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教師と生徒

 気付けば先程まで感じていた春の心地良さや彼女の姿などなく、飲み干した缶ビールや脱ぎ捨てた衣類が散乱する部屋で香線寺終夜(こうせんじしゅうや)は目を覚ました。


「クソッ……」


 香線寺はがしゃがしゃと後頭部を掻き、布団から這い出るように身を動かしてテーブルの上のタバコに手を伸ばす。こんなに自堕落な生活を送る羽目になっても教師という職を辞められず、土曜日である今日もスーツを着たまま寝ていた。


「そうか……もうすぐ、君の命日になるんだね」


 カレンダーの数字を目で追いながらタバコに火をつける。


 花日野琳音(はなひのりんね)……彼女が亡くなってから既に数年が経つ。彼女は香線寺がかつて愛してしまった生徒であり、そして彼女もまた教師である彼を愛していた。


 初めて出会った入学式では、周囲と一際違う雰囲気を放つ彼女の存在に香線寺は心を奪われた。


 出会った当初の香線寺は彼女に対して教師として適切な距離感を保ち、時折話す程度に留めていたが……二人はますます惹かれ合い、やがて放課後や長期休暇でも密かに会うようになってしまった。

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