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小さな文学少女が友達を欲しがっていたので友達になって、ついでに自己肯定感やら友人関係を整えたら想像以上の勇者になった  作者: 夜月紅輝


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クエスト21 「姉心、弟知らず」#5

―――時刻は遡り、天子達が作戦を開始した頃


 敬は天子達から遠く離れた中央公園にいた。

 その目的は、とある人物へと謝罪するため。

 しかし、未だその人物が来ないため、敬は一人天子達のことを思い耽った。


(大撫さんには割に無茶なことを指示したと思うけど、大丈夫だろうか。

 僕の見立てではまず成功すると思うが、それでもちょっと心配)


 人生は何が起こるかわからない。

 思いがけないことが突然起こるからこその人生とも言える。

 故に、勝算のある相手とはいえ、相手が中学男子である以上、何が起こるかわからない。


 そういう意味では、天子に味方をつけるよう促したのは正解だった。

 那智と夕妃であれば、天子の味方にきっとなってくれる。

 一人ではさすがに行かせられなかったが、あの二人がいるならまだ安心感を抱ける。


(そういえば、大撫さんはちゃんと行動出来てるだろうか。

 行動に自信を持たせるためにクリア条件を作ったけど、あんなの第一条件をクリアすれば、自動的に第二も第三もクリアしたことになるしな)


 敬が天子に提示したクリア条件は、ただの現状が上手くいっていることを示すだけの目印だ。

 作戦行動中は本当にこれで正解か不安になり、不安はモチベーションの低下やミスに繋がる。


 その気持ちを緩和させるための処置でしかない。

 緊張と恥ずかしさのあまりそのサインに気付かなかったら悲しいが、気付いたなら作戦成功はほぼ間違いなしと言えるだろう。


「おい、犬甘。来てやったぞ」


 その声に敬が振り返れば、そこには腰に手を当てて立つ京華の姿があった。

 京華は相変わらず不機嫌そうな目つきをしているが、それはデフォルトだ。

 故に、敬は特段気にすることなく、体を向けた。


「来てくれてありがとう。少し話があるんだ」


「話? もしかして元喜のことか?」


「あぁ、そうだね」


 敬はそう返事すると、サッとベンチに移動し、制服の胸ポケットからスルッとハンカチを取り出す。

 それを大きく広げ、ベンチの上に敷くと、まるでお嬢様に仕える執事のように腕を伸ばした。


「さぁ、こちらへ。どうぞお座りください」


「急に変なことすんじゃねぇ......ったく」


 京華は文句を言いつつも、敬の敷いたハンカチの上に座った。

 すると、その行動を確認した敬は少し移動し、京華の前に立ち尽くす。


「な、なんだよ......?」


 無言で立つ敬に、京華が訝し気な視線を送ると、瞬間敬は流れるような動作で正座した。

 そして、右手、左手と丁寧に手を地面につけると、大きな声で謝罪する。


「申し訳ありませんでした!」


「っ!?......え、は!? ちょ、なに、急に!?」


 突然の敬の土下座に、瞬間的に立ち上がる京華。

 そんな敬のあまりにも急な謝罪に、京華は展開が飲み込めず言葉は途切れ途切れになり、さらに敬の謝罪によって向いた視線にキョロキョロと視線を動かした。


「僕は編ヶ埼さんの信頼を裏切りました!」


「え!? いや、だから何のこと!?

 いいから、顔上げろ! 変な目で見られてるじゃねぇか!

