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第132話 火星野球・聖夜決戦 決着

 試合は五回の表。火星チームを翻弄し続けていた僕の魔球が破られ、原宮高校に絶体絶命のピンチが訪れる。同点のランナーが一塁。そしてバッターボックスには、火星最強のプリンセス――ヴェリナ・マーズ。ここまで一度も抑えられていない強打者だ。


 捕手の古新開がタイムを取る。再びマウンドに集まる僕たち内野陣。そこへ、ルナ・ベネット先輩がベンチから伝令として駆け込んできた。


「みんな~、日美子監督から伝言を持ってきたわよ~」


 そう言って先輩が手にしていたのは、なぜか和紙に筆文字で書かれた手紙だった。徳丸会長がそれを受け取り、さっと目を通す。


「一体何なのかしら?」次の瞬間、般若面の下で、さやかがにやりと笑った。


「白岳君……私と長谷さん(日美子)で、貴方にもう一度、最強の力を授けるわ。受け取って頂戴!」


「本当ですか!?ぬえを超えるような存在が召喚できると?」


「そう……そのためには生贄いけにえが必要なの」


「へぇー、野球で生贄って?」ルナが首を傾げる。


「ほほほほほ……生贄は貴女よ、ルナさん」


「え?」


「時間がないわ! 儀式を始めます!」


「えーん! どういう事ですか!?」


 戸惑うルナの背後に回り、さやかがその豊胸に両手を回す。


『もみもみ もみもみ もみもみ』


「いや~ん!」ルナ先輩が恥ずかしそうに身をよじる。


「偉大なる“(ノイズ混じりの音声)”よ。 この駄牛娘の豊満を供物とす! 我らに力をお貸しください!!」


 スピーカーが割れたような音と共に、球場の電光掲示板が一瞬ブラックアウトした。


「やめてぇぇー!現代にない儀式ぃー!!」


 その瞬間だった。心なしかルナ先輩の爆乳がほんのわずかに小さくなり、さやか会長の背後に巨大な霊的存在が出現する。圧倒的な霊圧が呉二河球場を包み込み、観客席の応援旗が一斉に逆風でなびいた。


「これでヨシよ!白岳君……あのプリンセスに目にもの見せてあげなさい!」


「あっ……胸がちょっと軽くなった」ルナが呟く。


「よかったな。肩こりが少し解消されるぞ」政畝が冷静に言う。


「ルナ先輩の胸……無駄にしません!」僕が強く誓う。


「えへ……いいなぁー」古新開が羨ましそうに呟いた。


「ヒロ!いつまで先輩の胸を見てるのよ!(怒)」麗が古新開を睨む。


 こうして再び守備位置へ。強大な力を背に受け、僕は新たな魔球を繰り出す用意を整えた。


 ◇◆◇


 バッターのヴェリナに向かい合い、一塁ランナーを牽制しつつ投球動作に入る。その時だった。背後の巨大な霊圧が具現化していく。古代の鎧兜を纏い、憤怒の表情をした荒神――『大魔神』が、僕の背後に降り立つ。地を割るような重圧が、マウンドの土を波打たせた。風が逆巻き、観客席の客の帽子が吹き飛ぶ。


 神の力を宿し、僕のボールが唸りを上げる。大魔神が腰の蛇行剣じゃこうけんを抜き放ち、その刃をボールと同調させる。白球が閃光の刃と化した。


「これは!」ヴェリナが驚く。


「だが打てる!」ヴェリナが渾身の力でスイング。


 キィーン! ジャストミートしたかに見えた――が、僕のボールは彼女のバットを両断していた。ボールは勢いよく古新開のミットへ。主審ロボが冷徹に宣告する。「ストライク」。


 ベンチの日美子監督が両腕を突き上げ、叫ぶ。


「見たか! これぞ大魔神投法だいまじんとうほう怒刃球どじんきゅうじゃ!」


「くっ!この期に及んでまだ抵抗するか!しぶとい!」ヴェリナが悔しげに唸る。


「凄い!これは勝てる!」僕は確信した。


 しかし――その時、捕手の古新開が呻き声を上げる。


「うぅっー……!」


「どうした!?」


「ヤバイぜ……この球……俺も斬られるんだが」


「なんだって!?」


 僕がタイムを取って駆け寄ると、古新開のミットが血に染まっていた。


「あと二球行けるか?」


「要は真剣白刃取りだ。任せろ!必ず取る。……死んでも、俺はボールを落とさねぇ!」


「すまん!頼りにしてるぜ!」


 再び投げ込む怒刃球。ヴェリナは新しいバットでミートするが、またしても両断!古新開が身体で受け止め、血を吐きながらも立ち上がる。


「おいおい……この球……味方に死人が出るぞ……」


 2ストライク。あと一球。だが――投球フォームに入った僕の心が、一瞬ためらった。親友・古新開を殺すわけにはいかない……。ボールは中途半端な力で放たれた。


「しまった!!」


「今度こそもらったわ!」ヴェリナがフルスイング一閃!


 カキーン!!


 快音が青空に響き渡る。一瞬、誰もが打球の行方を見失った。高く上がったボールは大きなアーチを描き、バックスクリーンへ。ヴェリナはホームランを確信し、ゆっくりと歩き出した。


 ――その時。 「ぽすっ」 球場全体が息を呑んだ。


 空中にいたのは、白岳製家事用アンドロイドのボディを持つ妖怪アマビエ様・波多見遥だった。両足の「ジェット推進装置」を全開にして空へ舞い上がり、打球をダイレクトキャッチ!


「一丁あがり~」遥が呑気な口調で言う。


 主審ロボが即座に判定。「アウト」。


「えぇぇー!あのセンターおかしいでしょー!」ヴェリナが絶叫する。


 主審ロボが淡々と答える。「ボディはロボットですが、ちゃんと魂はあるのでルール上OKです」


 どよめく呉二河球場!僕は続くバッターを「打たせて取る怒刃球」でゲッツーに打ち取り――勝利をもぎ取ったのだった!


 ◇◆◇


 勝った瞬間、呉の街が揺れた。大歓声が球場を超えて鳴りやまない。


「古新開! 大丈夫か!」


「おおっ……なんとか生きてる。凄かったなー大魔神。さすがルナ先輩のおっぱいを犠牲にしただけのことはあるぜ……ガクッ」


「古新開~!!死ぬなぁー!」


「大丈夫よ。ちょっと医務室でシメてくるから」


 麗が古新開を肩に担いで去っていった。(お手柔らかにしてやってなー)


 その後……両軍が整列し、礼を交わす。


「ヴェリナさん……火星野球、凄かったです」


「ヤスアキ殿下……完敗です。決闘まで仕掛けて負けるなんて……火星の民に顔を合わせられませんわ」


「そんな風に言わないでください。機会があればまた試合しましょう。今度は地球ルールで」


「はい……きっと、また」


 僕と彼女は固い握手を交わした。その手は冷たくも、確かな温もりを持っていた。


 ――こうして火星野球・聖夜決戦は、僕らの勝利で幕を下ろした。そしてこの日から、地球は新たに「宇宙」と付き合うという歴史へ足を踏み入れるのだった。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!

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