第92話 さくらの追求を回避せよ。
「お母さん、いつの間にブラックさんと仲良くなったの?
会ってまだ間もないけど、親しくなる時間なんて
なかったよね?」
「え、あ、ん、そうね……実はブラックとはモン◯ンの
話で盛り上がって仲良くなったのよ!」
「モン◯ン?確かにお母さん好きで良く蒼字くんの
家に遊びに行ってたもんね」
再び一花は固まる。
「えっとえっと後は笑笑バラエティーの話で盛り上がって」
「あーーお母さん、あのお笑い番組過きだもんね!
蒼字くんが毎度勧められて耳タコだよって
嘆いたし」
再び一花は固まる。
「えっとえっと……」
………「タ〜イム」
俺は横から入り一花さんを連れて少し離れる。
「一花さん、わざと……ではないですね!
テンパらなくて良いです」
一花さんがウルウルしている。一応必死に
誤魔化そうとしてくれたようだが、日頃から嘘をつかない
一花は上手く嘘をつけない。これ以上は
一花さんが可哀想なので、俺が何とかしよう。
「オホン、さくらさん、実はですね……」
「ブラックさんもお母さんが見えるんですね」
喋っている途中に衝撃の発言を受けた。
しまった!?考えてみれば、一花さんは
幽霊だった普通の人には見えない!
術者であるさくらは、今は実体化させていないから
霊能者とか神父、シスターとか素養が無いと見えない。
その違和感に気が付かれたか……仕方ないカードを切るか。
「は〜仕方ありませんね!さくらさん今からのことは
他言無用でお願いします」
急に話し方が変わりさくらは困惑する。
すると、ブラックの姿は一瞬で真っ白に変わり
服装が整い始めた。
「こういう事です!私はブラックでありホワイト
フフッ、安直な名前ですいません」
「えーー」
さくらは飛び退くように驚いた!
「ブラックさんが……ホワイトさんで……つまり使徒様!!」
「あ、あ〜使徒様ね、ま〜そうね……ゴホン……
さくらさん、私は聖魔法が使える霊能者でもあります。
つまり一花さんが見えても何の不思議もない!」
ビシッと言ってやったぜ〜完璧だ!
「なるほど、そう言うことだったんですね。
納得出来ました。それにしても驚きました。
ホワイトさんだったなんて、それでしたらもっと
大々的に世の中に伝えたほうがみんなが安心出来ると
思うのですけど」
「あ〜そう考えますよね。でも考えてみて下さい。
私は異世界人です。つまり本物の使徒様ではありません」
「えーー」
再び飛び退くように驚く。
「えっえっつまり、嘘だったんですか?」
「そうです。セレーナ様に頼まれて仕方なく
やりましたけど、本当はあんな事やりたくなかったの
ですが」
「………それではさっきのお母さんが見える話は
どうなるのでしょうか?」
「………」墓穴を掘った。
「ん、そこは私の固有スキルが影響しています。
私の固有スキルは聖魔法と近い能力なんで」
咄嗟についた嘘だから何とか次に言われそうなことを
考えておかないと、俺は内心ダラダラと心の中で
汗をかきさくらの次の返答を待つ。
「ちなみにそのスキルを教えてもらうことは?」
「出来ませんね、これを教えることが命取りに
なるかも知れませんから」
「そうてすか……いえ、大変失礼な質問をしてしまいました。
スキルを簡単には教えられませんよね」
「そうです。すいません」
俺は軽く頭を下げた。
「頭を上げて下さい、ブラッ……ホワイトさん?
どっちがいいのでしょ?」
さくらはやや混乱しているので、今はホワイトで
お願いした。
「分かりましたホワイトさん、それでお母さんの件は
分かりました。それで一つお願いがあるんですが
聞いて頂けますか?」
「お願いですか、私に何を?何にしても内容を
聞いてみないとなんとも……」
「私に修行をつけて下さい!」
「………え!?それはどうして何でしょうか、
まったく理由が分からないのですが?」
「それ程難しい話ではないです。単純に今回の魔王軍との
戦いをして、私達が余りにも弱かった。このままでは
守りたいものが守れない!ホワイトさんはそれを
可能にするだけの力を私達に示してくれました。
だから私に修行をつけてください」
さくらは頭を下げお願いした。
「ん〜そう言われましても……」
正体を隠しながら教えるなんて面倒くさくって
しょうがない。そもそも俺が教えなくても王都の
魔法使いとか兵士とかの方が確実に上手く指導が
出来る。正直俺は本職とはいえん!断ろう。
「さくらさん悪いんだが……」
「ちょっと待った〜………とっとっと!」
一花さんが空中で滑り込むように、
俺の顔の前に通過し何とか止まる。
「何で断るのよ!」
一花さんが眉間にシワを寄せて抗議、
これは怒ってますな。
「仕方ないでしょ、正体を隠しながら修行なんて
難しいんです。それに俺がやらなくてももっと良い適任者が
いると思うんですよ」
「ノー、アホですかあなたは!良いですか!
さくらが知らない男の人に手取り足取り指導される姿を
想像してみなさいよ!最悪よ最悪!蒼字くんに
耐えられるの?」
一花さんが興奮してガミガミと言っているが、
正直確いい気分はしない。もちろんそれは俺が
気にする事ではないのだが、嫌な気分になったのは
事実。やっぱり受けようかな……どうしようかな〜。
「迷う必要性なんてないでしょー早く受けなさい。
早く受けろ〜受けろってばー」
一花が俺の周りをグルグル回りながら
呪いの如く唱えるから考えがまとまらん。
そんな姿を見ていたさくらが再びあの疑問に
行き着くのはそう難しい事ではなかった。
「お母さんとホワイトさんって本当に仲が良いですね?」
「「え!?」」
俺と一花は同時にさくらを見る。
また、なんて答えたら良いか難しい質問を……
「一花さんとは実は祝福儀式の時にお話する機会
がありまして、その時から頻繁に話すことがあったので
それなりに仲良くさせて頂いています」
「そ、そうなのよ!偶然お風呂に行ったらバッタリ会って
その時からちょくちょく会ってるのよ」
さくらの目が据わっている、これは……怒っている
しかもかなり!
「お風呂……ホワイトさんはお母さんとお風呂に
入ったんですか!」
「え!?」俺の声がやや裏返る。
「もしかしてお母さんに変な事してませんよね!」
いかん!さくらから怒気が出まくっている。
日頃は冷静なさくらだけど一花さんの事になると
何をするか分からない。
一花さんのアホ、余計なことを!
「ん?大丈夫よさくら、一緒にお風呂に入っただけだから
大体そんな度胸があればとっくにさくらに……「バシッ」
俺は一花さんの口を押さえ、静かに
耳打ちした。「これ以上余計なことは言わないで」
その後、鋭い目で睨まれるのを回避するため仕方なく
修行を引き受けた。