 後、キッチリ説明しろ! こっちは何がなんだかサッパリだ!」


 京華の困惑した言葉に、敬はそっと顔を上げると、その体勢のまま理由を話し始めた。

 その内容は主に、京華が敬にだけ頼んだ元喜の問題に対して、天子や那智、夕妃をも巻き込んで解決に乗り出したことだ。

 ただし、その三人がどのように作戦行動をしているかは省いて。


 一方で、その話をする敬を、京華は腕を組みながら、ただ聞き役に徹していた。

 正直、京華とて色々とツッコみたいことはあったが、まずは話を最後まで聞いてから。

 弟を三人も世話してきた長女故の大人の対応がそこにはあった。


 敬の話を全て聞き終えると、京華はため息を吐きながらベンチに座った。

 また、土下座姿勢のままの敬に、姿勢を変えるよう指示を出す。


 すると、その指示に対し敬が正座に姿勢を変えようとするので、京華は再びため息を吐いて、自分の隣のスペースを手で叩き言った。


「別に怒っちゃいねぇから座れ」


「それ怒ってる人のセリフ......」


「いいから座れ。怒るぞ」


「あ、はい」


 敬が隣に座った所で、京華は背もたれに寄りかかり、同時に足を組む。

 そして、先ほど敬が話した内容について触れ始めた。


「......んまぁ、なんというか、とりあえず安心した」


「安心って......何が?」


 敬が首を傾げると、京華は優しい声色で答える。


「正直さ、かなり無茶言った気はしてたからさ。断られると思ってた。

 もちろん、それに対してはしょうがないと思うし、断っても文句を言うつもりは無かった」


「そう、なんだ......」


「で、それに関してアタシから言えることは、感謝こそするが、別に怒ることじゃねぇってことだ」


 その言葉に、敬は僅かに目を剥き、聞き返した。


「いや、そこは怒るとこじゃないのか?

 だって、編ヶ埼さんが俺に依頼したのは、友達に迷惑かけないことが条件だったじゃないか。

 けど、俺はその条件をクリアできそうになくて、大撫さんの熱意を利用してしまった」


「利用? それはさすがに違げぇだろ。

 自分が一人で解決しようとした時に、姫が協力を申し出た。

 それに対し、あんたは姫の意思を尊重して動くことにした、だろ?」


「.......」


「自分を悪く言って罰を受けようとしてるのか知らねぇけどよ。

 ただの同じクラスの、それも赤の他人の家族のために頑張ってくれた。

 それだけでアタシは十分だよ」


 京華はそっと顔を上げ、空をぼんやり見ながら、言葉を続ける。


「確かに、アタシが出した条件はクリア出来なかったかもしれねぇ。

 けど、それは単なるアタシのわがままってだけで、あんたが謝ってまで悔やむことじゃねぇ」


 京華は顔を下ろすと、そのまま流れるように敬を見た。

 そして、明るい笑みでニカッと笑って言った。


「つーわけで、気にすんな。んで、助けてくれようとしてありがとな」


 そんな京華の笑顔に対し、敬は表情一つ変えずに見つめる。

 そして、膝上で組む両手を見つめるように俯くと、ただ一言「そうか」と呟いた。


「ん~~、んじゃまぁ、バレたなら仕方ねぇ。この際だ、元喜に直接聞いてみるか」


 敬の謝罪がひと段落着いたところで、京華は気持ちを切り替えるように伸びをした。

 すると、敬はバッと京華の方に顔を向け、答える。


「あ、それに関してはたぶん大丈夫」


「は? 大丈夫ってどういう意味だ」


「いや、実は――」


 敬は先程は簡潔に話すために省いていた作戦について、京華に洗いざらい吐いた。

 瞬間、京華は立ち上がり、敬の胸倉を掴んで、先ほどまで微塵も見せなかった怒りを露わにする。


「てんめぇ、このやろう。姫を危険に晒すような真似しやがって!」


「待って待って! 落ち着いて! 確かに、リスクはあったけど、ちゃんと勝算を示して、大撫さんの同意を得た上で実行したことだから!

 それに僕だって一人で行かせたりしない! 護衛に百式さんと涼峰さんもつけたから!」


 敬は咄嗟に両手を上げて白旗ポーズ。

 しかし、京華の怒りは冷め止まぬと言った感じで、敬の胸倉から手を放す様子はない。


 そんな京華に対し、敬は「どうしたものか」と悩んでいると、ポケットに入っていたスマホに着信が来た。


(もしかして.....大撫さんからか?)


