第89話 我龍転生
……………『画竜点睛』
黒き龍は一気に収縮し筆に戻る。
筆先には龍が宿ったが如く鼓動をする。
ネウロの額から汗が流れる。
『ネウロだっけか、ちょっと待たせたな!
これは半分思いつきの術だ!はっきり言って制御は
出来ないと思うから勘弁な!」
俺は深呼吸し新たな力に挑戦する。
…………「ふぅーーはぁーー………我龍転生」
筆から墨帯が乱舞、蒼字を包んでいく。
黒い球体の形状になりうねうねと帯が動いている。
帯は数秒で花が開くように倒れ、出て来たのは
龍を象った黒い鎧を着た騎士。
「それは、虚仮威しではないな!」
ネウロは蒼字を見て構える。
「フッ、この鎧すげー守られてる感があるは〜
動きも悪くない、鎧のくせに服着てるみたいだ!
そんじゃ〜ちゃんと使えるか試そうか!」
蒼字は走り出し、その勢いで低空飛行、
地面を這うように突撃、
「飛行移動するか、ならば!」
ネウロは拳を高速で動かし、空気を弾丸にして飛ばす。
蒼字は背中のあたりから四本の墨帯を出し、
地面に帯を当て反動で躱しながら一気に接近
ネウロは拳にオーラを溜め、蒼字を攻撃、
「ガーン」蒼字は腕でガード、
受けた腕から帯が拡がりネウロの腕を絡み取る。
「ハァーー」
蒼字は絡み取った腕を引っ張り
ネウロをぶん投げる。
ネウロは空中で反転し態勢を立て直し着地、
そこを追撃、腕を振り上げ10メートルを超える
墨帯で作った長剣を振り下ろす。
「ガキーン」
ネウロは腕をクロスさせ竜装で受け止める。
激しい衝撃で大地にヒビが入り足が沈み込む。
『縛筆!』
剣の形状が帯に変わりネウロを束縛。
「ぐっくっーー」
ネウロは解こうと力をいれるが、引き千切ることが
出来ない。
「今までの耐久力じゃない!簡単には解けんぞ!」
蒼字は帯に魔力を込め更に帯を強化する。
力と力のぶつかり合い。
その戦いは意外な方法で終わりを迎えた。
「ガガガァーー」
ネウロは魔力を高め……………自爆した!!
「ぐぁった……まさか!?」
目の前には腕から血を流しながら、拳を振り上げている
ネウロが居た。ネウロの渾身の一撃が蒼字の胸を貫く。
蒼字は吹き飛びながらも、帯を地面に刺し
ブレーキをかけ止まる。
「驚いた!まさか竜装で防御力を上げたからと言って
爆炎魔法を使って無理やり帯の束縛を解くなんて
思いもつかなかった。かなりダメージを負うことは
分かっていたはずだ!あんた凄い覚悟だよ!」
蒼字はネウロから強い意志、覚悟を感じた。
両腕から滴る血などまったく気にせず、鋭い眼光を
蒼字に向ける。
「俺は負けるわけには行かない!竜王様復活の為に!」
「竜王?……あんたが闇人になってまでしたいことが
それなのか?」
「そうだ!王の復活こそが、我ら竜人族の悲願、
誰にも止めさせはしない!」
ネウロの腕に魔力が集まり赤く光る。
「受けるが良い!我が最高の技、『灼熱剛腕激』
ネウロの腕は千度を超える温度に上昇、
数百トンにもなる剛腕で蒼字を襲う。
「俺も負けてやるつもりはない!」
蒼字は両腕で筆を持ちネウロに向ける。
「仕上げの一撃!『画竜点睛……点撃』」
蒼字が纏った鎧が墨帯となり筆に集約、
濃縮された墨(魔力)が龍となり、ネウロと激突した。
…………「勝負あったな!」
ネウロは片腕がなく、大量の血が滴り死にかけている
にも関わらず諦めていない。
その目には強い闘争心が宿っている。
ネウロは構え魔力を高める。
「あんたがその気なら付き合う!」
蒼字も筆を構え戦闘態勢になる。
「そこまでよ!ネウロ引くわよ!」
ネウロの横にはダークエルフの女がいた。
「何故引かねばならない!ロウ」
ネウロから威圧する。
「我儘言わないの!あなたは、私に逆らえないのは
分かっているでしょ」
「…………あ〜」
ネウロは戦闘態勢を解いた。
「悪いが引かせて貰う!今回はお前の勝ちだが
次に会う時は俺が勝たせてもらう」
「おいおい、お前達これだけの事をやっておいて
簡単に逃げれると思ってるのか、それに何が目的で
こんな事をした!」
ロウは口に人差し指を当て少し考え!
「実験!魔物がどの程度闇化が出来るかのね?
でも失敗かしら、千を超える魔物に試したけど
全部失敗したわ!………残念、失敗を元に次にいかすとするわ。
あ〜あとついでにカルディア辺境伯領の殲滅だったかしら」
「ロウ!そっちが指示されたことだ!
実験はお前の都合だろうが!」
「うふふ、ネウロは真面目!ちょっと遊びを
入れたほうが楽しいのよ」
ネウロはロウの言葉にため息をつく。
「それじゃ〜そろそろお暇するわ!ネウロも限界
近そうだし」
「だから逃さないって言ってるだろうが、『縛筆!』」
複数の墨帯がネウロとロウに巻き付こうとした瞬間、
目の前に突然土壁が現れ、帯が阻まれる。
「遅いわよ!何をしてたのかしら」
「うるせいよ!来てやっただけ有り難く思え」
地面から浮き上がるように出て来たのは、筋骨隆々の
ドワーフ。
「相変わらず口が悪いわね!でもありがとう」
ロウは一度こちらに向き直し、
「それでは改めて失礼します。貴方とまた会いたいわ
次は貴方も実験させてそれでは」
ロウは軽く手を振ると、地面が沈み込み、
地面を通り逃走した。
蒼字は穴の空いた地面を覗き込み、
「ここから追いかけるのは危険か………諦めるしかないか」
蒼字は脇腹を抑え痛みに耐える。
脇腹が骨折しており身体の数カ所にビビが入っていた。
「ここまでだ、お休みターイム」
蒼字は近くの岩に腰を掛け、そこに
風太、ジャンヌ、キャンベルさんが来た。
『治癒の朱墨』
「ありがとうございます。ご主人様
また!私はお役に立つ事が出来ず」
ジャンヌは辛い表情をしている。
「いや……半分は俺の責任だ、式であるジャンヌは
俺の力に比例して力を発揮する。多分だがジャンヌは
元々の力が発揮出来てないだろ」
「そ、それは………」少し驚くジャンヌ
「今回は俺も反省するところが多くあった。
一緒に強くなろうぜジャンヌ」
その言葉を聞いたジャンヌ目頭が熱くなり
目を押さえて喜んだ。
「蒼字様、貴方は私が思っていた以上の事を
やってくれました。ギルド職員を代表してお礼を
申し上げします。ありがとうございました」
キャンベルさんは深々と頭を下げる。
「いや〜大した事ないですよ!それにまだ俺達はパーティ
ですから早いですよ」
「フフッはーい分かりました蒼字」
キャンベルさんの笑顔を見ることが出来た。
美人は笑うと可愛いね!
これにてカルディア辺境伯領の魔物騒動は終わり
そして……この後、勇者達の追撃を受ける。




