覚えるようになり、★呪術師 ならば敵に呪いをかけて弱体化したり麻痺や毒など状態異常を与える効果が一段と強力になり、それに関するスキルを覚えられる。


 ゲームでいう職業やクラスとかそういうもので、各人にダンジョン内での個性的な特性を与え、また成長の指針になる重要な要素となっている。


 それが俺は ★E となっている。


 Eって何だ。

 スキルが耐久力Eだけど、それとは関係ないよな。

 クラス名がないのにランクだけあるとか意味わからないし、これはクラス名がEってことなのは間違いない。


 ダンジョンが出現した初期の頃は、ダンジョンに入った人が自分のクラスの報告なんかをSNSに色々出してたけど、Eなんて見た記憶がない。

 俺は何者なんだ? 

 E……イー……いい……。


『ギュッギョッ』


 その時、奇妙な鳴き声が聞こえてきて俺の思考は中断させられた。


 スマホ画面から顔を上げるとさっきの蔓のモンスター、ワンダーベインが回廊の先から俺に向かって来ていた。しかし今度は蔓を束ねた手足をどたどたと動かして四足歩行で突進してきている。


 二足歩行じゃなくこういう移動もできるのか、なんて感心してる場合じゃないな。

 早速さっきの武器を使わせてもらおう。


 俺はモンスターからドロップした[ベインロッド]を手に取り身構えた。

 スマホのインベントリを操作すると、収納した道具はいつでもすぐに出して使える。ダンジョン外でも使いたい神機能だけど、ダンジョン外に出るとこの手の機能はスマホから自動削除される。残念。


 棒を握りしめ、モンスターが突進してくるところにあわせて――上から叩きつぶす!


 タイミングはぴったりで、蔓のモンスターは俺に突撃を当てる直前、地面にしたたかに叩き付けられた。

 さっきと同じく光となって消えていくが、今度は後にアイテムは残らない。

 さすがに、何もドロップしないときもあると。


「武器もあって一撃だったな。これで落ち着いてステータスの妙なクラスを考えられる」


 俺は再びステータスを見た。


───────────────────

[名前] 灰崎はいさき 楓真ふうま

[レベル] 1 

 Next 3 / 10

[所持スキル]

・耐久力E

[クラス] E

───────────────────


 さてこのEだが……ん?


 あれ、レベルの項目のところのNext3 / 10。

 次のレベルまでの必要経験値だけど、なんで3なんだ?

 あの蔓のモンスターをさっき倒した時は経験値1だったよな。

 で、今もう一匹倒したらなぜか経験値が3になってる。


 本当なら+1されて経験値2のはずだ。それなのになぜか余分に1増えてる。


 増えるのは嬉しいが、おかしい。

 今とさっき何が違う?


 俺は自分の握っている蔓の棒を見た。

 これを装備して敵を倒したかどうか、違いはそれだけだ。


「あ、そうだ。たしかインベントリにいれたものなら詳しい説明が見られるんだったか」


 最初の敵から手に入るアイテムだから何も特別なことなんてない武器だと決めつけていたけれど、それが間違いだったのかもしれない。

 棒をインベントリに入れて、詳細説明の項目をタップして性能を確認する。


[ベインロッド]

・これは武器だ。

・(エンチャント)装備して敵を倒すと経験値追加


「装備して敵を倒すと経験値追加。これだ」


 この武器でモンスターを倒したから経験値が+1されたんだ。

 謎は解けた、しかし序盤も序盤で経験値が増えるなんていう特殊効果がある武器が手に入るか?


 (エンチャント)という表記がある。

 マイク○とか他のゲームにもあるけど、後から追加で付与した特殊能力を表すことが多いよな。だとすると、元はただの棒だけど、後から経験値増加を誰かが付与したということになるが……。


 誰が付与した?


 当然、俺しかいないよな。


「ってことは……ありえるのはクラスの力か? スキルはどうみても経験値増加と関係ないし。つまりEのおかげで経験値が増えた。Eで…………あっ、『E』XP」


 EXPといえば経験値のこと。そして俺のクラスは[E]。

 つまり、経験値の頭文字ってことでは?

 さらに言うと、Enchantの頭文字もEだし、まさに今の俺の状況ぴったり言い表してる。


 わかった、つまりはそういうことだ。


 手にしたものに経験値を増やすような特殊能力を付与してしまう、そんな特性をもったクラス経験値を稼ぐことに特化したクラス。それが俺のE。


 これはいい……のか?


 正直良いのか良いじゃないのかはわからない。

 レベルが多少高くはなるんだろうが、それがファイターの身体能力補正や魔術師の魔法威力補正のようなプラス効果を上回れるほどかどうかは未知数だ。


「ただ……俺の趣味にはあってるな。作業ゲーは嫌いじゃない」


 効率のいいレベリング方法を探し出すのも、ダンジョンの華。

 いい稼ぎ方を見つけてガンガンレベル上がってる時って脳汁出るものだ。


 その補助ができるこのクラスはダンジョンをこつこつ楽しむにはもってこいだろう。


「そうとわかれば、早速レベリングの始まりだ」


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