 そう思った敬は、今の危機的状況を打破する唯一の希望であるスマホに全てを託した。

 そして、画面を暗い画面をタッチして今の推しのアニメキャラの画面を表示すると、そこには天子ではなく那智からレイソが来ていた。


『無事に終わったよ~。ここからどうするの?

 何もなければ、とりま元喜君を家に送ってくけど』


「至急、中央公園、応援求むっと」


「おい、余裕だな。アタシの前でスマホをいじるたぁよ?

 そういや、アタシをハブったプリクラを加工したのってテメェらしいな。

 テメェよ、内心アタシのこと舐めてんだろ。どうだぁ? なんか言ってみろ」


 京華は胸倉をグイッと掴み、鋭い眼光を敬の顔面から数センチといったところで睨みつけた。

 そんな常人陰キャならビビり倒すような威圧の中、敬は勝利を確信したように那智とのトーク画面を表示した。


「まぁ、待たれよ大撫さんの騎士よ。これを見た前」


「あぁん? 無事に終わっただ?」


 敬のスマホをひったくり、那智とのトーク画面を見る京華。

 そして、過去のトークを遡れば、作戦の内容に触れたちょっとした他愛ない会話と、一つの数分ほどの動画を見つけた。


「なぁ、この動画の再生画面に姫と那智と夕妃が映ってるんだけど......これ何?」


 何気なく聞いた京華の言葉に、敬はビクッと反応し、そっと目を逸らした。

 しかし当然、怒りで目敏くなっている京華は見逃さない。


「おい、これは何だ?」


「まぁ、なんというか俺は大変興味深いものだったが、編ヶ埼さんには少々刺激が強いものかと。

 なので、見るのは......その、非常に避けた方がいいと思いまして......」


「ふ~ん、あっそ。再生っと」


「あぁ! なんてことを!?」


 敬の忠告を無視し、京華は敬のスマホで動画を再生した。

 すると、その内容は京華にとって非常に複雑な感情を与える結果となった。


―――動画内容―――


 動画を再生してすぐの映像は、たくさんのぬいぐるみが置かれたファンシーな部屋。

 特にベッドの枕元には、枕を囲むようにしてぬいぐるみが配置されてある。

 その部屋の主は那智のものであり、ベッドの上には天子、那智、夕妃の座る姿があった。


 その並び順としては、天子を挟むようにして那智と夕妃が座っている感じだ。

 また、那智は馴れ馴れしく天子に肩を組んでおり、夕妃は天子のふとももを触っていた。


 そんな二人の行動のせいか、天子の顔は恥ずかしがって真っ赤である。

 いや、時折那と夕妃が天子の耳に顔を近づけ、「可愛い」と囁いている影響の方が大きいか。

 そんな状況で、最初に口火を切ったのは那智である。


「やっほ~、ヲタク君見ってるぅ~? 今、あなたの大切な人が隣にいま~す!

