表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

104/135

第102話 仁義なき戦い・宮島編

 僕の投石を合図に、紅葉谷公園は修羅場と化した。


 金星人と原宮高校SF研メンバーの、文字通り「仁義なき戦い」の幕が上がる。金星人たちは、まさか自分たちに正面から挑んでくる地球人がいるとは思ってもみなかったのだろう。光沢あるヘルメットの奥で目を剥き、隊列が一瞬ぐらつく。


「うおぉぉー! おんどりゃあーぶち殺しちゃるけんのうー!!」


 ブチ切れた広島県人お約束の脅し文句が公園に轟く。


 僕はサイボーグ能力を全開にし、爆発音のような足音を響かせながら猛然と突進!金星人たちは慌てて光線銃を構え、一斉にビームを放った。眩い閃光が空間を切り裂き、木々を薙ぎ払い、地面をえぐって土煙が舞い上がる。倒木が弾け飛び、火の粉が散った。 ただし、そこに僕らの姿はない。


「どこだ!? いない!?」


 叫ぶより早く──。僕とマリナは頭上から舞い降り、古新開と麗は地を滑る影のように突っ込む。


「死ねヤァ!!」


 僕の飛び蹴りが一体を直撃! 金星人の身体は弾かれたボールのように仲間を巻き込み、宙を舞った。着地と同時に拳を叩き込み、さらにもう一体を殴り飛ばす。


「えいっ!」


 マリナの華麗な踵落としが炸裂。光線銃で僕を狙っていた金星人のヘルメットが砕け、地面に沈む。


 その横では古新開が光線銃を蹴り上げ、怒涛の空手コンビネーションを叩き込む。 拳、肘、膝、頭突き。渾身の打撃が嵐のように降り注ぎ、金星人が呻き声と共に次々と崩れ落ちていった。


「てめえらに手加減なんぞしねぇからな!」


 一発一発に魂を乗せて放つ古新開。その動きはもはや嵐。金星人は打撃の雨に翻弄されるばかりだった。


「はぁーあ! ハッ!ハッ!ハッ!」


 そして、金星人の隊列の間をスイスイと縫うように走る麗。すれ違うたびに金星人たちが次々と脱力し、その場にうずくまる。中国武術の奥義「寸勁」(すんけい)だ! 敵と密着するほどの距離からの一撃必殺の一打! 彼らは突然わが身に起きた衝撃に理解ができないまま沈んでいった。


 ◇◆◇


 その時、上空に新たな影。新たな円盤が低空へと降下してきた。光線の狙撃が木々の間を焼き裂き、公園のベンチや石灯籠までもが破壊されていく。


 僕の補助頭脳AIが甲高い警告音を発する。


「ぴこーん! 上空の円盤からエネルギー反応あり! ピンポイントで狙われています!」


(まずい……真上からの攻撃!? 武装のない僕には防げない!)


 焦る僕に、鋭い声が飛んだ。


「ダーリン! これを使って!」


 ジェシカが投げてよこしたのは手榴弾。使い方なんて知らない……が、迷ってる暇はない。ピンを引き抜き、AIのカウントに合わせて天へ投げ放った。


 ──次の瞬間。


 手榴弾は円盤の腹部、攻撃装置らしき開口部に吸い込まれ、轟音と共に炸裂! 衝撃で円盤がぐらりと傾いた。その隙を見て紅葉が弓を構える。だが腕が震えていた。


「くっ……今の私じゃ、力が足りない……!」


 すかさず隣に立つ日美子様が彼女の手に重ねる。


「ならば、わしの力を貸すまでじゃ」


「えっ……でも、私は人鹿で……」


「関係なかろう。女神を信じ、この地を守りたい心は同じじゃ」


 紅葉の瞳に涙がにじみ、強く頷く。二人は手を携え、一つの弓を引き絞った。


「行きます!」「放てぇぇっ!」


 弦が鳴り、矢が飛び立つ。紅葉の霊力と日美子の神霊が重なり合い、矢は黄金と蒼白の光を纏った神雷と化した。それは一直線に円盤下部の反重力装置へ突き刺さり──。


 ──ドォンッ!!!  爆発と閃光が紅葉谷を白く染める。「これが……女神様の導き……!」と紅葉が涙を零す。日美子様が「ようやったのう」とそっと頭を撫でる。


 バランスを失った円盤型UFOは火花を散らしながら制御を喪い、地に墜落していった。落下してひっくり返った円盤からは、息も絶え絶えの金星人が這い出てくる。だが、その頭に「ガンッ!」「ガンッ!」と鈍い音が響く。


