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第90話 我龍転生


……………『画竜点睛がりゅうてんせい


 黒き龍は一気に収縮し筆に戻る。

 筆先には龍が宿ったが如く鼓動を始めた。


 ネウロの額から汗が流れた。


『ネウロだっけか、ちょっと待たせたな。これは半分思いつきの術だ!はっきり言って制御は出来ないと思うから勘弁な」


 俺は深呼吸し新たな力に挑戦する。

「ふぅーーはぁーー………我龍転生がりゅうてんせい


 筆から墨帯が乱舞、蒼字そうじを包んでいく。

 黒い球体になりうねうねと帯が動いている。


 帯は数秒で花が開くように倒れ現れたのは!?

 龍を象った黒き鎧を着た騎士。



「それは、虚仮威こけおどしではないな!」


 ネウロは蒼字そうじを見て構える。

 

「ふぅ〜この鎧すげー守られてる感があるわ!動きも悪くない、鎧のくせに服を着ているみたいだ。そんじゃ〜ちゃんと戦えるか試してみようか!」


 蒼字は走り出し、その勢いで低空()()、地面を這うように突撃する。


「飛行移動するか、ならば!」

 ネウロは拳を高速で動かし、

 空気を弾丸にして飛ばす。


 蒼字そうじは背中のあたりから四本の墨帯を出し、地面に帯を押し当て反動で躱しながら接近する。


 ネウロは拳にオーラを溜め、蒼字そうじを殴る。


「ガーン」蒼字そうじは腕でガード、

 受けた腕から帯が拡がりネウロの腕を絡み取る。


「ハァーー」

 蒼字そうじは絡み取った腕を引っ張り、勢いをつけてネウロをぶん投げた。


 ネウロは空中で反転し態勢を立て直し着地、俺はそこを追撃する。腕を振り上げ10メートルを超える墨帯で作った長剣を振り下ろした。


「ガキーン」

 ネウロは腕をクロスさせ竜装で受け止める。


 強烈な衝撃で大地にヒビが入り足が沈み込む。


『縛筆!』

 剣の形状が帯に変わりネウロを束縛。


「ぐっくっーー」

 ネウロは力尽くで解こうとするが、引き千切ることが出来ない。


「今までの耐久力だと思うなよ!簡単には解けないぞ!」

 蒼字そうじは帯に魔力を込め更に帯を強化する。


 力と力のぶつかり合い。

 その戦いは意外な方法で解かれてしまう。


「ガガガァーー」

 ネウロは魔力を高め……………自爆した!!


「ぐぁった……まさか!?」

 腕から血を流しながら、拳を振り上げているネウロが居た。ネウロの渾身の一撃が蒼字そうじの胸を捉えた。


 蒼字そうじは吹き飛びながらも、冷静に帯を地面に刺しブレーキをかけて止まる。


「無茶するな。まさか竜装で防御力を上げているからと言って爆炎魔法を使って無理やり帯の束縛を解くなんて思いもつかなかったよ。かなりのダメージを負うことは分かっていたはずだが!あんた凄いな」

 

 蒼字そうじはネウロから強い意志、覚悟を感じる。


 両腕から滴る血などまったく気にせず、ネウロ鋭い眼光を蒼字そうじに向ける。

「俺は負けるわけには行かない!竜王様復活の為に!」

 