 いや~、あんまりに可愛いもんで、家に連れ込んじゃった」


 まるでどこぞのチャラ男のように挨拶をする那智。

 その言葉に続き、夕妃もしゃべりだす。


「これからやることはお察しの通り。この子の”初めて”をいただくわ。

 これだけ可愛いから初めてじゃないと思ったんだけど......なんたる僥倖。

 ふふっ、安心して決して悪いようにしないわ」


 夕妃はそう言いながら、人差し指で天子の顎をなぞった。

 その夕妃の行動に、天子は体をビクッと跳ねさせる。

 その一方では、夕妃の行動に那智が怒った。


「ちょっと夕妃? 何勝手にお触りしてんのさ! 最初は那智からだったでしょ!?」


「まぁまぁ、落ち着いて。どうせお楽しみはこれからなんだから」


 そう言って、夕妃は那智に向けていた視線をカメラに向ける。


「それじゃ、あんまりオープニングも長いとアレだし......そろそろ始めよっか」


「んじゃ、これからワンコちゃんの初めてを奪っちゃいまーす!」


 意味深な発言をする夕妃と、拳を突き上げ元気よく宣言する那智。

 もうお気づきの方もいるだろうが、これは単なるNTRビデオレターのオープニングの再現である。


 これを提案したのは夕妃であり、目的はひとえに「面白そうだから」。

 それに悪ノリした那智と、悪ノリを断り切れない天子とで作り上げられた動画がさっきのだ。


 とはいえ、いくらNTRビデオレターを再現しようと、結局は女子同士。

 故に、これを送られた敬はノーダメージであり、むしろ面白いとさえ感じるものであった。


「それじゃ、無料版はここまで。続きは有料で」


 夕妃はカメラに近づくと、そう言って動画を終わらせた。


―――動画終了―――


「......有料版を見せろや!!!」


 一方で、敬とは違い、この動画が致命的に刺さる人物がいる――それが編ヶ埼京華だ。

 もちろん、そこにいるのはモテないがエロに興味のある男子高校生ではない。

 ......念のため、この人物について、今一度おさらいしておこう。


 金髪で谷間が見えるほど胸元を開けたワイシャツを着こなす、いかにもギャルな見た目をしたギャルは編ヶ埼京華といい、犬津高校に通う二年生の女子学生だ。


 ギャルという存在感と、誰にも物怖じしない態度からクラスではカーストトップの位置に君臨し、周囲の生徒から羨望と畏怖の眼差しを送られるバチクソな陽キャである。


 そんな絶対的な位置にいる京華であるが、唯一致命的な欠点がある。

 それは、自他ともに認める気色悪いほどの可愛いもの好きであることだ。


 可愛いもの好きと聞けば、それだけかと思われるかもしれないが、その守備範囲は物体を指す”物”に限らず、人を指す”者”も指し、ただの可愛いもの好きと比べればあまりにも度を越している。


 加えて、京華は自らを”ベビコン、ハイジコン、アリスコン、ロリコンを超えた究極の紳士”と自称しており、また同じクラスにいた低身長の大撫天子のことを”姫”と呼び、その気持ち悪さはもはや話にならない。


 そんな京華であるが、自らが”姫”と呼ぶ天子の遊びの誘いに対し、葛藤しながらも結局は家族のことを思って断るほどの決断力があり、その点を考えればただの変態紳士とは違うと言える。


 しかし、京華の本質は変態紳士でありながら、”厄介ユニコーン”でもあり、天子の処女性にあーだこーだと厄介をかまし、その厄介さは友人である百式那智と涼峰夕妃によって角をへし折られるほど。


