第113話 参戦決定!
大騒ぎの末、ようやく落ち着きを取り戻したSF研メンバー。光葉は姿勢を正し、改めて生徒会からの挑戦状の内容と条件を伝え始めた。
「まず勝負方法なんだけど、呉市が主催するハロウィン仮装大会のステージパフォーマンスで優劣を決めようっていうのよ」
「呉市のイベント内容の情報は把握しているわ」
ジェシカがすぐに頷く。
「上位五位くらいまでランキングされるみたいね。より上位の方が勝ちってことかしら」
「呉市が用意する審査員が判定するから公平だろうって、会長は言ってたよ」
「なんだ! イージーじゃねぇか」
古新開が自信満々に腕を組む。
「俺と白岳の仮装能力。女子たちのタレント能力。瀬戸内のアイドルユニットにも負けんぜ!」
「それを言うなら、生徒会メンバーも美男美女揃い……しかも広報担当に、あのルナ・ベネット先輩も加わったんだ!」
僕が警告すると、古新開の顔色が一変する。
「なんだって!? あのルナ先輩が……だと? 手強い相手だな……」
「ねえねえ……ルナ先輩って、そんなに脅威なの?」
マリナが首をかしげると、古新開は目を細め、遠い目をした。
「おおー、あの胸囲は計り知れんほどの脅威だ……」
次の瞬間、麗が無言で立ち上がり、古新開の耳をギュッとつねり上げた。
「痛い!痛い!痛い! 何するんだー!」
「知りません」
冷たい一言。古新開は机に突っ伏して悶絶する。
その光景を軽くスルーしつつ、光葉が言葉を繋げた。
「それでね。生徒会が勝ったらSF研は生徒会の下部組織として、さやか会長の任期満了までお手伝いする。本来の活動は隙間時間で、と」
部室にざわりと緊張が走る。
「生徒会が負けた場合は、SF研のクラブ昇格と来年度予算を確約」
それは確かに魅力的だ。だが、次の一言が空気を凍らせる。
「ただし……勝負から逃げた場合は、廃部よ」
張り詰めた沈黙が広がる。僕は喉を鳴らしながら、さやか会長の冷たい笑みを思い出していた。
「──正直、この条件はどうかと思うの。さっきのヤスくんへの魅了もだけど、さやか会長は危険な気がするんだよ」
「万が一負けた場合は、現時点の部員全員が生徒会の下僕になる。福浦も例外じゃない」
「ニャンだって!?」
家猫姿の福浦が飛び上がり、尻尾を膨らませる。
「さやか会長は気づいてるよ。表向きは何も言わないけどね」
全員が押し黙る。重い現実がずしりと胸にのしかかるのだった。
◇◆◇
麗が淹れてくれた熱いコーヒーの香りが漂い、少しだけ空気が和らぐ。湯気を見つめながら、光葉が静かに言葉を続けた。
「パフォーマンスも楽しそうだし、これがリスクのない笑って楽しめる勝負なら、喜んでやるわ。でも、もし負けてみんなに何かがあったら、わたし……後悔してもしきれない。たかが同好会一つよ。最悪、解散してもいいと思う」
「光葉ちゃん、気持ちは分かるよ」
僕はカップを握りしめながら言った。
「あの人……僕のサイボーグ化や古新開の強化人間とかも、掴んで言ってきてるだろうし」
「だとしたら……ここで逃げても、追撃の手は緩まらないんじゃないか?」
古新開が鋭い目を光らせる。
「それは、勝負を受けて勝つことで、相手を黙らせるっていうこと?」
「そういうことだ。ことわざにもあるだろ? 『罠は掛かって踏み潰す!』」
「ヒロ……そんな故事由来は聞いたことないけど」
麗がため息交じりにツッコむ。
「まあ……虎穴に入らずんば虎子を得ず、くらいならあるけどな」
僕も苦笑しながら続ける。
その時、マリナがぱっと顔を輝かせた。
「勝てばすべてOKだよ! 光葉の降霊で、すごいパフォーマーを連れてきてさ。絶対勝てそうな大物を!」
光葉はふふふ、と不敵に笑った。その瞳には冒険者の光が宿っていた。
「ふふふふふ……みんな……実はわたし、あの生徒会というデンジャラスゾーンが気になって気になって。もうー、みんなが乗り気ならやっちゃおう! うちのメンバーなら、たとえ負けようと、生徒会には取り込まれない!そんな気がするし!」
(やはり……光葉ちゃんにスイッチが入ったか。会長の思惑どおりかもな。しかし、負けるか? このメンバーで……)
「ダーリンが賛成なら、私は全力でサポートするわ。練習の相手は任せて♡」
「じゃあ……やろう。そして、やるからには負けん!」
「「おお!」」
声が重なり、部室に熱がこもる。こうしてSF研は、生徒会からの挑戦状を正式に受諾したのだった。
◇◆◇
その後の話し合いで、パフォーマンスの指南役は──「マイケル・ジャクソン」に決定。演目もハロウィンらしく「スリラー」だ。光葉が日美子様の力を借りて、お札にマイケルの魂を込める。さて、誰に憑依してもらうか……みんなで喧々諤々と相談していると。ガラリ、と音を立てて扉が開いた。
「なんだ? お前たち、また変なことしてるんじゃないだろうな」
青山先生が腕を組んで入ってきた瞬間──僕と光葉の目が合った。
「とりあえず……先生でいこう」
「うん」
「ん? なんだ?」
訝しげに首をかしげる先生。その額に、僕はすかさずお札をペタリ。
「うぎゃぁああああ!」
先生は派手にひっくり返った。だがすぐに、すくっと立ち上がる。
──そして。
「フゥーー!」
甲高いシャウトとともに、軽やかにテーブルへ飛び乗ると、流れるようなムーンウォークを披露し始めた。
「おおぉー!!」
部室に歓声が響く。
青山先生は、無駄に色気のある腰振りからの指先のシャッ!トドメに華麗にポーズを決めて片手を天に突き上げた。ここに、地獄の特訓が幕を開けるのだった。
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