「峰打ち! 峰打ち! 峰打ち!」


 青山先生が自動拳銃の銃床で容赦なく殴りつける。金星人は泡を吹き、次々と気絶した。その光景を見たもう一基の円盤は、恐れをなしたように母船へと退避していった。


 ◇◆◇


 同じ瞬間──弥山の山頂。


 巨大な猫又と化した福浦三毛太郎と、白岳製家事用アンドロイドの肉体を持つ妖怪アマビエ・波多見遥が、上空に浮かぶ葉巻型UFO(母船・全長300M以上)を睨みつけていた。背中から軽やかに降り立った遥は、白岳康太郎が狂気と愛情を込めて仕込んだ全兵装を展開する。


「あーあー……これをやると、しばらく舌が焼けてご飯の味がしなくなるのよねー。痛いし……」


 ぶつぶつ文句を言いながらも、口を大きく開く。「きゅいーん」と収束するエネルギー、そして──「ちゅいーーーん」と青白い光線が放たれた! 熱ビームは母船の下部に突き刺さる! 遥はそのまま顔を巧みに動かし、金星人の母船にダメージを刻んでいく。


「バカ」「カス」「ボケ」 次々と悪口を書き込み、熱ビームは大気圏を突破してもびくともしないはずの船体にダメージを与えていった。


 さらに遥は両手を構え、腕に内蔵されていたレールガンを放った。その貫通力は凄まじかった。ただ、巨大な母船に対して、貫通したとはいえ小さな穴では致命傷にはならない。弾丸は操縦室と思われる付近を撃ち抜き、船体に小さな穴を開ける。


 ……だが、その穴で十分だった。


「うにゃー! 行ってくるニャ!」


 ポンッと音を立てて小さな猫に戻った三毛太郎。遥はその体を優しく抱き上げ、足裏のロケット推進装置を噴かして母船へ向けて飛翔する。そして福浦が母船に開けられた穴へと飛び込む!


 「三毛太郎……あとは任せたわよ」


 遥は落下しながらエールを送り、軽く推進装置を使って着地した。


「うにゃ!」


 家猫の姿で侵入した福浦は、配管や通路をすり抜け、やがて金星人の居住区へ到達。そこで再び巨大猫又に姿を変えると、母船内に「侵入者あり!」のアナウンスと警告音が響く。


 武器を持って押し寄せる金星人たち。しかし──。


「フウゥー!!」


 福浦の神通力を込めた咆哮に全員が硬直。金縛りにかかった金星人たちを、爪と牙で蹂躙していく。


 「ガジガジ・・・ぺっ!不味いニャ!」


 やがて辿り着いた操縦室。慄く金星人のパイロットが光線銃を抜く。


「化け物が! 死ね!」


 光弾が閃く。だが、福浦は家猫、巨猫、人型へと変幻自在に姿を変え、回避。そして最後に猫又へ戻ると──。


「これがわしの必殺の仏壇返し(呼び戻し)だニャ!!」


 得意の相撲の大技が炸裂! パイロットの腰骨が嫌な音を立てる。 更に全身を強打して床に転げ回った。


「ぎゃあぁー!」


「船を降下させて降伏するニャ! じゃニャいと……頭からポリポリ食べてやるニャ!」


「ひぃぃー! わかった! わかりました!」


 爪を喉元に突きつけられ、パイロットは震えながら命乞いする。やがて母船は推進音を低め、ゆっくりと厳島神社の沖、大鳥居の傍へと降下していったのだった。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございます!

少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。


もし「面白い!」と思っていただけたら、評価(☆)をぽちっと押していただけると励みになります。

星は何個でも構いません!(むしろ盛ってもらえると作者が元気になります)


そして、何らかのアクション&ひとこと感想(一行でOKです)をいただければ幸いです。

特に感想はめっちゃ元気になりますw 


よろしければ、ブックマーク登録もお願いします。

更新時に通知が届くので、続きもすぐ追えます!


今後の展開にもどうぞご期待ください。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