第87話 黒ずくめの男……は誰?
◆少し時は遡り、さくらの視点
ダメダメダメーーそこを退けーー!
アルヴィア姫にドラゴンの攻撃が当たる瞬間、
突如現れた黒ずくめの男によって守った。
私はその姿を見て、
一瞬気が抜け隙を作ってしまった。
「さくらー危なーい!」
お母さんの声に反応して身体を反転させた時にはもう遅かった。目の前に鎌が接近……これは躱せない。
……首が飛ぶ。
「キィーン」
え!?……目の前には綺麗な人が立っていた。
シスターの様な服装をした剣士。
この人が私を助けてくれたの?
「あなたは……」
「立てますか?立てるならすぐに立ち上がりなさい!」
私は腰を抜かし座っていると、その女性に喝を入れられ立上る。
その女性はワーウルフを押し返し、
こちらにやって来る。
「ダメですね。まずは冷静になりなさい勇者、貴方ならワーウルフ如きに遅れは取らないでしょ、あちらに居る姫はご主人様に任せて、貴方は目の前の敵に集中しなさい!」
「そんなこと、急に言われても貴方は何者なの?」
「私が何者であってもどうでも良いこと、気にするひま……」
私達が喋っている隙を狙い、ワーウルフが女性を後ろから襲おうとした……けど
「黙りなさい!」
女性から凄まじい殺気が放たれ、ワーウルフはかなりの距離を取り下がった。
「うそー!?……すごい!」
「もう一度だけ言います。戦いに集中してあいつを倒しなさい。良いですね!」
有無を言わせない気迫、私はコクリと頷いた。
◆陽菜乃の視点
「さくらは大丈夫そう。良かった。それで貴方も、あちらの黒ずくめと美人シスターさんのお仲間かしら?」
「そうです。勇者殿微力ながら助太刀させて頂きます」
「ご謙遜を、さっきの動き、達人の領域だと思いうわよ」
私を助けてくれたその姿は、まさに疾風迅雷!目にも止まらぬ動きだった。
「協力して頂けるのは心強いです。宜しくお願いします」
私はアルヴィア姫を助ける為、謎の美人さんの力を借りてワーウルフに挑む。
◆アルヴィア姫の視点
黒ずくめの方が捕まってしまった。なんとかして助けないと、でも身体に力を入れようとしても力が入らず、まともに動くことが出来ない。どう致しましょう。
「アルヴィア、慌てなくていいわよ。あれくらい蒼字なら自分でなんとかするでしょ」
キャリーちゃん様はあの黒ずくめの人、蒼字様を信じているようです。しかし、あの濃い瘴気の中で精神を保つことが出来るのでしょうか……
◆蒼字の視点
ん〜どうすっかな、結界を張ったけどこの瘴気5分くらいしか持たない。浄化するにしてもこれだけ濃くて量が多いと至難の技だ。
どうこの危機的状況を乗り越えるか、考えながら周りを見ていると、少し離れた位置に紫色に輝く魔石があった。
「ん?……あ〜なるほど!あれがコイツの心臓か」
これで脱出する術が見つかったかも。
骨をバラバラにして倒したのに元に戻ってたからどうしようかと思っていたけど、あの石がコイツを構成する核、つまりあれを壊せばコイツは死ぬ。
「しかし、あれに近づくのもなかなか難しいか…」
魔石の周りは特に瘴気の濃度が高く、近づけば呪いを受けて精神が病んでしまうかもしれない。勢いだけで突っ込むのは自殺行為。
俺は筆で何枚も『破魔の印』を書き、それを結界から手を出し自分と魔石の直線上に貼り付けながら結界を広げ前に進む。
「はぁ〜なんとか到着!……さすがに近すぎて気分が悪い、が!ここまで来れば、あとは割るだけだな」
『斬魔白華印』
俺は魔石を斬り裂いた。
「グオオーー」
苦しみの雄叫びをあげカースボーンドラゴンがボロボロと砕けていく。俺は脆くなった骨を蹴破り飛び出す。
「あー疲れた。………外の空気は美味いね〜」
俺は服についたホコリをポンポンと叩いて落とす。
「本当に……生きてた!?」
アルヴィア姫がぽかーっと俺を見ている……?
口を半開きにしてお姫様らしからぬ顔をしている。
「アルヴィア姫……どうかされましたか?」
「どうやってドラゴンを倒したのです?」
「え?……魔石を斬りました……です!」
「魔石?……」
「も〜うあんた達、そんなどうでもいいこと話してるんじゃないわよ。前を見なさい!」
「オノレ良くも我が傑作を壊してくれたな!」
セネイラは怒り心頭、身体を震わせ怒っていた。
「許さんぞ!貴様ら全員いきて……ごぇ〜!」
なんかブツブツ言って隙だらけだったので、
俺は一気に接近しセネイラの顔面をぶん殴った。
「ヨッシャ!当たった。さぁ〜来い!………ん?」
セネイラは顔面を押さえてのたうち回っている。
もしかして術者はあまり強くのか?
「おぼれ〜べっぱいひゅるざん」
まだなにか言っている。
怒っているのは分かるが、頬が腫れて何を言っているか分からん!