「竜王?……あんたが闇人になってまでしたいことがそれなのか?」


「そうだ。王の復活こそが、我ら竜人族の悲願、誰にも止めさせはしない!」


 ネウロの腕に魔力が集まり赤く光る。


「受けるが良い!我が最高の技、『灼熱剛腕激しょくねつごうわんげき


 ネウロの腕は千度を超える温度に上昇、数百トンにもなる剛腕で蒼字そうじを襲う。


「俺も負けてやるつもりはない!」


 蒼字そうじは両腕で筆を持ちネウロに向ける。


「仕上げの一撃!『画竜点睛……点撃』」


 蒼字そうじが纏った鎧が墨帯となり筆に集約、濃縮された墨(魔力)が龍となり、ネウロと激突した。




「…………勝負あったな」


 ネウロは片腕がなく、大量の血が滴り死にかけているにも関わらず諦めていない。


 その目には強い闘争心が宿っている。


 ネウロは構え魔力を高める。


「あんたがその気なら付き合う」

 蒼字そうじも筆を構え戦闘態勢になる。



「そこまでよ!ネウロ引くわよ」

 ネウロの横にはダークエルフの女がいた。


「何故引かねばならない!ロウ」

 ネウロから威圧する。


「我儘言わないの、あなたは私に逆らえないのは分かっているでしょ」


「…………あー」

 ネウロは戦闘態勢を解いた。


「悪いが引かせて貰う。今回はお前の勝ちだが次に会う時は俺が勝たせてもらう」


「おいおい、お前達これだけの事をやっておいて簡単に逃げれると思ってるのか、それに何が目的でこんなことをした!」


 ロウは口に人差し指を当て少し考え!

「実験!魔物がどの程度闇化が出来るかのね?でも失敗かしら、千を超える魔物に試したけど全部失敗したわ!………残念、失敗を元に次にいかすとするわ。あ〜あとついでにカルディア辺境伯領の殲滅だったかしら」


「ロウ!そっちが指示されたことだ!

実験はお前の都合だろうが!」


「うふふ、ネウロは真面目!ちょっとは遊びを

入れたほうが楽しいのよ」


 ネウロはロウの言葉にため息をつく。


「それじゃ〜そろそろお暇するわ!ネウロも限界近そうだし」


「だから逃さないって言ってるだろうが、『縛筆!』」


 複数の墨帯がネウロとロウに巻き付こうとした瞬間、目の前に突然土壁が現れ、帯が阻まれる。


「遅いわよ!何をしてたのかしら」


「うるせい!来てやっただけ有り難く思え」

 地面から浮き上がるように出て来たのは筋骨隆々のドワーフ。 


「相変わらず口が悪いわね!でもありがとう」


 ロウは一度こちらに向き直し、


「それでは改めて失礼します。貴方とまた会いたいわ。次は貴方も実験させて、それでは」


 ロウは軽く手を振ると、地面が沈み込み地面を通り逃走した。


 蒼字そうじは穴の空いた地面を覗き込み、


「ここから追いかけるのは危険か………諦めるしかないか」

 蒼字そうじは脇腹を抑え痛みに耐える。

 脇腹が骨折しており身体の数カ所にビビが入っていた。


「ここまでだ、お休みターイム」

 蒼字そうじは近くの岩に腰を掛け、そこに風太、ジャンヌ、キャンベルさんが来た。


『治癒の朱墨しゅずみ


「ありがとうございます。ご主人様また!私はお役に立つ事が出来ず」

 ジャンヌは辛い表情をしている。


「いや……半分は俺の責任だ、式であるジャンヌは俺の力に比例して力を発揮する。多分だがジャンヌは元々の力が発揮出来てないだろ」


「そ、それは………」少し驚くジャンヌ。


「今回は俺も反省するところが多くあった。

一緒に強くなろうぜジャンヌ」


 その言葉を聞いたジャンヌ目頭が熱くなり目を押さえて喜んだ。


蒼字そうじ様、貴方は私が思っていた以上の事をやってくれました。ギルド職員を代表してお礼を申し上げします。ありがとうございました」

 キャンベルさんは深々と頭を下げる。


「いや〜大した事ないですよ!それにまだ俺達はパーティですから早いですよ」


「フフッ、はーい分かりました蒼字そうじ

 キャンベルさんの笑顔を見ることが出来た。

 美人は笑うと可愛いね!



 これにてカルディア辺境伯領の魔物騒動は終わり

そして……この後、勇者達の追撃を受ける。


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