 それが、可愛いも好きという言葉で自身を覆い隠した化け物、編ヶ埼京花である。


「っ.......クソが.......!」


「いや、有料版ただのメイク動画だから。百式さんがそう言ってたし」


 敬のスマホを握りしめるほどには、激しい悔しさを見せる京華。

 そんな京華の姿を、敬は隣から若干引きながら見ていた。


「ん?」


 その時、敬は悔しがる京華越しに見覚えのある人物達に気付いた。

 その人物達は二人に気付いた様子で、駆け足で近づいてくる。

 なので、敬は京華に向かって軽く手首を振り、声をかけた。


「ちょいちょい」


「あぁ? なんだよ!? 今のアタシが悔しがってんのが見て分かんねぇのか!?」


「あっち」


「あっちだ?――ンハッ!?!?」


 敬に指さされその方向を見た京華は息を飲んだ。

 そう、京華の視線の先から走ってくるのは天子、那智、夕妃の三人のギャル。


 しかし、京華の視界にはもはやギャル化した天子しか映っていなかった。

 もっと言えば、すぐ近くに元喜もいるのだが、京華は気づかない。


「ガッハ!!」


 天子を見た瞬間、京華は敬のスマホを手放し、心臓に手を当てた。

 そして、膝から崩れ落ち、さらには土下座するように体を丸める。


 その姿はまるで本物の神に出会った村人のように。

 それこそ、すぐ横で地面に落ちたスマホに対し、「僕のスマホがぁ!?」と叫ぶ敬を微塵も気にすることないほどであった。


「い......い”き”て”て”よ”か”っ”た”っ”!!」


 まるで生き別れの姉妹に再会したかのように、嗚咽混じりの泣きを見せる京華。

 そんな京華に、天子は急いで近づいて声をかけた。


「ど、どうしたんですか!? 大丈夫ですか!?」


「た”い”し”ょ”う”ふ”.......」


「全然そうには見えませんけど!?」


 かつてない状況に、あわあわと体を動きながら困惑する天子。

 そんな天子に対し、那智は天子の方にポンと手を置く。


「もうこれ以上めった刺しはよくないぜ。

 大丈夫、このヤベー奴の回収業者はちゃんといるから」


 そう言いながら、那智は道を開けるように半身移動した。

 すると、その道からは何とも言えない顔をした元喜が歩いてきて、泣き崩れる姉の前に立つ。

 そして、友人からヤベー奴扱いを受けている姉に対し、弟は一言――


「何してるの、姉さん?」


 その元喜の言葉に、京華はピクッと反応した。

 直後、流れるように立ち上がると、サッと涙を拭いて答える。


「お、元喜じゃん。どうしたこんな所で」


「おい、見たか。コイツ、まるで何事も無かったかのように始めたぞ」


「ある意味図太い神経ね」


「姉の立場でゴリ押すつもりなのかもしれない」


 京華のしれっとした態度に、那智、夕妃、そして敬が思わずツッコんだ。

 そんな外野の声を気にすることなく、京華はシリアスモードを作り出した。


「元喜、事情は犬甘から聞いた。いじめられてたんだってな。どうして言わなかった?」


「どうしてって......そんなの言えるわけないじゃん」


「アタシが『ダセェ』とでも言うと思ったからか?」


「違う。姉さんは言葉は荒っぽいけど、そんなことは言わないのはわかってた。

 ただ......僕が迷惑かけたくないと思っただけだ。

 もし、ここで僕が不登校にでもなったら、母さんや姉さんに余計な世話をかける。

 それに、下の弟達にも悪い影響を与えるかもしれない」


 元喜は顔を下に俯かせながら、背負うカバンのショルダーストラップをギュッと握る。

 そんな弟を見た京華はというと、ため息を吐きながら、頭をガリガリと掻いた。

 そして、そっと弟の頭に手を置いた。


「バカか、お前は。迷惑ならどれだけでもかけろ。

 それを支え合っていくのが家族ってもんだろうが。

 これでもアタシはあんたよりちょっとだけ長く生きて、知恵もある。

 なけりゃ、そんなアタシを救ってくれる友達がいる」


 京華はそっと元喜の頭を撫で始めた。


「だから、もう迷惑とかそういうのやめろ。

 お前が傷つくのも、苦しむのも見たくない。

 お前は生まれたその瞬間からアタシの弟なんだから、姉として守らせろ」


「姉さん......って痛たたたたっ!?」


 元喜が感動したのも束の間、姉からガシガシと押し付けられるように撫でられる。

 それこそ、爪が刺さるような撫で方であり、姉の手が離れた瞬間、元喜は涙目になりながら両手で頭を抑えた。


「な、何するのさ!?」


「これは罰だ。迷惑かけたことは事実だしな。

 むしろ、これだけで済むんだから優しい方だと思うけどな」


 そんな姉の言い分に、元喜は肩を諫めると、頭から両手を下ろし、改めて京華に向き合った。

 そして、勢いよく頭を下げる。


「迷惑かけてごめんなさい。次からちゃんと相談します」


「あぁ、許す! だが、次に同じようなことやったらこの程度の罰じゃねぇからな」


「うん、気を付ける」


 そして、その姉弟は顔を見合わせると、ニコッと笑った。

 そんな二人の笑顔を茜色の日差しがオレンジ色に染め上げたのだった。

読んでくださりありがとうございます(*‘∀‘)


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