「うっさいわ!ボケー!もう終わってるんだよ!周りをよく見ろ!」
「ばぁ!?」
セネイラの周りには魔物を倒したさくらや陽菜乃達が戻ってきていた。
「この状況を覆せるのか?」
「バガな!」
セネイラは目を見開きガクッと肩を落とした。
終わったな………「カチャ」……「え!?」
俺のこめかみに銃が突きつけられていた。
「助けてくれてありがとう。でもあなたは敵なんでしょ、それとも味方なの?それはあり得ないわね」
……陽菜乃か、
「どう言うつもりかしら、アルヴィア姫を攫ったかと思えば、今度は助けてくれる。一体なにが目的なのかしら」
「…………」喋るとバレる。
構えている銃に手が添えられた。
「陽菜乃銃を下ろしてください」
アルヴィア姫が止めてくれた。
「アルヴィア姫はコイツを信用するのですか?」
「彼は私を助けてくれました。信用しているわけではありませんが、それでも信じたいと思っています」
「はぁ〜………分かったわアルヴィア姫」
溜め息をつきなから陽菜乃は銃を下ろす。
「それで、お話をして頂けるのですか?」
「……………」話すけど、ここではちょっと〜。
反応がなく沈黙をするといや〜な空気が流れる。
「ご主人様はあなたと二人でお話をしたいようです」
アルヴィア姫は察してくれたようで「はい」と返事を返してくれた。そこで横槍が入る。
「待て!それは許さん!」
剣を抜いて剣士のアインがやって来た!
「アイン良いのです。私はこの者と話をします」
「駄目でございます!この様な素性もわからぬ者と、コイツはアルヴィア姫を攫った賊、とてもではないですが許すわけにはいきません」
「アイン……それに関しては不問としました。ですので彼は罪人ではありません。下がりなさい」
「しかし、姫様!」アインは引き下がらない。
さらに接近し無理にでも俺を捕まえようとする。
「止まりなさい!これ以上ご主人様に近づけば斬り伏せます」
ジャンヌは俺の前に立ち剣を構える。
俺はジャンヌに耳打ちする。アインを止めておいてと言ってアルヴィア姫の下に向かう。
俺は小声でアルヴィア姫に移動しますと言って抱き上げて移動、抱き上げた瞬間「キャッ」と反応したけど抵抗はしなかった。
陽菜乃達には睨まれたが追いかけては来なかった。
……………………▽
「ここまで離れれば大丈夫かな……失礼致しました」
離れた位置に移動しアルヴィア姫を下ろした。
「オホン、ありがとうございます。それではお話を頂けるのですね?」
アルヴィア姫は少し顔を赤くしてこちらを見る。
「ええ、約束ですから、ただその前に確認ですけど、俺が捕まる恐れはないで良かったですよね。罪人じゃないですよね〜」
恐る恐る聞く。
「はい、それについては罪を問わないことを約束します」
「は〜良かった!それじゃ〜安心して話が出来る」
俺は顔を隠していた墨帯を外す。
「あ……布の下はその様な顔をしていたのですね」
アルヴィア姫は興味津々に見つめる。
「すいません、そんなに見られると恥ずかしいです」
美人に見つめられると照れるぜ。
「うふふ、ごめんなさい」
アルヴィア姫は一歩下がり落ち着いたところで、俺とさくら達の関係について説明する。女神のうっかりでこの世界に居ること、それに今は気ままに冒険者をしながら商売を手伝っていることを説明した。
「まさか!そのようなことが…それではあなたも勇者様!?」
「いや…俺は勇者じゃないですよ!間違えて飛ばされた。ただの迷い人と言ったところですかね」
「しかし、あなたの力は勇者に相応しい力かと、もし良ければあなたを勇者として迎え入れたいと」
「あ〜それはお断りします。それはさくらさんと陽菜乃さんに任せますよ。二人はきっとこれからもっと強くなります」
「そういえば貴方はさくらさんや陽菜乃とは学友でしたね。そうなのですか………本当ですか?」
「え!そこは疑うんですね。証明は出来ないですよ!」
「本当よ!アルヴィア姫、蒼字くんはさくらとひなちゃんとは良く遊んでたから」
「「え!?一花さん」」
俺とアルヴィア姫はびっくりした。
「何で一花さんがいるんですか!」
「さくらが心配そうにしてたからこっそり見てくるって言って出てきた」
「あ、そうてすか……」
「一花さんが言われるのであれば、間違いありませんね。それを聞きますとますます貴方を勇者として迎え入れたいと思いますわ!」
「やったじゃん!蒼字くん、さくらも喜ぶよ!」
ヤッターと手を上げて喜ぶ一花さん。
……しかし、
「悪いんですけど、お断りします」
「えー何で!?」
「何故ですか?」
一花さんは驚き、アルヴィア姫は疑問に思う。
「約束があるんです。それが達成されるまではそちらを優先しようかと思います。大丈夫です!もしも何かあれば俺も駆けつけますから」
「んん〜」一花さんは唸り
「…………」アルヴィア姫は黙って考えている。
「それでは、お願いがあります。あなたの……」
……………「ドガァン」
みんなが居る場所から大きな音が聞こえて来た。




