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第118話 招かれざる男

 十一月のある日。なぜか僕たち原宮高校SF研メンバー──僕、光葉、ジェシカ、マリナ、古新開、麗(福浦は欠席)は、広島駅に集合していた。ジェシカの話では「ここにお忍びで大統領が来る」というのだ。


 ……だが冷静に考えてほしい。広島駅といえば県内随一の大ターミナル。利用客は一日何万人も。とてもじゃないが海外VIPを迎えるには無防備すぎる。しかも駅の中は、いつもと変わらない光景だった。旅行客、通勤客、学生……どこを見ても「VIPを迎える雰囲気」なんてゼロ。警察官すら見当たらない。中央改札口を出たところで、僕たちは半信半疑のまま到着を待っていた。


「本当に大統領が来るのかな? そんな雰囲気じゃないけど」


 僕がぼやくと、光葉が即答した。


「ヤスくん! お忍びだからじゃないの?」


 すると古新開がにやつきながら付け加える。


「越後のちりめん問屋のご隠居さんに扮装してるかもしれん」


 その場が笑いに包まれた、その時。ジェシカの耳元のインカムが小さく鳴った。彼女は頷きながら短く返答する。


「みんな……彼が来たわ。もうすぐ新幹線改札から現れる。たぶん……みんなリアクションに困ると思うけど、出来るだけ平静にお願いね」


「リアクションに?」


 全員が首をかしげた次の瞬間──。一人の男が改札を抜けてきた。周囲の乗客を押しのけるように、堂々と、ずんずんと歩いてくる。ジェシカが思わず姿勢を正し、敬礼したその人物は……僕たちの予想を大きく裏切る姿だった。


 広島駅に現れたその男は、どう見てもニュースやネットで見慣れた「世界を騒がせる老人」ではなかった。年の頃なら二十歳過ぎ。金髪と碧眼は確かにあの大統領と同じだが、若すぎる。どう見ても孫の世代だ。しかも背後には、ラフな服装だが鍛え抜かれた体格のSPらしき男を二人従えている。


 男はジェシカの出迎えを受けると、僕たちに向かって破顔した。


「HAHAHA!君たちか!原宮高校のスーパー高校生軍団!私は毎晩ジェシカ君の報告動画で君らをチェックしている! 会いたかったよ」


 この男がCIAを使って僕らの監視をしていたらしい。かなりの権力者なのだろう。


「はじめまして。白岳です。今日はよろしくお願いします」


 僕は心の中で突っ込みつつ、形式ばって自己紹介する。


「どうもです。部長の長谷です。ところで……今日はここに大統領がお忍びで来られるって西条さんから聞いたんですけど……やっぱり無理だったんですか?」


 僕の横で光葉が、遠慮なく首をかしげて尋ねる。男はにやにやしながら、さらに近づいてきた。


「君があの霊能力者の部長か! 実にキュートだ! 私の七番目の愛人に是非……」


「……」


 光葉が完全にドン引きした。背筋をのけぞらせて、距離を取ろうとする。ジェシカが慌てて割って入った。


「すいません。ここはやはり目立ちます。まずは移動を!」


「そうだな。ではジェシカ君……まずはお好み焼きから行こうか」


 男は当然のように別の私服SPに先導され、駐車場へ向かう。僕たちも、促されるまま後を追った。


 ◇◆◇


 市内の有名お好み焼き店のVIPルームに到着。男を囲んで席につくと、彼は一切ためらわずビールを注文し、得意げに語り始めた。


「フフフッ。諸君……私が誰だかわかるかね?」


 古新開が顎に手を当て、半分バカにしたように言う。


「まあ、偉い人の息子か孫なのか?」


 男はニヤリと笑い、宣言した。


「聞いて驚け! 見てひれ伏せ! 私が米大統領ドナルド・ポーカーだ!」


「は?」


 その場に微妙な沈黙が走った。真っ先に口を開いたのはマリナだった。


「どこのどなたか知らないけど、ポーカー大統領はお爺ちゃんだよ? 全然違うじゃない!」


 一同、全員の心の声が一致した瞬間だった。だが、ジェシカが鋭い声で制止する。


「みんな……落ち着いて聞いて。この方は本物よ。そして、この姿には理由があるの」


「まさか!?」


 光葉が僕の袖をつかむ。


「ヤスくん? どういうこと?」


 僕は重く口を開いた。


「大統領……あなたもサイボーグ化したんですね」


 その言葉に古新開が驚愕し、麗の表情が曇る。


「なんだと! マジかよ!?」


「人類のタブーに手を出したの!大国の指導者がそんなことをするなんて!」


 大統領は古新開らの言葉には意にも介さず誇らしげに笑った。


「そのとおりだよ、白岳jr。君の父上から提供されたサイボーグ技術で、このとおり私は生まれ変わったのだ。アンチエイジングだよ」


「今の姿はサイボーグ化による『若者モード』ということか!」


「そのとおり!フゥー!これで私はメンテナンスをしながら三百歳まで生きるのだ! 永世大統領になってな!」


 (……合衆国がうちの親父に資金提供していたのはこれが目的だったのか。この男は、このサイボーグ能力を使って、更に長期間・・超大国の支配者であり続けるつもりなんだ)


 僕の背中に冷たい汗が流れ落ちる。……この招かれざる男を、僕らはどう扱えばいいのか?

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!

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